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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹


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旅の再開

 ――そして、十日後。メルは旅の準備を終えて、いよいよオルミアから出立する日がやってきた。


「定期的に情報は送るようにしよう」


 エイベルの屋敷、彼の部屋で俺とメルは最後の挨拶ということで顔を合わせる。


「メル、使い魔をオルミアに飛ばしてくれれば、こちらの近況などについて報告させてもらう」

「わかりました」

「ファグ達のことも気になるだろうし、状況が状況である以上は、オルミアのことだって知りたいだろう」


 エイベルの指摘にメルは頷く……まだ、ファグ達については裁かれていない。まだまだ調べなければいけないことが多いため、実際に彼らの処遇が決まるのはずいぶん先になるだろう。

 それに、エイベルとしては情報も欲しいはず。魔族はメルの部下を介してオルミアに入り込んでいた……その影響がどれほどなのかわからないし、ちゃんと見定めないとまずいことになる。


 事件は終結したが、オルミアが落ち着きを取り戻すのはまだまだ先になりそうだ……そう考えつつ俺はエイベルに提言する。


「エイベル、色々と調べるためにファグ達の取り調べを行うのはいいけど、足下を掬われないようにしろよ」

「わかっている。魔族の力についてはおおよそ除去したが、油断すればどうなるかは……最大限の警戒を行いつつ、調査を進めるつもりだ」

「……まだオルミアを狙う魔族がいると思うか?」


 俺の質問にエイベルは少し考え込む仕草をした後、


「正直、わからない。魔族側の目的についても不明なままだからな。とはいえ、今回の魔族の動きは不可解なことが多い。まだ魔族がどこかに潜んでいる可能性も否定できない以上、納得できるまで調べてみるつもりだ」

「わかった……メル、エイベルと継続的にやりとりを頼む。それとエイベル、何かあればすぐに連絡を。できるだけ早く駆けつける」

「ありがたい……が、そうはならないよう尽力するつもりだ」


 エイベルはそう言うと、俺達に笑いかけた。


「さて、トキヤ殿の旅路……その幸運を祈る――」






 俺達はオルミアを出た。去り際エルフ達に見送られ、メルも心残りはあまりなく、出ることができた。

 メルは要職を辞めて、半ば追い出されるような状況ではあるけど、オルミアに暮らすエルフ達はどういう経緯で俺と共に旅立つのかはわかっていた。だからこそ、暖かい雰囲気で送り出したというわけだ。


「……さて」


 そしてオルミアから少し離れた後、俺は口を開いた。


「思った以上に長居してしまったけど、改めて旅、再開だな」

「はい。改めてよろしくお願いします」

「こちらこそ……というわけで魔王に関する調査に入るわけだが、そのために色々と必要なものがある」

「人員ですね」


 メルの言葉に俺は首肯する。


「さすがに二人だけで調査、というわけにはいかないだろう。魔王に挑んだ時だってもっと人数いたわけだからな」

「最低でも四、五人くらいでしょうか」

「それ以上多くなると動きにくくなるし、三人から五人くらいの間がよさそうだろうな……場合によっては魔王の拠点へ向かうことになる。それを含め、俺達に手を貸してくれる人物を引き入れる」

「トキヤの名声があれば、人は集まりそうなものですけどね」

「誰でもいいというわけじゃないからな。強さについてはまあ最低限必須だとしても、あくまでやることは調査である以上、仕事はするにしても高額の報酬が得られるみたいなこともまあ難しいだろうし、意外に一緒に調査してくれる人は……条件が厳しいかもしれない」


 ――二十年前の旅路では、色々な幸運に恵まれ、損得勘定ではなく、魔王という強大な存在に挑むために仲間が集ってくれた。勇者として活動した結果、天王達がいる国の後ろ盾も得られたし、結果として最強の面子が集まったと言っても過言ではない。

 一方で今回の場合は……魔王を討伐するというよりは調査がメインであるため、切った張ったは二十年前よりも少ないだろう。調査の結果、魔王に再び挑むという可能性もあるけど、現段階では調べるだけ。俺の名声があるとはいえ、以前とは状況も違うし仲間は集まりにくいと思う。


「それに、今は人が魔物討伐とかに取られているみたいだし」

「ルークも語っていましたね……ふむ、可能であれば早期にパーティーを固めたいところですけど」

「俺としては焦る必要はないと思うな……ま、何かきっかけにあっさりと仲間は見つかるかもしれないし、情報集めで各地を回りつつ、魔族や魔物に関することに首を突っ込む……で、当面はいいかな」

「情報集めはやるにしても、メインはやはり『天王会議』ですか?」

「ああ、天王と話をすることが何より一番の情報収集だろうから……ただ各国の情勢を調べるという意味合いでも情報集めはした方がいい。あとやることとしては、俺の力を取り戻すことかな」

「どれも一朝一夕ではできませんね」

「ゆっくりことを進めればいいさ。今回は十年前の戦争みたいに、戦況に追われながらやる必要もないし」


 ――魔族の動向次第では大立ち回りをする羽目になるかもしれないけど、今はこういう方針でいいだろう。

 というわけで、俺達は街道を進む……いよいよメルと共に本格的な旅が始まった――


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