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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹


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魔族との会話

「魔王復活から、魔族達は色々と動いている……その目的は新たな戦争か? それとも、他に何か理由があるのか?」

「真面目に答えると思っているのか?」


 魔族が逆に問い返す。それに対し俺は、


「そちらが協力姿勢を見せれば、少しくらいは加減してもいいとは思っている」

「ほう?」


 眉をひそめ魔族は呟く。


「目的を明かせば逃がすと? だが、オルミアの騒動……その首謀者は実質私だ。お前の一存で逃がせば、罪になるのではないか?」

「まあそうだな、さすがに無傷で帰すわけにはいかない……そうだな、半殺し……魔族として力を使えないくらいのダメージは与えるが、滅ぼしたりはしない」


 俺の言葉に魔族は目を細める。


「つまり、もうまともに戦えないくらい再起不能にはするが、滅ぼしはしないと」

「まあな。少なくとも二度と、悪さをできなくすれば俺の判断も理解はしてくれるだろ」

「……よほど、情報が欲しいようだな」


 魔族の目が俺を射抜く。憎悪は消えていないが――


「その取引、応じると思っているのか?」

「あんたは逃げるつもりだろうが、それは実質不可能だ。ここで逃げられず、俺の剣で討たれるしか未来はない……それがどうにか生き延びることができる。メリットとしては大きいだろ?」

「傲慢だな」


 指摘する魔族。それに俺は口の端を歪めて笑い、


「そうだな、傲慢だ……もっとも魔族相手限定だが」

「……魔族相手に死以外の選択を示すだけでも相当歩み寄っている節はあるな」

「ならば――」

「しかし、受けるはずもない」


 途端、魔力が膨らんだ。ファグ達が発していたものと比較してもドス黒く、恐怖を煽る力。


「残念だが交渉は決裂だ……ああ、こいつらは何も知らん。私はただ、力を求めていたこいつらに望むまま与えただけだからな」

「……そうか」


 俺は小さく息をつき、


「ここであっさり情報を得られれば、楽できたんだけどな……ま、仕方がないか。なら、騒動を引き起こした以上、ここで滅ぼす」

「やれるものなら――な!」


 魔族が動き出す。恐ろしく俊敏であり、一歩で林の中で飛び込むほどの距離を移動した。

 だが、次の瞬間魔族が動かなくなる。足を止めたわけではない。突如その足が、動かなくなったのだ。


「な――」


 俺は立ち尽くす魔族へ向け駆ける。その速度は魔族に負けず劣らずのものであり、もし動きが縫い止められていなくても、魔族を追走できたはず――


「ま、待て――!」


 魔族が何か言った。先ほどの取引を提案しようとしたのかもしれないが――交渉は決裂した。選択肢は一つしかない。

 俺の剣が魔族に入る。完全に動けない相手はそれを受けるしかなく、


「が、ああああっ――!!」


 声と共にその体が崩れていき……戦闘は、終了した。






「――お疲れ様でした」


 倒れるファグとシェルデをエルフ達が拘束する間に、メルが近寄ってきて声を掛けてくる。

 ちなみにファグ達は滅んでいない。俺が持つ魔を滅する力……それは主に魔族や魔物などに大きく効果を発揮するもの。元々はエルフである彼らには少し効きにくい……だからこそ、俺の剣を受けても滅ばずに済んだ。


 まあそれでもギリギリだろうけど……俺はファグ達を見ながらメルに応じた。


「ああ、メルも援護ありがとう」

「魔族の動きを止めるだけでしたが……」

「それが決定打になったんだ。感謝するのは当然だ」


 魔族を止めたのは、メル……結界を張りながら魔族の動きを止めた。彼女も魔族の動きは捉えられていたので、見事相手の足を拘束することができたというわけだ。


「ちなみにですがトキヤ、取引に応じると言っていたら……」

「ん? まあ正直どう下手に出ようとも魔族は応じなかったさ。一応、話してくれるかなー、と期待して声を掛けてみたけど、ダメだった」

「……本当のことを話すとは思えませんでしたが」

「かもしれないな……さて、ようやく騒動は終わった。ファグ達は――」

「しかるべき場所で、しかるべき罪を……非常に残念ですが」

「魔族と手を組んでいたんだ。ここで甘いことを言って事態の収拾はできないな」

「はい、後はエイベル様に任せましょう……そして、私のことも」


 メルの言葉に俺は彼女を見返し、


「何かするのか?」

「……作戦が始まる前に色々と考えていましたが、結論を出しました。それをエイベル様にご提案します」

「そっか……その結論は、オルミアのエルフ達が納得するものなのか?」

「全員かはわかりませんが、おそらくは」

「そっか」


 彼女の表情は、戦いが終わったことによる安堵感もあったが……話していない決断内容に納得しているのか、暗い感情はなかった。

 部下の裏切りという点については無念だろうけど……彼女がどういう選択をしようとも俺は尊重する。だから、


「なら後のこことはメルとエイベルに任せる。頼んだ」

「お任せください」


 そう返事をするメルは、俺と共に旅をする仲間のようであった。


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