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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹


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魔を滅する存在

 俺とファグ、双方の剣が真正面から激突する。先ほど拮抗した状況を踏まえると、ファグや彼の後方にいるシェルデや魔族は再び互角になる、と考えたかもしれない。

 だが俺は異なる見解を抱いていた……刃同士がかみ合った瞬間、俺の剣がファグの刃に食い込んだ。


 途端、ファグの表情が変わる――拮抗どころか武器破壊の可能性がある、と驚愕した様子だった。

 彼の決断は早く、即座に剣を引き戻し体勢を立て直そうと動き出す。この辺りの判断はさすがだと感じた。圧倒的な力で蹂躙できると踏んでいたが、それができないと見るやすぐさま他の手を考えようとする。


 あるいは、後方にいるシェルデや魔族からの援護をもらおうとしたのかもしれない……次の瞬間、俺の刃がファグの剣を両断。彼はすかさず後退し、体勢を立て直そうとする……だが俺はそれを許さなかった。

 追撃のために俺は踏み込む。すると後方にいたシェルデが動き出す。ファグはそれを察したか長さが半分になった剣でも対抗するべく、回避から一転、攻勢に出た。


 ファグとシェルデ、二人なら対抗できる――そう考えたのかもしれないが、俺はこの攻防の結末がどんなものになるのか、予想できていた。

 俺は剣に力を注ぐ。それはひどく静かで、どうやらファグ達は気付いていない。次いで横薙ぎを放つと、ファグ達はそれでも前に出た。


 俺の剣をまずは受け、反撃で倒そうという腹づもりだった。まず剣を受けるのはシェルデ。彼が握る剣にはファグが先ほど攻撃で見せた以上の魔力が込められていた。

 それは攻撃というよりは、俺の剣を受け流すために準備された力……だが俺は攻撃を止めなかった。そしてとうとう二つの刃が激突する。


 ファグはシェルデが剣を受けた直後に接近しようとした。片方が俺の攻撃を食い止める間にもう片方が仕留める……うん、人数有利である以上、当然の対処法だ。

 だが、


「ふっ!」


 僅かな声と共に俺は剣を振り抜いた。その斬撃はシェルデの防御を容易く破壊し、彼が握る刃を両断し、勢いで彼の体にも一撃。

 そして迫ろうとするファグにも刃が当たり――両者共に、吹き飛んだ。


「がっ――!?」


 驚愕の声と共にファグ達は倒れ伏す……相当な力があったが故に、一撃で倒すことはできなかった。しかし斬撃によって魔力が大きく削られ、もはや戦闘することは不可能な状況に陥った。


「……そちらは十年前、俺の戦いぶりを見ていたのかもしれないが」


 俺は倒れる二人へ向け、告げる。


「剣術とか、扱う技法とか、そういうもの以外にもこの剣の特性なんかにもっと目を向けるべきだったな。それを理解していたら、迂闊に魔族の力を得ようなどと考えることはなかったはずだ」

「――魔を滅ぼす力か」


 そう声を発したのは、魔族。長い金髪を持つ美形の男性だった。


「陛下も語っていたな、勇者トキヤの力は、我々にとって天敵であると」

「へえ、魔王に会ったことがあるのか?」

「私は十年前の戦いで前線にいたからな。多少なりともその姿を見たことはある」

「よく生き残ったな」

「無様に逃走したのだよ。死にたくはなかったからな」


 俺を射抜く視線は、憎悪に満ちている。人間に対し背を向けて逃走する……屈辱的であるその状況を脳裏に浮かべているのかもしれない


「しかし、力を与えたこいつらが瞬殺か。さすが勇者トキヤ、と言ったところか」

「悠長だが、いいのか?」


 俺は剣を構え、切っ先を魔族へ向ける。


「残るはお前だけだぞ」

「逃げおおせるくらいの力は持っている。こうした自体も予想していたからな」

「――き、貴様……!」


 倒れるファグは、魔族へ向けて叫ぶ。


「貴様がもっと協力的であれば――」

「最初から勝ち目はなかったさ。エルフの力を融合したお前達ならあるいは、と考えたが一縷の望みにすらならなかったな。残念だ」

「……お前、最初からこうなるとわかった上で力を与えたな?」


 俺は魔族へ向け問い掛ける。


「メルやエイベルという存在を踏まえれば、魔族の力を得れば俺がいなくても必然的にこうなる……それは予想できたはずだ」

「確かに、魔を滅する力……お前の仲間やオルミアの族長は力を持っていたか。とはいえ、エルフ達はその力を活用するには魔法を介する必要性があるはずだ。例え詠唱を必要としない魔法でも、武器を扱うよりは隙が生じる。攻撃をさせないまま、力によるごり押しができれば……という考えだったが、お前の存在で全てが破綻したな」

「……話は変わるが、お前は別の場所で魔物の巣を作っていたな?」

「ああ、そういえば巣が潰されたんだったか。それもお前か……やれやれ、本当に追い込まれたな」


 言いながらも、魔族はこの場を逃れるべく視線を巡らせる……さて、いよいよ最終局面だが――


「……お前に一つ尋ねようか」


 俺は魔族へ向け、口を開いた。


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