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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹


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いつもの戦い

 俺達は隠蔽されていた猟師小屋に向かう。時刻は深夜を回っているが、ファグ達が当該の場所にこもっていることは既に確認済み。よって討伐隊と共に、現地へ向かう。


「……さて、作戦について説明します」


 討伐隊のエルフ達と共に歩きつつ、俺は横にいるメルから話を聞く。


「猟師小屋周辺に仕込まれている隠蔽魔法はかなり強力ですが、一つ欠点があります。それは内外が遮断されており、内側にこもっていれば外の状況がわからないというものです」

「隠蔽がかなり上手いため、そういう状況に陥っていると」

「はい、ですがファグ達も対策は立てています。彼らが小屋周辺にいて外の状況を確認できない際は、使い魔を外に配置して異常がないかを確認しています」

「異常……例えば何か変化があれば使い魔が小屋の中へ入り報告をするとか、そういう感じかな?」

「はい、そういう解釈で良いかと思います。言わば使い魔による見張りですが、昼間の調査時点で私はいくつかその使い魔の支配権を奪って置物にしています」

「……またずいぶん大胆だな」

「独立型の使い魔なので、問題ないと判断しました。ただし、支配権を奪い取った使い魔は一部です。感じ取れる魔力では猟師小屋周辺に結構な数を配置している様子」

「その全ての支配権を奪うことは……」

「最初はそれも考えましたが、使い魔の総数も不明である点に加え、使い魔について調べられたらバレてしまうため、難しいと判断しました」


 なるほどな……ならどうやってファグ達を追い詰めるのか、作戦の全容が見えてきた。


「トキヤには支配権を奪ったポイントから猟師小屋に近づき、合図と共に討伐隊数名と隠蔽魔法内に踏み込んでもらいます。それと同時に周囲を囲むように残る隊の面々で布陣を敷き、逃げられないようにする」

「その時点で敵に気付かれるな」

「猟師小屋は岩壁を背にして建てられているため、逃げる方向は限定されます。さらに駄目押しで私が結界を構築。後は、彼らを倒すだけです」

「確認だがファグ達は生け捕りだよな?」

「……エイベル様は、その場で処断することもやむなしと考えていますが」

「ま、ここはどうなるかわからない。やれるだけやってみる。ただし、さすがに魔族に対しては容赦できない」


 俺の言及にメルは小さく頷き、


「それはわかっています……人数的にも圧倒的有利な状況ですが、追い込まれたファグ達が何をするかわからない。相手の暴走を防ぎつつ、どう戦っていくか……被害を抑えつつ倒すには、状況に即した対応が必要になってきます」

「そこについては、俺が持つ経験に掛かっているかな」


 ……魔王を倒せた俺ではあるが、全盛期からは程遠い、相手はエルフと魔族。根本的に保有する魔力量には差がある。例え技量的に上回っていても、力の差は存在する。相手が捨て身の攻撃をしてくれば、どうなるかわからない。

 それにどう対応していくかは、戦って考えるしかない……出たとこ勝負というわけだが、そんなのは二十年前も十年前も同じだった。


 つまり――俺にとっては何でもない、いつもの戦いというわけだ。


「メル、ファグ達の能力とかは把握しているか?」

「私が認識しているのは……というより、ファグ達に関する情報は十年前の戦争で止まっているので実質不明と考えてよいです。私の部下になって以降は、戦闘というのもありませんでしたし」

「魔族と手を組んでいる以上、何かしら力は得ているだろうし、新たな技法だって持っているかもしれないな……あえて自分達の実力を隠すようになっていた、というのを踏まえるとこんな凶行に及んだ理由は、十年前の戦争にまで遡る必要だってあるのかもしれない」

「……かも、しれませんね」


 重い表情をするメル。月夜の下で見せるそうした表情からは、どこか悲痛さが漂っている。

 俺としては何か声を掛けたいところだが……やがて山の麓近くに到着。猟師小屋周辺は林になっていて、物理的にも視界が遮られていた。


「戦闘準備を始めます」


 メルの言葉と共にエルフ達は動き出す。散開し、林の奥にある猟師小屋を取り囲むように動き始める。

 そして、俺達の近くには突入するエルフ達が……俺を含め総勢五名。相手の陣地へ踏み込んで、どう反応するか……ここが一番、被害が出る可能性が高い場所だ。

 俺達は無言となり歯足の中へ足を踏み入れる……俺はここでメルへ、


「魔法を使っても問題ないか?」

「派手なものでなければ問題ないでしょう。暗視の魔法とかを使用するのですか?」

「ああ、明かりをつけてもよさそうだが……」

「使い魔は明かりにも反応する可能性があるため、暗視の方で。そのくらいの魔力であれば露見は免れます」


 彼女の言葉で俺は暗視魔法を使用。結果、林の奥にある岩壁が見えたのだが、隠蔽によって小屋の存在は確認できない。

 しかし俺達はそこへ歩を進める……次第に緊張感で周囲の空気が張り詰めていく。決戦まで、あと少しだ――


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