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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹


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作戦会議

 ファグ達はその後、さらにいくらか話し合いをした後、この場を去った。近くに俺とメルがいたことに気付かないまま……こんな所に誰かいるはずもないという油断もあっただろうけど、あまりにも脇が甘すぎる気がする。

 俺だったら周囲を確認した上で密談するけどなあ……と胸中で思いつつ、横にいるメルの表情を窺う。


 彼女は深刻そうな顔をしていた……ファグのこともそうだが、横にいた男性エルフについてもどうやら、重要な存在らしいな。


「……ファグと話をしていた男性は誰だ?」


 まず質問をする。メルは少し間を置いてから、


「……シェルデという、私の部下です」


 おおう、それはまた……ということは、メルの部下が共謀してエイベルの暗殺を企てていたということか。


「しかも口ぶりから、魔族と関与している可能性が高そうですね」

「直接的な言及はなかったが、たぶんそうだろうな」

「しかも彼らは動こうとしている……すぐにエイベル様に報告しなければ」


 ――ずいぶんと話が進展しているが、まあこれは良しとしよう。それに、ここで俺達が彼らの会話を盗み聞きしていなければ、大騒動になっていたことは確定的だし。


「……ファグ達はどういうつもりなんだろうな?」


 俺は疑問を口にしてみたが、メルは首を左右に振りつつ、


「わかりません……私が魔王に挑んでいたことを踏まえれば、魔族と手を組むことなど言語道断であることはわかっているはずです。なのに、どうして……」

「メル……」


 名を呼んだ時、彼女はどこか悲しそうな顔をしていた……が、すぐに表情を戻し、


「すみません、戻りましょう」

「……わかった」


 ――俺達は周囲を警戒しファグ達に見つからないようにしつつ、オルミアへと戻ったのだった。






 俺とメルは仕事を終えたその足でエイベルの屋敷へ向かい、ファグ達の密談に関して報告を行う。すると、


「ずいぶんと話が進んだな。これも勇者の成せる業か……」

「俺はあんまり関係ないと思うんだけどな……」

「どういう過程であれ、トキヤ殿の行動によって私達は救われている……さて、ファグとシェルデが共謀して行動を起こしていることはわかったが……」

「調査は進んでいるのか?」

「進んではいるが、ファグ達が関与しているという証拠は一切挙がっていない。基本的にはミストが事を起こした、という資料だが……まあこれは、ファグ達が露見した場合に備えて用意した情報だろうな」

「可能であれば、ファグ達が何か行動する前に捕まえたいところだけど……」

「ああ、向こうが何か事を起こすのであれば、未然に防ぐのが最適解……ではあるが、問題が二つある」


 そうエイベルは語ると、俺とメルに説明を始める。


「端的に言うと証拠がない点と、彼らの協力者の動向だ……まず現時点で証拠がないということは、捕まえても容疑が明確でないことから釈放を余儀なくされる」

「彼らはいずれ、自分達の所に捜査の手が伸びると考えているようだけど……」

「こちらとしては、明確な証拠がなければ捕まえる正当性がない。時間を掛ければ隠滅し損ねた情報が出てくるかもしれないが、話を聞く分にはあまり時間的な余裕はなさそうだ」

「魔族……と思しき存在だな」

「会話を盗み聞きした際、直接的な言及はなかったようだが、魔族か魔獣と考えて間違いはないだろう……動き出せばオルミアは大混乱に陥り、被害も出る。トキヤ殿に手を貸してもらえれば、事態の収拾は可能だろうが……」

「魔族も俺がいることはわかっているはずだが、それでも来ると思うか?」

「完全な奇襲攻撃であれば、一泡吹かせられると考える可能性は高い。それに、ファグやシェルデ……両者は十年前の戦争でオルミア防衛に貢献したばかりでなく、戦地へ赴き魔物を倒し続けた武闘派だ。トキヤ殿の技量も見ているはずだが……」

「見ているからこそ、対策を持っているかもしれない、と」


 俺の言葉にエイベルは重々しい表情で頷いた。


「現状、私達の方が情報的な優位があるため、騒動を起こさず解決できる状況ではある……密かに彼らを監視し、隠れ家などを見つけ次第、攻撃を仕掛ける」

「ならそれに俺が加わればいいんだな」


 俺の言葉にエイベルは小さく頷き、


「すまないな、トキヤ殿」

「それが勇者の役割だから、気にするな。もし戦うとなったら全力で応じるし、相手が対策をしてきても、なんとかしてみせる……ただ」


 と、俺はエイベルを見据え、


「まだ相手の隠れ家の場所もわかっていないから、調査が重要だ」

「うむ、そこは任せてくれ……騒動を終結させるために、全力を尽くす」


 力強い言葉だった。俺はそれに頷き返し、話し合いは終了。俺達は屋敷を出ることに。

 一応、監視されてないか警戒しつつ……屋敷を得た段階で、メルは俺へ向け口を開く。


「トキヤは宿で休んでいてください。後は私達が」

「メルの方は大丈夫か?」


 部下が首謀者という精神的なショックと、彼女が動けばファグ達に気取られる可能性がある……両方の懸念をしたのだが、


「問題ないようにします」


 彼女は質問の意図を察し、そう返事をした。


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