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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹


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勇者の幸運

「……今回の事件と関係があるのかは現時点で不明だ。けれどあまりにもタイミングが良いから、関係があってもおかしくない。まあエイベルには伝えたから繋がりがあるなら調査でわかるだろう。それより、メル」

「はい」

「彼が俺に対し敵意を持って話をしてきたのは事実だけど、彼の言うことも一理あると思っている」


 ……俺がどれだけ言って旅についてきそうだけどなあ、と思いつつ語っていく。


「俺としては、君の立場を損ねたくはない。エイベルがフォローをするとは思うけど、オルミアにとって君という存在を失うことは大きな損失だろう?」

「……オルミアに残るべきだと?」

「メルが手を貸してくれるなら助かるけど、このオルミアに来てエイベルなんかと話をして……オルミアのエルフ達にもきちんと納得してもらって、決断すべきだと思った。もちろんメルの意向が何より重要だけど……立場があるだろ? メルだって、好き勝手にやれる存在じゃなくなった」

「……そう、かもしれません」


 メルは俺の言葉に頷く。


「そういうトキヤだって、ですよね?」

「まあそうだな。今回の旅は比較的自由だけど、勇者として規範正しく行動するつもりではいるよ……俺だって、無茶やって色々な人から幻滅されたくはないし」

「……お互い、色々と背負ってしまいましたね」

「そりゃあまあ、二度も魔王を倒したんだ。仕方がない話さ」


 ……別に二十年前の旅だって暴れ回ったわけじゃない。ただ、二十年前と比べて俺を見る人々の目は明らかに違っている。

 そこはまあ、名声を得ている以上は当然の話……そしてメルも、二十年で大きく立場が変わった。


「オルミアのエルフ達全員を納得させる、というのは無理にしても……ちゃんと多くのエルフから支持を受けた上で、どうするか決断してほしい」

「……わかりました。トキヤがそう言うのなら」


 メルは承諾。うん、これで後腐れがない終わり方をしてくれればいいな。

 さて、残る問題としてはオルミアの騒動についてだが……。


「で、改めて話をするんだけど、オルミアの騒動はエイベルに任せていていいのか?」

「あの方なら問題ないでしょう……夜襲には驚きましたが、最大限に警戒したエイベル様を追い込めるような存在はオルミアにはいません」

「そこまで言うか……」

「私自身、外に出ることで色々不安もあって護衛をしようか助言しましたが、今のエイベル様にとっては必要ないかと思います」


 ……彼女がここまで言うのであれば、余計な心配は必要なさそうだ。


「なら俺は宿で寝ていていいか?」

「はい、トキヤの出番は夜襲を防いだことで終わったと言って良いでしょう……エイベル様もお礼を言っていたでしょうけれど、私からもオルミアを代表してお礼を。本当にありがとうございます」

「気にしなくていいさ……しかし、まさかのタイミングで相手は仕掛けたな」

「……そこはトキヤの運の良さが関係しているのでは?」


 ふいに俺に対し言及が飛んできた。


「運の良さ……ねえ」

「二十年前、幾度となくあなたの幸運で窮地を脱しました。十年前の戦争でも同様に、色々と助けられました」


 あったなあ、そういうこと……ただその運というのは、どちらかというと俺に幸運がもたらされるというよりは、勇者にとって話が良いように転ぶみたいな感じだった。


 例えば、事件の依頼を請ける。さてどう調べようかという段階になって、なぜか犯人がボロを出してあっさりと犯人がつかまる……ただ、犯人が暴れ始めた際は、俺が自ら対処することになったけど。


 あるいは、魔物討伐を行った際、範囲が広く長期間仕事をすることになりそうだ……という予測をしていたが、実際は多数の魔物が俺のいる場所に集まり、驚くほどの速度で魔物討伐に成功するとか……まあこの場合、押し寄せる魔物の対処を余儀なくされ、戦いは大変だったけど。


 と、俺の運の良さはどちらかというと楽になるというよりは事件解決のために最短距離を突っ走るみたいなところに発揮している……たぶん、俺が持っている剣の影響かなと考えている。元の世界でこんなことはなかったし、きっと俺が持つ剣の力が何か作用して、メルの言う運の良さを発揮しているのだと思う。


 今回、エイベル襲撃に俺が偶然関わったけど、剣の力が作用するか何かして敵が動くタイミングで俺が気付いた……運の良さだけで済ませて良いのかという話ではあるのだが、この世界で勇者として活動している間、そんなことが頻繁にあったので、そういうものだと考えることにしている。


 十年前の戦争でも、幾度となく訪れた窮地を運で脱したりしたからなあ……と、ここで俺達はオルミア郊外の小さな森に辿り着く。

 エイベルが用意した仕事は魔物の駆除。数は少ないし森の規模も小さいのですぐ終わる。


「さて、仕事は果たしましょう」

「ああ」


 メルの言葉に俺は頷き、ひとまず仕事を片付けるために思考を切り替えたのだった。


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