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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹


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事情説明

 翌日、エイベルの依頼により、俺はメルと共にオルミアの外へ出た。仕事内容は取るに足らないものであり、メルの方も内容的に仕事を口実に外に出ることが目的であると気付いているようだ。

 そして、彼女についてだが……エイベルが襲撃されたことでずいぶんと深刻な顔をしていた――実はオルミアを出る前にエイベルの護衛を申し出たのだが、他ならぬエイベル自身がメルに外へ出るよう指示を出したため、結局彼女は外へ出ることに。


 で、ちょっと話し掛けにくい雰囲気だったのだが……、


「……メル」

「――いえ、わかっています。何かしら事情があるのは。申し訳ありません」


 名を呼ぶと、ようやくメルは表情を普段通りのものにした。


「それで、トキヤ。あなたは何か知っているようですが……」

「そうだな。目的地へ向かいつつ話をするとしようか」


 メルとしては早く話せという雰囲気だが……俺はそんな表情を見つつ問い掛ける。


「メルは事件についてどこまで知っている?」

「……夜襲が起こった後、すぐに何事かと情報収集を開始したのですが、詳細まではわからず。どうやらエイベル様が情報を秘匿しているようです」

「襲撃を行ったエルフについては……」

「そこは把握しています。ただ、政治的な意味合いでどこかに所属していた同胞ではなかったので……」

「なるほど、混乱を避けるためにか」

「その様子だとトキヤは知っているようですね」


 ……態度から察したらしい。まあその辺りの事情も説明するべきだと思ったので、


「そうだな。今から伝えるけど、えん罪という可能性もあるからそのつもりで」

「わかりました」


 ――ミストのことについて説明。それに対しメルは眉をひそめ、


「正直、疑問ですね。わざわざエイベル様を狙う理由がわかりません」

「そこは他ならぬエイベル自身も疑問に感じていた……まあ、本当の首謀者がミストというエルフに罪をなすりつけている、という可能性が高そうだけど」

「……もう一つ、可能性はあります」


 と、メルが言う。俺は彼女に視線を向け、


「それは一体?」

「襲撃者達がミストと繋がる物を残すという杜撰さも疑問ではありますが……仮に彼が首謀者である場合、動機としては魔族と繋がっているという可能性も」


 ――二十年前の冒険では、そういう存在が結構いた。魔王はいずれ大陸を支配するべく、各国の要人とか政治的に重要な存在とかをあの手この手で懐柔し、味方に引き入れていた。

 そうした要人から魔王派各国の情報を得ていた……報酬としては、例えば政治的な邪魔者を始末するのを請け負うとか、あるいは街を離れた際に魔物をけしかけて……とか、そういうことをやっていたりした。


 まあそういうことをやっていた魔族は二十年前の旅で結構倒したし、十年前の戦争で懐柔していた存在なども全て巻き込んで攻撃していたので、関係は断たれたと言ってもおかしくはないのだが……戦争から十年経過している。また魔族と関係を構築している輩がいても驚きはしない。


 そして、魔族と手を結んでいる場合……エイベルを始末することは魔族にとってはオルミアの政情不安を引き起こすことになるため、非常に効果的だろう。

 これなら動機を解明する意味などなくなる……魔族はオルミアの崩壊や支配を狙っているだろう。ならば、現在の政治体制を破壊するために動く、なんて可能性は十分ある――


「ただ、正直魔族と内通している同胞がいるとは思えませんが……」


 可能性を上げたが、メル自身がそれを否定する。


「あり得ない話ではありませんが、正直魔王が滅んだ状態で魔族と組むメリットはない」

「ま、そうだな……魔王が復活した、という状況だがエイベルへの夜襲は、魔王が復活するよりずっと前から準備はしていたはずだ。そして、ミストというエルフが仮に首謀者だとしても、落ち目の魔族と手を組むほど政治的に追い込まれているわけでもないだろう」

「はい……それに、私は族長という立場になる気はありません。いずれミストがオルミアの長となるはずですし……」


 ……さて、ここでファグのことを話すか。問題は彼女がどう反応するか。


「メル、俺からいいか?」

「はい、どうしました?」

「この件と関係があるかどうかわからないんだが、エイベル襲撃の前に、ちょっとメルの部下に絡まれたんだが」

「……はい?」


 首を傾げるメルに、俺は説明を加える。無論、エイベルにもこのことは伝えたと前置きをして――


「……というわけなんだけど、今回のことと関係しているのかどうか……ただ、もし関係があるとするなら――」

「ファグが何かしら重要な立場にいるかもしれない、と」


 メルはそう呟くと、目を細め口元に手を当て考え込む。


「ファグが……どうして……」

「彼は君のことを族長にしたいんじゃないか? だから色々と干渉してきた」

「……私はずっと彼にその気はないと言い続けていたんですが」

「彼なりにそうすべきだという考えなのかもしれない」

「……うーん……」


 悩み始めるメル。そんな様子に対し、さらに追い打ちのような話をしないといけないんだが……ここできちんと話をしないと、と思いつつ俺はさらに続けた。


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