天王集結
最初に見えた天王の姿は、銀髪に白い法衣を着る男性。老齢ながら背筋が通るその立ち姿は様になっており、なおかつヒゲがずいぶんと似合っている。
その人物はフリューレ王国の王――つまり、天王の中で唯一の人間。名はリチャード。人間の寿命を置き去りにするほど長い間、フリューレ王国を統治してきた存在。
手を振る王に対し、人々から歓声が上がる。直後、リチャード王の横から新たな天王の姿が見えた。
今度は長い黒髪を持ち複雑な装飾が施された外套に身を包む男性であり、なおかつ見た目だけを言えば若々しい。二十代と言っても差し支えないくらいであり、それでいて王としての威厳を確かに持っている。
名はアルベルで、竜族の代表かつ、竜の国を統治する王……見た目は若いが、当然ながら年齢はリチャード王よりも上……たぶん何百年単位で生きているはず。
アルベル王も、長きにわたり竜族の代表として王に君臨している……ただ、竜族は魔族ほどではないが好戦的であり、クーデター未遂みたいな事件も多かったらしい。十年前の戦争で聞いた限り、ここ五十年くらいはおとなしいらしいけど……。
そしてアルベル王の横に新たな王が。今度は白いローブを着た女性――天王唯一の女性であり、神族の代表であるクリス女王である。
蜂蜜が溶かされたようなキラキラと輝く金髪に、視線で射貫かれればたちまち心をわしづかみにするであろう美貌……その美しさはただ立っているだけで絵画の情景かと思わされるほどであり、立ち振る舞いの所作を含め、幻想的な存在であるという印象を与えている。
彼女とも俺は過去、話したことがある……天王の中では穏やかであり、非常に話しやすい。ただ、スッと心の内に入り込んでくるその話術は、場合によって話してはならないようなことまでうっかり喋ってしまうくらい。なんというか、クリス女王には話をしなくては、みたいな感覚に陥る……ある種、天王と対峙して一番注意しなければいけない存在かもしれない。
そして最後に姿を現したのは、エルフの王……茶髪で翡翠のような色の瞳を持つ存在。アルベル王と並び立つほど若々しいが、こちらは線が細くなおかつ天王の中でもっとも背が高い。笑みを湛えるその姿は、多くの女性を虜にしそうである。
名はシルビオ。長命なエルフではあるが、王として在位している期間は確か、一番少なかったはず……といっても百年以上はあったはずだが。リチャード王が在位期間で勝っている、という点で天王の異常っぷりが理解できるというものだ。
そして天王達は並び立ち、広場に集まった人々に手を振る……直後、この日一番の歓声が湧いた。ロードガーデンの人々は、天王達がやってきたことを祝福している。そして、この大陸をよりよいものとするため……さらに言えば、さらなる復興を進めてくれることを願っている。
そして人々の声は、天王達がそうしてくれるであろうという確信もある……彼らは話し合い、時に利害が衝突しながらも大陸を発展させてきた。現在の天王達が揃って以降、四種族の間に戦争は起きていない。その事実があるからこそ、人々は絶対の信頼を置いている。
さらに言えば、天王達も在位し続けるために、多くのことをするだろう……やがて天王達は会議場の中へ。ここから数日の間、話し合いをすることになる。
議題の中心は、やはり魔王復活に関してか……復興も重要だが、間違いなくその点についても言及はするだろう。その中で、俺はどうすべきなのか――色々考えつつ、俺は宿へ戻るべく歩き始める。
天王達が会議場の中へ入ったことで、人々もまた動き出している。その中で俺は考える……ラザロには俺がどの宿に泊まっているのか伝えてある。その情報は天王達にも伝わっているはずだ。
もし、向こうから何かしら干渉がしたいと思っているのであれば、何かしら連絡が届くはずだ……そう考えつつ、宿へと戻る。そこで、
「トキヤ様」
受付の女性から声を掛けられた。
「はい」
「ロードガーデンの騎士団から手紙が届いているのですが」
そう言って女性が差し出してくる。黙って受け取り、中身を確認する。
そこには「親愛なる勇者トキヤ様へ」という書き出しから始まり、俺に対する感謝の言葉が綴られていた。
「……ありがとうございます」
俺は受付の女性に礼を述べ、手紙を懐にしまいつつメル達の部屋を訪れる。
「天王達は無事に会議場に入ったよ」
「何かある可能性を考え待機していたんですか?」
メルの問い掛けに俺は首を左右に振る。
「さすがにそこまで考えてはいないよ。随伴する騎士団が目を光らせているだろうから……さて、受付で手紙を受け取った。ロードガーデン側からのもので、俺に話があると」
実際はそんな記述はない……が、そのように嘘をついた。
「よって今から行ってくるよ」
「わかりました……私たちは思い思いに過ごすことにします」
「ああ、そうだな。ま、何か仕事の話があれば引き受けてくるから」
メル達は頷く。それを見て俺は再び宿を出て、
「さて、行くとするか」
そして眼光を少し鋭くして――俺は、大通りを歩き始めた。




