騎士団
メルの索敵については魔物を捕捉することに成功。その後、俺は彼女の情報を元にして一つ仕事を引き受けた。
内容は近隣の森や山に自生する薬草の採取。とはいえ魔物がいるということで危険度が高い依頼に該当し、ある程度の実力を有していなければ依頼を受けることができないものとなっていた。
けれど勇者トキヤであれば――というわけで、俺はその仕事を引き受けることにして、翌日には行動を開始した。
「メル、改めて確認だ」
町の外へ出て、俺はメルへと声を掛ける。
「魔物の数は、全部で三体で間違いないか?」
「はい、観測した数は以上です。なおかつ、魔物の位置は離れているので各個撃破も十分可能かと」
「なら、順番に魔物を倒していけばいいかな――」
そう呟いた時、俺は森や山のある方角へ目を向けた。
そこに、騎士や兵士の姿がある……俺はここでメルへ、
「実は昨日の夕方、ロードガーデン側から連絡があった。騎士団が魔物討伐を行うと」
「奇しくもタイミングが同じになってしまったと」
「ああ、ただ騎士団が観測した魔物の数などは現時点で不明だ。本来なら魔物の数などをすりあわせて騎士団と連携したいところだが……」
「私達は魔物討伐をしているという体ではありませんからね」
「よって、ギルドの依頼を受けたということで彼らの動向を観察しつつ、魔物を倒していく感じになるかな」
俺達は森と山のある方向へ進んでいく。方角的には北方向で、騎士達は森に目を向けながら何やら話し合っている。
規模としては二十名から三十名ほどで、森を調査するにしてはずいぶんな人数……と、こちらが歩む姿を見て、騎士達はこちらに気づいた。
「止まれ」
騎士の一人が呼びかける。それと共に俺達は立ち止まり、こちらへ近寄っていく。
「何の目的で森へ入ろうとしている――」
そして問い掛けている間に、俺の顔を見て口が止まった。どうやら勇者トキヤであると知っているらしい。
「ギルドの依頼を受けて薬草の採取に」
こちらの言葉に騎士は目を細める。その間に別の騎士――他とは違い、金縁の装飾が施された鎧を着る男性が近寄ってきた。
「……勇者トキヤか」
「あなたが隊のリーダーか?」
「そうだ」
応じる騎士は見た目二十歳半ばで、俺より肩幅も広く非常に頼もしそうに見える。
「ギルドの依頼とのことだが……」
「天王会議開催まで食っちゃ寝していたら、さすがに路銀も尽きるからな。色々と仕事をしなければいけないというわけだ」
俺はそう答えつつ、リーダーへ向けさらに続けた。
「隊を率いて何をしようとしているのかは、こちらもなんとなく認識している。俺達の目的は依頼の遂行だから、そちらの邪魔をする気はない。目的を果たしたら、速やかに町へ戻るよ」
こちらの言葉に隊のリーダーは黙った。どう扱うか悩んでいる様子。
突然「この場所は封鎖する」と言われたらどうしようかと思っていたが……まあ「ギルドでは何も言われなかった」と反論すればなんとかなるかな? 魔物討伐については基本、国とギルドは連携する。お互い状況がわかっていなかったら混乱するかもしれないためだ。
よってここで「封鎖する」と言ったら、ギルドと連携が取れていないことになるわけで、
「……わかった」
やがて隊のリーダーはこちらへ答えた。
「今から我々は大規模な調査を行う。依頼が済んだら即刻町へ戻ってもらう」
「ああ、わかった」
こちらが同意すると、騎士達は立ち去った。そしてリーダーが号令を掛けて森へと進んでいく。
「……ずいぶんと余裕がなさそうね」
と、騎士団の様子を見てヘレナがコメントした。
「天王会議が迫っている中、さっさと解決しなければ、と追い立てられているっぽいかな」
「たぶんな。隊のリーダーからは邪魔するなよみたいなオーラが発せられていたし、部外者には手出しさせないように……自分達で解決しよう、という意図が見て取れるな」
「柔軟にトキヤへ頼むという方法もあったと思うけど」
「俺もそういう展開になるかなと思って騎士達と接触したけど……自分達の手で対処する、という考えの方が強いみたいだな」
俺はそう言いつつ、メルへ首を向けた。
「彼らが魔物と交戦した場合、どうなると思う?」
「勝てるかはわかりません。装備品などを見る限り、魔物の強さについては考慮に入れて準備はしているようですが……」
「彼らが進む方向に魔物はいるか?」
「はい、森に一体、奥の山に二体ですから」
「なら森の魔物はスルーして山の魔物から倒すか」
「良いのですか?」
「間近で見た騎士達の実力は悪くないと思う。準備もしているっぽいし、森の魔物は任せよう。俺達は森を迂回し、山へ入り込んで残る二体を倒す。ただし」
と、俺は最後に言い添える。
「メル、騎士達の動向については観察しておいてくれ。もしまずい状況になりそうだったら、助けに入るくらいの心持ちでいよう――」




