特別な戦い
ラザロと面会した後、俺は宿へ戻った。そして大部屋に集まり、仕事を引き受けたことを報告。するとメルが、
「なるほど、ロードガーデン側から水を向けてきましたか」
「何か情報があったか?」
「はい、町の周辺に出現する魔物が驚くほど強いと。ギルド側も事態を憂慮し騎士団と連携しようか提案しようと思っているらしいです」
「だが、できないと」
「難しい、みたいですね。ロードガーデンの騎士団は実力も高く、傭兵や勇者に頼るなど恥だ、と考えているような思想の方もいるようで」
「難儀な感じだな……」
「今回仕事を請けたわけですが……ロードガーデンから依頼をされました、では騎士団が反発するでしょうか?」
「ああ、そこについてはこうしてくれとレクチャーされた。ギルドに関する仕事で偶然魔物と戦うことになった、みたいにしてくれると助かるってさ」
「あくまで知らない中で首を突っ込んだと」
「公的な依頼じゃないから自由に動けるけど、助力を求めても手を貸してもらえなさそうなのが懸念点かな……でも、まあ」
俺は仲間達を見回す。
「魔物は強くても数は少ない……なら、俺達だけでいけるだろ」
「魔物の能力を検証してみないと断定できませんが、無茶な仕事ではなさそうですね」
ヘレナやフィリスはうんうんと頷く……これまでの修行の成果を試すいい機会とか思っているかもしれない。
「メル、魔法で魔物に関する情報を集めてくれ。タイムリミットは天王会議開催前までだが……」
「周辺情勢を探るだけでいいのであれば、そう時間は掛からないかと思いますよ」
「なら俺は外に出るための口実としてギルドから仕事をとってくるけど……どうする?」
「ひとまず私は外に出て魔物の位置などを捕捉します。その後、位置に合わせた仕事を請け負う、ということでいいかがでしょうか?」
「ああ、その方がいいな……早速動いてもよさそうか?」
「問題ありません。時間制限がある以上、早急に動くとしましょう。フィリス、よければ手伝ってください――」
俺達は行動を開始する。メルとフィリスは宿を出て、ヘレナと俺はひとまず待機となるが――
「戦う場合の打ち合わせでもしておく?」
「魔物が強いって話だからな……ここまで鍛錬に集中して、連携というのはあんまりやってこなかったからな」
「最初に出会った時以来かな?」
「まあそうだな……とはいえ、そう懸念する必要はないよ。ヘレナの実力なら、連携はそう難しくない」
「……あなたがそう言うのなら信用するけど、何かやった方がいい?」
「これまでとは違う仕事だから、準備についても特別……と、考えているかもしれないけど、その必要はないよ。今回の仕事はあくまでいつもの範疇だ」
俺の言葉にヘレナは「そう」と応じつつ、
「それじゃあ、あなたが考える特別な戦いというのは……やっぱり魔族との戦い?」
「そうだな……旅が続けば魔王が復活していなくとも、魔王軍の幹部と戦うことになるかもしれない。魔王がいた居城に踏み込むことになるのなら、そういうケースになるだろうな」
「居城……」
呟くと、俺は「気になるか?」と問い掛ける。
「俺は魔王討伐で行ったことあるけど……」
「そうは言っても、特別なものではないのでしょう?」
「まあな。正直、見た目は人間の城とそう変わりはないよ。黒を基調としているのは特徴と言えば特徴だけど、城下には町もあるし、最初訪れた時に正直地味だな、と思ったりもした」
そうは言うものの、俺はさらにヘレナへ続ける。
「けど、近寄りがたい雰囲気は持っていた……魔王ともなれば、威嚇ですらとんでもない規模でさ。俺が居城へ到達した段階で、城に入る前の時点で肩にのしかかるような圧力が掛かっていた」
「それは魔力による圧、ってこと?」
「ああ、そうだ……だから魔王の居城は魔王という存在がいてこそ特別だし、脅威となるもの……魔王の傍にいる側近なんかも、居城の圧力を高めるよ要因だったかもしれない」
「それでも……トキヤは挑み、勝った」
「まあな」
肩をすくめる俺。ヘレナとしては「もっと誇ってもいいのでは?」という雰囲気だったが、俺は何も言わなかった。
「さて、俺達はメル達が戻るまでは待機だな……明日からおそらく忙しくなるだろう。今のうちにゆっくり休んでおくのもいいんじゃないか? 前線で戦う俺達は、気合いを入れないといけなさそうだし」
そうは言いつつも、俺はヘレナへ告げる。
「けど、メルの援護に加えてフィリスの魔法もある……彼女も旅の途上で成長した。今回の仕事は、仲間同士で連携する方法などを模索する機会にもできそうだ。まあ、そう心配しなくていい。俺とメルなら……どれだけ魔物が強かろうとも、なんとかなるさ――」




