魔王の行く末
以降はメルと共に町中を見て回り……時間はあっという間に過ぎ去っていった。
正直、メルが提案したデートというのは、遊園地のようなアトラクションを体験するようなものではなく、町を見て回って雑談に興じるという、すごく落ち着いたものだった。
これが彼女の望んだもんあのだろうか、とふと考えたが彼女自身は満足そうだったし、こちらから何かを言うことはなかった。
……たぶん、ヘレナやフィリスにせっつかれてデートをしている、ということだから彼女達としてはここで一気に決着をつけるべきだと考えているんだろうな。とはいえ、俺自身おいそれと決断できるようなものではないため、メルには悪いが、今のところ回答は出せない。
それに――俺はなんとなく思う。この旅の結末によって、この世界に残るか否かを決断するような気がする……根拠はないけれど、魔王……復活していないと確信した魔王という存在。それによって、大きな影響を受けそうな気がした。
そういったことを昼食時、メルへ伝えると彼女もまた同意した。
「トキヤは魔王を打倒するために召喚されてしまった存在です。そこは大変不本意だと思いますが……確かに、魔王の行く末などがあなたの人生に関係する可能性はありそうですね」
「……なんだか不満そうに見えるけど」
メルが少しばかり口を尖らせていたので言及すると、
「トキヤの言い方だと、他者によって人生を変えられるという話ですから、トキヤ自身の意思で決めるべきことである以上、不満はあります」
「自分のことのように憤慨するんだな」
「当然です」
メルはそんな返答だった……と、そんな風に今後のことについて色々と話をしつつ、デートは進む。そうして時間はあっという間に過ぎ去り、夕方を迎えた。
最後の最後、メルは行きたい場所があるとして、高台へと向かった。そこは町を一望できる場所で、見晴らしも良く遠くには、別の町さえ見えた。
周囲には俺達のようにここを訪れたカップルや家族連れがいる……そうした人々の中に混ざり、俺達は沈みゆく夕日と茜色に染まる大地を眺める。
「……綺麗ですね」
「ああ、そうだな」
幻想的な光景、と表現しても良かった。少しずつ茜色が濃くなっていく世界の中、俺達はただ景色を眺め続ける。
「……トキヤ」
そして彼女は俺に告げる。
「明日以降は……どうされますか?」
「ん、明日もどこかへ行くんじゃないのか?」
「最初、そのつもりでしたが……正直、一日で満足してしまいました」
俺に首を向けメルは笑う。そんな彼女に俺は、
「いいのか? 正直俺は何もしていなかったように思えるけど」
「はい……ただ、今回で終わりというわけではありません。また別の場所で、こんな形でお誘いできたらと思います」
「ああ、いいよ」
俺の方も何かやったらいいのかな、と思っていたらメルはそれに気づいたらしく、
「トキヤは何もしなくて大丈夫ですので。負担になったら良くないですし、私がトキヤを引き留めるために好き勝手やっているだけですからね」
「……いいのか?」
「はい」
その笑みを見れば、言及は本心なのだろう……俺は小さく頷き、
「メルがそう言うのなら……ただ、一つ問題があるぞ」
「問題?」
「こうしてデートのセッティングをしたということは、当然ヘレナ達も一枚噛んでいるわけだ。で、今回の結果としては、メルが何を思っているのかを俺が理解した……けど、それ以上、より具体的に言えば俺はこの世界に残るとか、そういう言質はまだ得ていないわけだ」
「そうですね。私としてはさすがに一度でその結論は難しいと思っていたので……」
「ヘレナやフィリスは納得するのか?」
俺の疑問にメルは固まる。
「メルは俺に対し気を遣っているし、こうしてデートをしたことだって結構な決断だと思うんだが、元々はヘレナ達がこうすべきだと後押ししたんだろ?」
「ええ……そうですね……」
「今回の結果は彼女達が満足しそうなものか?」
メルは腕を組み考え込む……そして、
「……まあ、なんとか説明してみます」
「そっちの方で気苦労がありそうだな」
「両者とも、察しが良いことに加えてもっと迫るべきだと語気強めに言っていましたからね……」
「まあ、戦いに支障がないようにはしてくれよ」
「はい、そこは大丈夫です」
本当かなあ……などと思ったが、口にはしなかった。
そして俺達は宿へと戻ることに……正直、仲が進展したかと言われると微妙かもしれない。でもまあ、一歩進んだことは間違いないし、俺も元の世界に帰るか否かの材料の一つになったことは確かだ。
この旅がどこまで続くかわからないけれど……いずれ来る終わりに、備えておく必要はあるだろう――そう結論づけ、一日は終わりを告げた。
余談だが、メルは今回の結果を報告した結果、ヘレナ達は不満たらたらだったらしい。たぶんロードガーデンでも何かあるだろうな、と俺は思ったのであった。




