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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第二話

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答えを示すために

 メルが固まり、黙りこくった姿を見て、俺は全てを理解した。つまり彼女は――


「……はあ」


 そしてメルは、ため息を吐く。


「トキヤ……私は別に何か失敗したわけではありませんよね?」

「まあ……強いて言うならヘレナが今までにない行動をしたことくらいかな」

「それで言い当てられたら何もできないじゃないですか……」


 まあ確かに。


「ただまあ、ヘレナはフィリスと交流を深めようという意思もあっただろうから、そこまで違和感はなかったんだけど」

「小さな引っかかりで私に言及したというわけですね……」


 メルはもう一度ため息。次いで食事を始める。その様子はどこかやけ食いのようにも見える。


「……それで、全てを察したトキヤとしてはどうしますか?」

「……うーん……」


 俺はメルを見る。なんというか、開き直っているようにも見える彼女に対し――


「一つ訊きたいんだけど、なんで俺なんだ?」

「それこそ愚問ですね。二度も魔王を破った人の近くにいたのです。惹かれないわけがないと思いませんか?」


 ……そういう言い方をされるとなあ。


「とはいえ、正直、私はあなたに言うつもりはありませんでした」

「それは……何故だ?」

「一度目も二度目も、あなたは元の世界へ帰ると語っていた。そうであるなら、私があなたに好きだと言うだけで、その決断を鈍らせる可能性がありました」


 そう言いながら、彼女は俺の目を見た。真っ直ぐ――こちらを射貫くような目だ。


「あなたに好意を寄せていた以上、私はあなたの負担になりたくはなかった……だから、今まで話さなかった」

「なるほど、な……それは申し訳なかったよ。でも、今は――」

「話を聞く限り、今度はもしかすると帰らないかもしれない」


 そう述べると、メルは俺から目を離さぬまま続けた。


「そうした可能性が今まで以上にあることと……何より、今回旅を終えてもし帰ったのであれば……さすがに、今生の別れになるでしょう」

「年齢的にもそうだろうな」

「であれば、今回こそ最後のチャンスだと思いました……それに」


 と、メルは笑う。


「さすがに……これだけ共に戦ったのですから、少しくらいわがままを通しても良いでしょう?」

「……まあ、そうだな。メルにはもの申す権利はあるよ」


 うんうんと頷くメル……それを見た俺は、


「今回のことは、誰の発案だ?」

「ヘレナです……ただ、なんというかフィリスも察してようで……」

「え? 仲間になってまだ浅いのに、か?」

「別に気取られるような失態はしていないと思うのですが、二人は他者の感情に敏感なようでして……」

「……ヘレナ達の能力が高いのは認めるけど、この場合俺が気づかなさすぎてマヌケってことにならないか?」

「私が絶対に気取られないようにしていたので……そこは気になさらずとも大丈夫ですよ」


 そう言いつつ、メルは食事を進める手を止めた。


「……こうしてバレてしまった以上、もう引き返せませんので真正面から言います。明日、デートをしましょう」

「……面と向かって言われるとなんだか面白いな」


 俺が感想を述べると、メルは一転苦笑した。


「正直、恋だの愛だの言う関係性ではなくなっていますからね……私自身もそれは理解していますよ。トキヤとしては戦友が一番しっくりくるでしょうか。そんな間柄である以上、いきなりデートとか言われても混乱するでしょう」

「それは、まあ……でも、喜んで誘いに乗るよ。思えば仲間として色々旅をしてきたけど、こんな風に接することはなかったな」

「そうですね」


 メルは同意し、俺達は明日に関して色々と決めつつ食事を進める。


「なら、そういうことで……あ、午後からの買い物はどうする?」

「それは私がやりますよ。トキヤは宿でゆっくりしていてください」

「……明日のプランについて色々考えるのか?」

「そういうことです。トキヤは何もしなくて大丈夫です。私が誘ったので、私が計画を立てます。買い物をしつつ、どうしようか考えますので」

「……午前中で町を見て回ったのも、考えながらだったか」

「ええ、明日まで時間はありませんからね」

「ちなみに俺が気づかなかった場合は……」

「買い物をしてトキヤの反応を見つつ、どうにか一緒に観光をするという形で話を持っていこうと考えていました」

「……なんというか、申し訳ないな。色々と苦労させているみたいで」


 俺の言葉にメルは笑う。


「私が好きなようにやっているだけなのでお気になさらず……さて、トキヤは宿で休んでいてください」


 ――そして俺達は店を出て分かれた。一人メルが町中に去るのを見送った後、


「……さて、どうするか」


 メルは今回、三度目でラストチャンスだと思ったからこそ、引き留めるために動き出した。これを逃せば今生の別れになる、というのなら当然……むしろ、今までよく黙っていた、といったものだろう。

 俺の方も、どういう決断をするのであれ、きちんと答えは示さなければならない……ここで元の世界のことを思い返す。


 ――俺は宿に帰っても、考え続けた。そして時間はあっという間に過ぎ――翌日を迎えたのだった。


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