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第十九話 仙器契約 練と湖月


湖月と名乗った存在は、翌日には錬の前に現れた。


「本当にネズミなんだな」

《当然じゃ、銀鼠じゃぞ》

「それに体は錫?なのか?」

《勉強不足じゃ馬鹿者、この体は神銀じゃ》

「神銀だって!」

《ほう、知っておるか》

「いや、知らない」

《お前なあ・・・・・》


湖月の説明によると、精神感応金属である神金ヒヒイロカネの下位互換で、驚異的な硬度を誇る

神金と違い、神銀は非常に柔らかく柔軟性に富んだ金属らしい。

だからあのような木の根の様な形状に成れるのだそうだ。


「そもそもあの菓子器に封印されていたのは何だったんだ?」

《300年ほど前に殺された男の心臓が入っておった》


甘言で女に夫も子供も捨てさせ何もかも吸い上げた男の心臓らしい。


「うええ、何でそんな物が」

《嫉妬に狂った女の情念じゃな》


金が底を尽き始めた女を捨てようとしたが、異常な程執着されていた男は寝てる間

に心臓をえぐり取られて死んだらしい。

女はその心臓を菓子器に入れ、それがまるで男本人で有るが如く死ぬまで慈しんだ


「それで菓子器が呪物になったのか」

《いや、その情念を宿した菓子器を呪詛の道具にしようとした阿呆のせいじゃ》


噂を聞きつけた馬鹿な貴族が、横恋慕した他家の夫人に呪を使って自分に振り向

かせようとした。


「つまり呪いは失敗したと?」

《当たり前じゃ、聞きかじった程度の呪など上手く行く筈が無い》


中途半端に発動した呪は、相手に向う事無く、その場で周囲の穢れを取り込むだけ

の呪物に成り果てた。


「じゃあ、その貴族は?」

《本人だけでなく屋敷の人間も一人残らず呪詛の犠牲者となった》


いきなり主人のせいで死ぬ羽目になった使用人達の恨みも、そのまま穢れとなって

菓子器に取り込まれてしまった。


「ひええええ」

《放置すれば危険だと、当時の使役者が儂を使って封印したのじゃ》


そのまま500年も神社に安置しておけば、自然と浄化され無害になる筈だった。


「それが何で市場に出てるんだよ、危うく死に掛けたじゃないか」

《どこかの馬鹿が神社の御蔵に眠っておった我らを盗み出したんじゃ》

「どこのバチあたりだ」

《少なくとも日本人では無かったのう》

「さよか・・・・」


後日、寺社仏閣を狙った某国の窃盗団が検挙されたと報道が流れた。


「それであの菓子器の呪物は?」

《うまい具合に力が低下したのでな、曼荼羅の呪力を嫌って容器に入ったわい》


容器に逃げ込んだ呪物は、回収に訪れた職員によって無事に回収されている。


「へええ、良く処理できたな、運が良かったな」

《へええ、では無い!》

「な、なんだよ」

《お主に力の殆んどを浄化されたので力を失ったから出来たんじゃ!》

「ええと、それって」

《眠っておった退魔の本能が覚醒したんじゃ》

「じゃあ、何で俺はあんな目に」

《認識していない為、無防備に呪詛を喰らって死に掛けたんじゃ》

「認識出来るなら、もうあんな目に会わなくても?」

《中級以下なら、まず問題は無かろう》


現代社会に於いて、錬の様な存在は稀有だが人権もくそも無かった昔には呪術師の

子供や買ってきた幼子を強制的に穢れから切り離した生活を強要し、退魔能力を持

った下僕を作り出していた。

今なら警察と人権団体が一個大隊規模で襲来する案件だ。


「おお、なんか俺、凄ええ」

《喜んでばかりも居られんぞ》


退魔能力を持つ者は古来より権力者の奴隷として、その一生を縛られていた。

そして錬は現代では非常に希少な退魔能力保持者である。


《今の権力者が聖人君主ばかりなら問題ないが?》

「真逆の連中ばかり・・・・だな」

《雁字搦めにされて、奴隷にされるのが落ちじゃな》

「随分具体的だな」

《儂の最後の使役者で友だった男がそうじゃった》


稀有な退魔能力を持っていたが為、時の権力者に目を付けられて、妻と子供を人質

に取られた挙句、敵対者からの呪に対する盾にされて死んたのだ。


「まさか、その権力者って言うのは・・・・・」

《呪に失敗した阿呆な貴族の父親じゃ》

「・・・・・・・・救いのない話だな」

《以来、儂は呪の封印として眠りについた》


当然、その友人が死ぬと新しい使役者を連れて来たが、湖月はそれを拒否した。

仙器である湖月は自ら契約者を選び、選んだことで使役者と盟約を結ぶ。

つまり、選ぶのは仙器であり、命令を下すのは使役者になる。

他者の介入する余地は無い。


「一つ気になっていたんだが、聞いて良いか?」

《構わんぞ》

「眠っていた割には、現代社会の事に詳しすぎないか?」

《我ら仙器の本体より、世情程度は引き出す事が出来るからな》

「おまえ、本体があるのか?」

《神器が我らの本体じゃ》

「神器って、あれか?勾玉とか、草薙の剣とか」

《あれは神器の中でも特別じゃ、いわば国器と言っても良い》

「じゃあ、お前たちは?」

《我らの本体は十二神将を奉じた十二神器、儂はその一、子の神器の分体じゃ》

「思ってたよりも、高位の存在だった・・・・」

《失礼な奴じゃな、儂を何だと思っておったんじゃ!》

「胡散臭い、どこぞの使い魔か何かと・・・・」

《全く、これから契約してやろうと言うのに、なんという言い草じゃ》

「はい?」

《察しの悪い奴じゃな、契約してやると言っておる》

「はいいいーーーーーーーーーーーーー?」




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