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第十三話 想いの始まり 秋月 琴音



秋月 琴音は練よりも三才ほど年上であり、住んでいる場所も高校も違う。

更に言えば、会話をするのでさえ今回が初めてだ。

だが、琴音は練をしっていた。

だが、練は琴音を知らない。

二人は全く違った環境の元で育ってきた。

両親から一かけらの愛情も与えて貰えず、周りの人間からも厄介者と蔑まれていた

練とは対照的に、琴音は両親から零れ落ちる程の愛情を注がれ一族からは姫よお嬢

よ、と大切にされた。

そんな何もかもが正反対の二人だが、たった一つだけ共通点があった。

高校に入学するまで、幼馴染と称する存在も含めて唯の一人も友人が居なかった。

錬の方は言わずもがなだが、琴音に至っては親友などといった大それた存在では無

く、単に友人と称する人間さえも存在しなかった。


「○○君?足が速いだけでしょ、何でそんなに騒ぐの?」

「△△君?球蹴りが上手なだけの人でしょ、何で態々足を運ぶ必要があるの?」


同級生達の熱狂ぶりが理解出来なかった。


(何が悲しいんだろう?ドラマ何てただの作り話なのに)

(何でそんなに熱中するの?アイドルなんて顔が整ってるだけじゃない)

(何で無駄なお金を使うの?バレンタインって唯の企業戦略なのに)


知能指数が高く、精神成長の速かった琴音は同年代の思考が幼稚に思えて仕方が無

かった、理解出来なかった。

そして、それを見た両親はと言えば。


「うちの子は天才だ(よ)!」


周りの親戚一同は。


「姫は神童だ(じゃ)!」


結果、琴音の交友関係は様々な専門指導員や家庭教師、そして矢鱈と絡んでくる親

戚一同の大人達ばかりになり、精神成長に追い打ちを掛けた格好になってしまった

その歪さを本人が自覚したのは、同年代の者達がそれなりに、それぞれに見合った

嗜好を手に入れ始めた高校での事だ。

おかげで、極少数ながら友人と呼べる存在も出来、更には東神野 明日香という名の

ちょっと特殊な趣味の親友まで得る事になった。


「あんた、頭が良すぎて余計な事を考え過ぎなのよ」

「考え過ぎ?なのかなあ」

「そうよ、お祭りや花火なんて、綺麗だな、楽しいな程度の理由で十分なの」

「そう、なのかなあ?」

「そうなの!だから今度の日曜日はお祭りにGOよ!」

「はいはい」

「ちなみに浴衣は持ってるの?」

「花火を見に行くと言ったら、両親が十着ほど買って来てくれた」

「・・・・・・・相変わらず、あんたの親御さんは暴走してるわね」

「十着もどうやって着廻せばいいのやら・・・・・」

「あんたも暴走してるわね、一着選びなさいよ」

「でも、せっかくのプレゼントだし、何とか」

「無理だって、どうして何とかしようとするかな」

「何事も最大限の努力を・・・・・」

「しなくていい!」


ちなみに明日香の浴衣は特注品で、某アニメの主人公の顔が胸元に踊っていた。

そう、東神野 明日香は重度のアニメヲタクで、過激なコスプレイヤーである。

お互い他人の目などに一切忖度しない性格をしており、そのことで親友となった。


「私の横を平然と歩くのは、琴音だけよ」

「そう?」

「他の娘からは、ねえ・・・やっぱり敬遠されるのよ、この格好」

「馬鹿馬鹿しい、赤の他人の評価に価値など無いわ」

「ふふふ、やっぱり琴音は最高だ」


周囲の視線など物ともせず歩く二人は、祭りの会場でかなり目立っていた。

ちなみにもう一つの理由は、二人ともモデル並みの容姿と美貌を持つかなりの美人

だと言う事だ。

そして、やや強引に連れて来られた祭りの会場で琴音は練を見つけた。

そう、出会った訳でも紹介された訳でも無く見つけたのだ。

祭りの会場で練は設営された食事ブースで洗い物のアルバイトをしていた。

高校生になったばかりの練は、祖父の伝手で他人との関わりを持つ練習も兼ねて働

いていたのだ。


「きれい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「そうでしょ、そうでしょ、来て正解だったでしょ」


だが、その対象は全く別の物だった。

花火が聞きなれた射出音と共に華麗な光の競演を始めると、会場に居る人々は勿論

運営スタッフや露店の店主、交通整理の警備員に至るまで、漆黒の夜空を見上げ、

暫しその美しさに心を奪われた。

その数千人の人間の中で二人だけが、たった二人だけが違う物を見ていた。

錬はひたすら自分の仕事に没頭する為に手元のコップや皿を見つめ、そんな錬の姿

を見て琴音は美しいと思った。

数千人の視線と心を集める花火では無く、額に汗を滲ませ、ただ一人だけ下を向く

練の姿を美しいと思った、思ってしまったのだ。


「ああ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


溜息が漏れる程、琴音は練を見つめていた。

この会場の中で極めて異質な感覚を持つ存在、それは琴音自身でもあった。

その為、琴音の心を支配したのは、初恋等と言う曖昧で可愛らしい思いでは無く

執着と言ってよい程の想いだった。

何処の誰かなどどうでもいい、その性格も、人格さえも関係無かった。

その存在自体に心ごと、何もかも全て持って行かれたのだ。

体中を炎のような焼けるような感情が駆け巡り、鋭敏になった感覚は狂いそうな

程の快感に置き換わって、もう自分では制御出来なくなった。

錬が手に入るなら全ての物を代償にしても構わないほどの盲執だった。

もし琴音に法律を守る意思が無ければ大量虐殺さえ容認しただろう。




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