Ep7.明日は土曜日
「休め。気をつけ。これで6時間目の体育を終わります」
「「「はい」」」
「ありがとうございました」
「「「ありがとうございました」」」
楽しい楽しい体育の授業はあっという間なもので、少しの寂しさと疲れを引き連れてとぼとぼと教室へ戻る。
しかし、これが平日最後の授業なので明日からは休みだ。勿論そっちの方が嬉しい。
「明日は何して遊ぶ?」
1週間の全授業が終わったとなれば、早速話題は遊びの話へ。
玲と心寧は小学生の時から、土曜日も日曜日も暇があったら一緒に遊んでいるのだ。
昼ご飯を食べに行ったりカラオケに行ったり、子供でも行ける範囲を網羅するくらいには遊びに行っている。
ただ、一番多いのはゲームだ。
玲の家もしくは心寧の家に転がり込んで、日中はゲームをしているなんて日常茶飯事。昼ご飯や夜ご飯を頂く事だってしばしばある。
学校帰りにどちらかの家に寄ってそのままゲームする事もあるし、今はオンラインでも出来るので、平日の夜にゲームする事もある。
ビデオゲームだけでなく、カードゲームやボードゲームの類も2人は大好きだ。
「そうだなー、やっぱ『アレ』じゃね?」
「だよねっだよねっ!」
『アレ』とは、最近2人がどハマリしている『みんなのユートピア』、略して『みんピア』というマルチプレイが可能なRPGゲームの事だ。
ジョブを選択し、レベルを上げて魔王を討伐する。あるあるなストーリーだが、収集要素が大量にあったり、マルチプレイ故連携の幅が大きかったりと刺激的な要素が多く、今人気沸騰中のゲームだ。
玲と心寧は2週間前にハマり始め、かれこれ40時間くらいはプレイしているが、まだ半分も攻略出来ていない程ボリューム満点だ。
「んじゃあ家来いよ。丁度、オレの父さんと母さんは明日デートでいねぇし、一葉も遊びに行くって言ってたからな」
一葉は心寧の4つ下の妹で、玲ともたまに遊ぶ仲だ。
というか、玲が心寧の家に遊びに行きすぎて、いつの間にか友達になっていた。
「相変わらず、心寧のお父さんのお母さんは仲いいね」
「だろ」
心寧の両親はもうお互いに40歳近いはずだったが、未だに2人っきりでデートに行っている。先週は水族館に行っていた。
玲の前だろうと平気でハグだのキスだのするので、2人のラブラブ具合は玲も良く知っていた。
ハグの経験は玲にも何度かある。心寧の温かさと柔らかさを鮮明に感じ取れて、ちょっと恥ずかしいけどずっとやっていたくなるもの、ハグはそんな感じだ。
――しかし、キスはどうか。心寧の両親がやっているのは何回も見たことあるし、恋愛ドラマやアニメでも見たことある程度で、その感触も、味も、何一つ分からない。
でも、心寧の両親、そしてドラマやアニメの中の恋人は、キスしている時もした後も、幸せそうな顔をしていた。
――それだけ、気持ちの良いものなのだろうか。
「どーした?唇になんか付いてるか?」
「な、なんでもないっ」
キスの事で頭がいっぱいになり、ついつい心寧の唇をじーっと見つめてしまった。
桃色でつやつやで、柔らかそうな、とっても綺麗な唇だった。
「まーともかく、オレの家でみんピアでいいか?」
「う、うんっ!」
勝手な妄想でドギマギしているうちに明日の約束が決まり、教室に辿り着いた。
終わりの会が始まるまでにさっさと着替えを済ませ、終わりの会が終わったらそそくは学校の外に飛び出す。
見慣れた帰路で明日遊べる喜びを分かち合い、大通りを過ぎたら再び恋人繋ぎをしてみる。
今度は心寧に襲われず、いつもの様にドキドキし合いながら「ト」の様な分かれ道でバイバイして、心寧との1日が終わった。
その間、キスの事がずーっとチラついて、心の奥底でドギマギしっぱなしな玲なのだった。
お久しぶりです!なおいです!
夏休みの宿題を滞納していて書くのが遅れました。まだ終わってません。
今回は、『胡桃玲』の名前の由来についてお話したいと思います。
まず下の名前はというと、男の子と女の子、どっちにもとれる名前を付けようと考えていました。
そこで、私が「玲」という漢字が好きだったので下の名前はこれに決まり、名字は、「『胡桃』ってめっちゃ可愛くね······?女の子っぽいし」となり名字が『胡桃』になりました。
ということで、次回Ep8でお会いしましょう!さようなら!