表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

Ep4.小豆の恐ろしさ

 星羅と小豆の尋問を受けること約10分、築70年で少しボロくなった校舎がやっと間近に見えてきた。

 玲と心寧の恋愛事情を情け無用で聞いてくる2人だったが、周りを歩いている生徒に玲と心寧の関係が露見しないよう、途中からは小声で話してくれた。

 意外と気遣いが出来るんだな、と少し失礼な事を心寧は考えてしまった。

 そして、こうとも考えていた。2人が周りに聞かれないようにしてくれるなら、聞き耳を立てやすい教室では尋問してこないだろう、と。

 つまり、あともうすぐでこの羞恥の時間を終わらせることが出来る――!


 が、それは星羅も小豆も分かっていた事だ。そのため、最後の質問が一番重要なものとなる――。


「それじゃあ最後に」


 と前置きを挟む小豆が、無駄に勿体振りながらスススっと心寧の右手側に擦り寄って来た。

 怪しげなオーラをぷんぷん放っている為、心寧は警戒心を感じざるを得ない。

 そんな絶対に何か企んでいるだろう小豆は、心寧の耳元でこんな事を囁いてきた。


「――私達と会う前、玲と何してたの?」


「――っ!!」


 そこで初めて、心寧は小豆の恐ろしさを体感した。

 この小豆とかいう女の子、のらりくらりしている様で案外勘が鋭い。心寧や玲の表情と反応だけで、大通りに出る前の心寧と玲に何かがあった――いや、()()()()()()()()()というところまで見抜いていた。


「いやまて······誘導されてたのか?」


「あったりー」


 今思えば、「最近心寧にされて嬉しかったこと、教えて」や「2人だけで登校してる時、何かしてる事ある?」といったように、今日の路地での出来事と関係しそうな質問がちょいちょいあった。


 それもそのはず、小豆は玲と心寧と出会った瞬間に、2人が『何か』して来たことをある程度予想していた。だからこそ、その予想をより強固なものにする為の質問を何個かふっかけていたのだ。

 確かに、星羅と小豆が駆け寄って来た時は、玲と心寧がちょうどあの甘い逢瀬をフラッシュバックさせて照れ合っている時だったが······それでも、恐るべき観察眼だ。


「ちょ、ちょっと、2人で話を進めないでよ!あと小豆、なんなのよそのドヤ顔!」


 とそこへ、ずっと放置されている事にムズムズしていた星羅が、我慢できずに小豆に噛み付いた。


「ふふん、読みが当たると気持ちいいものなのだー」


 食らいつく星羅に小豆はぶいぶいとおちょけてみせる。やっぱり2人は仲がいいなぁ、と他人事の様に心寧は思う。

 続いて、同じく話に着いて行けてなかったであろう玲をチラッと見る。

 その視線に気づいた玲が目を合わせてくれるが、やっぱり話に着いて行けなかった様子できょとんとしている。相変わらず可愛い。


 小豆の恐ろしさと星羅&小豆コンビの仲の良さ、そして玲の可愛さを感じている内に、もう玄関の前まで来てしまった。――それ即ち、尋問タイムの終了を意味する。

 やっと終わりだ······と玲も心寧も気が抜ける。


 まだ学校が始まっても無いが、今日は本当に色々な事があった。

 大通りに出る前には、恋人繋ぎをしたり路地であれやこれやしたりして、大通りに出て星羅と小豆と出会ってからは2人の熱量と質問に揉みくちゃにされ、玲も心寧もとにかくドキドキしまくりだった。


 しかし、それもここで一区切り。やっと落ち着ける――と思ったのも束の間、最後の最後に、「玲」と小豆が呼び止めた。

 抜けた気が思わずグッと引き締まり、今度は何を言われるのか、と玲が身構える。

 その間に小豆がスススっと玲の左手側に擦り寄っていき、弱い耳元でこう囁いた。


「今日心寧に何されたか、後でこっそり教えて」


 その小悪魔的な囁きが、張り詰めた気のバリアを貫通して玲の心臓をばくんと跳ね上げさせた。

 先の心寧と同じ様に、驚きと恥ずかしさと、あとほんのちょっとの尊敬が籠もった顔を玲が作る。それを気味良く思ったのか、小豆がドヤァっとしてみせる。

 何を言ったかは心寧には聞こえなかったが、会話の流れと玲の反応で、なんとなく察せてしまっていた。


 最後の最後まで玲と心寧の心を乱した小豆、そして星羅。

 この10分の猛攻で、玲と心寧は1つの考えに至っていた。――星羅と小豆には、これからも恋愛の事でグイグイ来られるのだなぁ、と。


「それじゃ、私達、体育係の仕事あるから」


「じゃあね2人とも!良いこと聞かせてもらったわよ!」


 散々搾り取るだけ搾り取って、星羅と小豆は嵐の様に去っていってしまった。

 やっと訪れた静寂に、今度こそ気を抜ける――なんてことは無く、玲も心寧も頭を抱えていた。


 まず玲。「喋りすぎたぁ······」と唸っている。

 健気で素直なのは玲の良いところだが······まぁ一長一短といったところだ。

 続いて心寧。小豆や星羅に、今日の自分の暴走を知られないかと心配している。

 玲は恐らく、「後で教えて」とかなんとか小豆に言われていたのだろう。が、あれは玲もバレたくないはずなので、流石に自白する事は無い、と信じたい。······玲の性格が性格なので、どうしても心配になってしまうが。


「話すんじゃねぇぞ」


「え······あっ、も、もちろん!」


 念の為に釘を刺しておく心寧に、一瞬何を言われてるか分からずテンパる玲。

 その2人の間には、恋人らしい初心な雰囲気がもんもんと漂っていた。


 付き合い初めて1ヶ月とちょっと、今日の登校は一段と刺激的だった。

 玲の恋人繋ぎから始まり、心寧が獣となって玲を襲い、その後たまたま出会った星羅と小豆に尋問を受け、最後は小豆に掻き回された。


 普段とは比べ物にならない程ドキドキした登校模様だったが――玲も心寧も、「悪くは無かった」と思ってしまっているのだった。



 ――ちなみに、先程小豆が玲の耳元で囁きかけた時、玲がぴくっと身体を弾ませたり、「ひっ」と声を漏らしてしまっていた。そのため、


「玲、耳弱かったんだ」


 小豆に、『玲は耳が弱い』という事がバレてしまった。

 そしてその情報は、いずれ星羅にもその情報が渡る事となり――その情報の枝が、どんどん広がっていく事となる。

 それがどれほどの脅威となるか······この時の玲は、まだ気づいていなかったのだった。

ご愛読ありがとうございます!作者のなおいです!


ここまで見てくださっている方はなんとなく察しがついていそうですが、私なおい、『男の娘』というのがもの凄く大好きです。キャラジャンルの中で一番好きです。

いつ好きになったのか、誰に影響されて好きになったのかは覚えていません。気づけば好きになってました。

そして出来たのがこの作品というわけです。ちなみに『オレっ娘』もめっちゃ好きです。なんなら『ボクっ娘』も好きです。


――多分中性的なキャラが好きなんでしょうね。私。


作者の好みが世に知れ渡ってしまったところで、次回Ep5でお会いしましょう!さよなら!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ