魔王に捕まった姫はエッチなことをされます
三百年前に魔王を継いだ私は、人間との戦いがめんどくさくてやりたくなかったので、強引に人間と和平して眠っていた。
そこをたたき起こされた。
寝ぼけている私に、勇者が言った。
「姫を返せ!」
姫ってなんだ。
それに、勇者若いな。
次に、勇者の連れの女の子が言った。
「さらわれた姫は無事なのですか?」
人間の姫なんてさらってないぞ。寝てたし。そんなのめんどくさいだけだろ。
それに、こっちも若いな。
私の部下が答える。
「ふははははは。魔王様に捕まった人間の女は、エッチなことをされるに決まっているだろ」
何言っているんだ、おまえ。
そもそも、私は女だ。
拘束された姫が叫ぶ。
「私のことはいいから、逃げてください。魔王の本当の目的は、あなたたちをおびき寄せることです」
いや、なんで、人間の姫が本当に捕まっているんだ。
初めてみる顔の女が言った。
「この魔王軍四天王の二番手が貴様らの相手をしてやろう」
誰だ、おまえ?
四天王ってなんだ?
「三番手もいるぞ」
おまえも誰だよ?
「姫。今、助けます」
「逃げて。私はすでに魔王に汚された身。せめて、あなた達だけでも無事に」
「ふははははは。すべての種族は、どすけべ魔王様にエッチされてしまうのだ。姫の次は、勇者の女のお前だ」
「わ、私は勇者の女なんかじゃないんだから」
とりあえず私は、爆発魔法で目の前のやつらを全員ふっとばした。
「私が眠っている間に、人間と戦争が再開したの?」
私の爆発魔法を受けて、まったくダメージがない部下がケロリと答える。
「いいえ。魔王様がお眠りになる前に通達した、戦争起こしたら魔王様がぶん殴る条約は、いまでも有効です」
じゃあ、さっきのあれは何なんだ?
「人間の姫をさらったのは?」
「あれは姫の方から押しかけて来まして」
どういうこと?
「魔王様。それは私から話させていただきます」
人間の姫が、気絶から立ち直り、私に頭を下げる。
丈夫だな。
魔王軍の四天王の二番手と三番手を名乗った二人も復活し、姫の後ろで私に頭を下げてくる。
「こちらは私の部下です」
と、人間の姫が紹介してくる。
それじゃあ、さっきの茶番もいいところだろ。
人間の姫の説明では、まだ気絶したままの勇者とその連れの女の子は、騎士見習いとその幼馴染だそうだ。
「思春期に入り、お互いを異性として意識してしまいぎくしゃくする関係。ついつい憎まれ口を叩いてしまう女の子。私はそんな二人の背中を押し、つきあってもらいたいんです」
「あのな。そういうあまずっぱい関係がいいのはよくわかるが、介入したら駄目だろ。遠くから眺めてにやにやするだけ。それが筋だ」
「お言葉ですが、魔王様は人間社会のめんどくささをわかってません。あと三か月もすれば、あの子に五十過ぎのじじぃとの政略結婚の話が持ち込まれるでしょう。おそらく、あの子は断れません。だから、その前に既成事実を作ってしまおうと」
「だから、それをどうするかは本人達が決めることだ。外野がどうこうすることではない」
「まずは、私の考えた最高の初体験の状況を聞いてください。圧倒的な魔王様の力に、一時退却をする勇者君とその幼馴染。だけど、どすけべ魔王に媚薬攻撃をされ、発情してしまう少年勇者。迷路のような魔王城で迷い、たどり着いたのは魔王の寝床。そのベットに身を潜める二人。熱に浮かされ苦悶する勇者。そんな姿に幼馴染は、自分の気持ちをさらけ出す。敵の本拠地であることの背徳感をスパイスに行われる行為」
「ちょっと待て。それは私のベットを、あの二人の子作りに提供しろと言っているのか?」
「はい」
私は大声を上げる。
「めっちゃ、いいじゃん。エモいじゃん!」
「ベットを貸していただけますか?」
「もちろん貸すよ」
部下が、私をほめる。
「私、魔王様の、そういうところ大好きです」
「つきましては、魔王様にやってもらいことが」
「やるやる。と言うか、やらせて」
「我はどすけべ魔王。貴様が浴びたその呪いの水は、あと二時間以内に、おまえを本当に愛してくれる人とエッチしないと死んでしまう呪いの水だ。ここには、お前を嫌っている、幼馴染しかいないから、お前は死んだも同然だな。がははははははは」
おわり