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4話 スキル覚醒

 ――スキル《エックスリンク》の習得完了――

 ――現実世界のSNS『X』との連動機能を獲得――

 ――心の中で「エックス」と唱えることで起動します――


「SNS『X』との連携って…さすがに冗談だよな?」

 

 修二は驚きで目を見開いた。


(ものは試しだ。一度実際にやってみよう)


 「エックス」と心の中で唱えると。


 ヴォーーン。


 視界の隅に小さなアイコンが現れた。

 ディスプレイはエックスのインターフェースまんまだ。


 意識を集中させると、それが拡大し、まるでスマホの画面のように情報が表示された。


(現実世界のSNSとつながるスキルなんて想像もしてなかったぞ…!)


 画面をタッチすると、当然のように反応する。

 スワイプなども問題ないようだ。


(ログイン画面? ひょっとして…このまま普通にログインできたりして)


 アカウント名とパスワードをタップして入力を済ませ、ログインを試みる修二だったが。


 バディーーン。


 結果、拒否されてしまい、新規アカウント作成画面へと飛ばされた。

 それから何度やっても同じだった。


(いつも使ってるアカウント名じゃ入れないっぽいな)


 仕方なく修二は新規アカウントを作成した。


 【ようこそエックスリンクへ。アカウント名を設定してください】


「アカウント名は…@isekai_villager_A でいこう」


 異世界村人A。

 ちょっとした冗談のつもりでこんなアカウント名した修二だったが。


 【@isekai_villager_A として認証登録いたしました】


「マジかよ!? 登録できちゃったよ!?」


 そのままスワイプを続けると、 【初投稿をどうぞ】という画面に切り替わる。

 このまま本当に投稿ができるのだろうか?

 

 半信半疑のまま、修二は初めての投稿をしてみることに。


 【@isekai_villager_A:異世界でレベル1の中年村人に転生しちゃった これから魔王を倒さないと現実の世界へ戻れないらしい 誰か助けてくれマジでヤバい #異世界転生 #アニメ #ゲーム】


 ポストを終えると、画面が更新され、投稿が表示されたが。

 数分待っても、リポストもいいねもゼロ。


 まあ当然と言えば当然だ。

 フォロワーもゼロなわけだから。


 それから似たようなポストを投稿するも、アクティビティはほとんど変化なく。


「つかこれ。本当に現実の世界に繋がっているのか?」


 本当に現実の『X』と連携しているのなら、こんなテキトーなポストをしていても誰も相手にしてくれないだろう。

 きちんと具体的な情報を投稿しなければならない。


(この際、個人情報を気にしている場合じゃないな。ちゃんと確認しないと)


 意を決すると、修二は新たなポストを投稿した。


 【@isekai_villager_A:僕は多磨高校2年の水嶋修二と申します。事情があってある方と連絡が取りたいです。目黒京香さん。このポストを見たら連絡ください。 #拡散希望 #SOS #交通事故 #昏睡】

 

 これで何かしらアクションがあるかもしれない。

 そう思い、投稿画面を覗こうとするが…。


(え?)


 なぜか先ほどのポストは投稿されておらず、削除されている状態となっていた。

 

「なんでだよ!」


 それから何度か似たようなポストを投稿しようとするも。

 

 ――この投稿は受理できません――


 そんなアナウンスが画面に表示されるだけ。

 どうやら個人名を書くと、ポストできないらしい。


「俺の名前も京香の名前も書けないってのかよ…クソッ」


 こんなスキルほとんど意味ないじゃないかと思う修二だったが、ふと思いつく。


(いや違う。投稿するだけがXじゃない。ポストを検索すればいいんだ)


 もちろん、誰のポストを検索するかは決めていた。

 京香のアカウントだ。


 彼女のアカウント名はすでに記憶していた。

 画面をサーチ画面に切り替えて、そこで京香のアカウント名を入力すると――。


 【@kyoka_meguro0314: 修二君、かならず目を覚まして 待ってるからね】


「京香…!」


 修二は思わず声を上げた。

 彼女のポストを見て、修二の胸は熱くなる。


 京香の投稿には病院のベッドで眠る修二の写真が添付されていた。

 点滴を受け、酸素マスクをつけた自分の姿が。


 写真は誰か分からないように加工されていたが、もちろん修二にはそれが自分だとわかった。


(これが…現実世界の俺なのか?)


 その痛々しい姿を見て、修二は思わず身震いする。

 自分がもうひとり存在するみたいで、とても不気味で奇妙な感覚だった。

 

 そこでハッとする。


(そうだ! DMなら…!)


 修二はすぐに京香のアカウントをフォローし、DMを送った。


 【@isekai_villager_A:京香、俺だ! 修二だ 信じられないかもしれないけど、俺は今異世界にいる 意識は別の世界にあるんだ 魔王を倒してぜったいに戻るから 待っててくれ!】


 思わず勢いでそうDMを送ってしまった修二だったが。


 送信してから、修二は自分の行動の馬鹿らしさに気づいた。

 こんなDMいったい誰が信じるだろう?


 異世界だの、魔王だの。

 京香からすれば、大切な人の命が危ない時に、無神経なDMを送ってきた頭のおかしい奴にしか見えないはずだ。

 

 瀕死の病人を愚弄する最低なアカウントに見えたとしてもおかしくない。


 数分後。

 予想通り、返信はなかった。


 代わりに【ブロックされました】の表示が。


「そりゃそうだよな…」


 逆の状況だったら、自分でも同じことをしたに違いないと修二は思う。

 

(京香の心情を考えればあんなDM送るべきじゃなかった。なにやってんだよ、俺は…)


 修二は落ち込んだ。

 しかし、このスキルが意味がなく無駄というわけではない。


 現実世界の情報が得られるというのは大きなアドバンテージだ。


 そして。

 天啓が下りるように、修二はふとひらめく。


(待てよ。この異世界が元々存在するゲームの世界ってことはないか?)


 修二が読んだことのあるラノベには、そのような設定の作品も多い。

 プレイしたゲームの世界の経験を生かして、主人公が活躍するのだ。

 

 ダメ元でもいい。

 現実世界の『X』に繋がっているのなら、何かしらの情報を得られるかもしれない。


 朝霧の村ヴァレス、聖剣エクスカリバー、ヴォルガ火山などのキーワードで調べていく。

 すると、予想外の投稿が見つかった。


【@moonseaool:クリムゾン・ファンタジアの攻略難しすぎん? 誰か朝霧の村ヴァレスで聖剣エクスカリバーを入手する方法教えて】


「うそっ…マジかよ」


 朝霧の村ヴァレス。

 しかも聖剣エクスカリバーの名前まで一致している。

 

 ほとんどダメ元で調べていた修二は、信じられない思いでさらにポストを検索していく。


 1時間ほどそうして検索を進めていくうちに、修二はある事実を知ることになる。

 朝霧の村ヴァレスや聖剣エクスカリバー、ヴォルガ火山という単語が登場するゲームが存在するということを。

 

 クリムゾン・ファンタジア。

 30年前に発売されたマイナーな同人RPG。


 今ではほとんど忘れ去られたゲームだが、根強いファンがいるようで、今でも攻略情報や裏技に関するポストが時々投稿されている。


 まだ偶然という可能性もあるが、これだけの固有名詞が一致するのはほとんど奇跡に近いと言えるだろう。

 

 修二は興奮していた。

 もし仮にここがその同人ゲームの世界の中なら。


(ゲームの攻略情報が使えるかもしれないぞ…!)


 その時だった。


「おいユーク! そこで何をしてる!」


 声に驚いて振り返ると、数人の村人が松明を持って立っていた。

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