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36話 襲撃

 翌日、四人はオーリアに到着した。

 久しぶりに神殿へ顔を出し、これまでの経緯をエリンダへと報告を済ませる。


 神殿のセリファと冒険者ギルドのミーナにも挨拶を終えた修二たちは、ここで一旦休息を取り、目的地であるヴァレスへと向かう予定とした。


「ユークさん、ギルドの掲示板に気になる注意書きが貼ってあったよ!」


 夕刻、食堂で食事を取っていると、ニャアンが慌てた様子で駆け込んできた。


「注意書き?」


「うん。なんでも黒マントの集団がガイア共和国の各地で暴れ回ってるらしいんだ!」


「黒マント…? ユーク、それって――」


「ああ。おそらく斬刻旅団の奴らに違いない」


 修二はアマテの言葉に頷きながら、一度料理から手を離す。


「近くの村も襲われたって、そんなことも書いてあったよ!」


「ひょっとして、ヴァレス村も…」


 ミリアが心配そうに小さく口にする。


「明日は朝一に出発しよう。危険が迫ってるかもしれない」


「そうだね!」


 四人は準備を整え、陽が昇る前にオーリアを出発することに。




 ※※※




 その日の夕方。

 四人はようやく朝霧の村ヴァレスの外れにたどり着いた。


「あれがヴァレスの村…?」


 ニャアンが息を呑む。

 村の上空には不気味な雲が渦巻き、周囲には異様な緊張感が漂っていた。


(何かおかしい…)


 修二は眉をひそめた。

 普段なら村の入り口には番人がいるはずだが、誰の姿も見えない。


「慎重に進もう」


 四人は村に近づくと、恐ろしい光景を目にした。

 村の入り口には何人もの村人たちが倒れ、黒いマントを着た集団が村の中へと侵入しようとしていたのだ。


「あの黒い炎の紋章…。斬刻旅団だ!」


 アマテが叫んだ。


「みんな、準備はいいか?」


 修二が透明な短剣を抜き、三人も武器を構えた。


「もちろんだぜ!」

「よーし行くよ、ユークさん!」

「いつでも大丈夫です」


 三人の声が重なり、その後すぐに修二たちは集団へと突進した。


「! 何者だ!?」


 旅団の一人が驚いた声を上げる。


「アストラル王国公認・神聖勇者のユークだ!」


 修二はそう叫びながら、透明な短剣を振るった。

 斬刻旅団のメンバーは次々と倒れていく。


「神聖勇者だと!? て、撤退だ!」


 残りの旅団の者たちは慌てて逃げ出した。


「ユークさん、追いかけるべきではないでしょうか?」


 ミリアが尋ねる。


「いや、まずは村の安全を確保しよう」


 修二はおよそ一ヶ月ぶりに村の中へと足を踏み入れた。

 そこには混乱の跡が生々しく残っていた。


「リーシャ! エリナ!」


 修二は、この中年男の妻と娘の家を探し始めた。

 すると、ある家の前で泣いている少女を見つける。


(エリナ…?)


 修二が近づくと、少女は怯えた表情で後ずさりした。


「パパ…?」


「エリナ! 無事だったか!」


 修二は安堵の表情を浮かべた。


「パパっ! あのね、悪い人たちがママを連れて行っちゃった!」


 エリナが泣きながら修二に抱きついた。


「リーシャが…連れ去られた?」


 修二の表情が凍りついた。


「うん…。黒い服の人たちが…イケニエにするからって…ううっ…」


 エリナの言葉に、修二は歯を食いしばった。


「心配するな。ママは俺が必ず助け出すから」


 修二はエリナを抱きしめながら、仲間たちを見た。


「生贄…。復活の儀式がどうとかって、例のあれのことでしょうか?」


 ミリアが呟いた。


「でも、なんでユークさんの奥さんなの?」


「ああ。復活の儀式には子供の魂が必要だとか、奴ら話してたはずだろ?」


 ニャアンとアマテが不思議そうに尋ねる。


「それは…」


 修二は考え込んだ。

 

 たしかにアマテの言うとおり、旅団の狙いは子供だったはず。

 なぜ彼女が…?


 そのとき、村長が近づいてきた。


「ユーク…。まさか戻って来ていたとは…」


 村長は複雑な表情を浮かべていた。


「一体、何があったんですか?」


「…魔王軍を名乗る者たちが現れたのです」


「魔王軍?」


 そこで修二は察した。

 斬刻旅団の面々が魔王軍を名乗っているということを。


「村の子供や女性たちを生贄として連れ去っているんです。特に…エクスカリバーに触れたことのある者を」


「なるほど。それで…リーシャたちはどこへ連れて行かれたのでしょうか?」


「おそらく、ヴォルガ火山ではないかと」


 村長の言葉に、修二たちは顔を見合わせた。

 

(また、ここでも火山か)


「ユークさん、すぐに行かないと!」


「ああ。でもその前に」


 ニャアンが急かすも、修二は村長に向き直った。


「追放された身であるにもかかわらず、こうして村に戻って来てしまったことについて、謝罪したいと思います」


「……」


「ですが、あの時の私は、本当に聖剣を盗もうとしてたわけじゃないんです」


 村長は、修二の瞳の中を覗き込むようにじっと視線を向けていた。


「ただ、疑いを抱かせるような行動をしてしまったことは事実です。その点についても謝罪させてください。誠に申し訳ありませんでした」


 修二は深々と頭を下げた。


「いえ、こちらこそ謝るべきです。あの時、ユークの話をきちんと聞いておくべきでした。短絡的に決めつけてしまったこと、あなたが村を去ってから後悔したのです。今ならわかります。ユーク、あなたはきちんと聖剣を見張っていたのだと」


「村長…」


 複雑な思いが胸に去来するも、修二はすぐに気持ちを切り替えた。

 今ならレベル反転バグの条件を達成できるかもしれない、と。

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