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3話 聖剣の当番を任された

 食事を終え、修二は家の外に出た。

 そこで彼を迎えたのは、中世ヨーロッパの田舎村のような光景だった。


 木造の家々が点在し、舗装されていない道が伸びている。

 朝もやがかかった遠くの山々が幻想的な景色を作り出していた。


 ところどころに畑があり、すでに何人かの村人が作業を始めている。


「おう、ユーク。今日も早いな」

 

 声をかけてきたのは、修二と同年代くらいに見える男性だった。

 がっしりとした体格で、日焼けした顔には人のよさそうな笑みが浮かんでいる。


「ああ…」


「どうした? ボーッとしてるぞ? 昨日の酒がまだ残ってるのか?」


「まあ。そんなところ」


「ところで。今日の当番、忘れてないよな?」


 当番?

 何の当番だろうかと修二は一瞬焦るも、なんとか平静を装って返事する。


「もちろん。えっと…でも、今日でよかったんだっけ?」


「はあ?」


 男は怪訝な顔をした。


「月曜日はユークって何度も確認しただろ。また忘れたりしたら、班長の俺が村長に怒られるんだからな」


「そうだよな。ハハ、悪りぃ」


「あの剣は村を守ってくれてるんだ。日々俺たちが無事に暮らせてるのも聖剣エクスカリバーのおかげなんだぞ? 見張りはきちんとしないと」


「う、うん。分かってるよ」


「頼むぜ、まったく…」


 男は首を傾げながらも、それ以上は追及せずに立ち去っていった。


(聖剣だって…?)


 アニメでもゲームでも、聖剣は最強の武器というのが定番だ。

 そんなものがなぜこの村に…?


 新たな疑問が生まれるも、いったんそのことは置いておき、修二はとりあえず村を探索することにした。




 ※※※




 それから30分ほど歩き回ると、村の概要が把握できた。


 ここは朝霧の村ヴァレスと呼ばれる小さな集落であることがわかった。

 100人ほどの人口で、農業と狩猟を生業としているようだ。


 そして村の中心には小さな祠があり、そこに何やら輝く剣が祀られていた。


(あれが聖剣か)


 修二は祠の前に立ち、中に飾られた剣を見つめた。

 特に華美な装飾はないが、刀身に不思議な光沢がある。

 

 見れば見るほど神秘的な雰囲気を放っていた。


「ユークさん、今日は当番でしたね」


 振り返ると、そこに白髪交じりの老人が立っていた。

 どうやら村長らしい。


「聖剣エクスカリバーは我ら村の宝。古くから伝わる勇者の剣です。ヴォルガ火山の噴火を抑える力があるとも言われておりますから。野盗に盗まれたりしないよう、今夜はしっかりと見張っておいてください」


 村長はそう言うと去っていった。


 修二は遠くに見える山に目をやった。

 確かに火山のようなものが見える。


(噴火を抑える力を持つ剣か。いかにもゲームっぽい設定だな) 


 ひとまず今は用はないようだ。

 その後、しばらく聖剣を眺めた後、修二は畑へと戻った。




 ※※※




 その夜。


 静かになった村。

 祠の前で修二は座り込んでいた。


「はー、えぐいわ。この状況…」

 

 異世界にやって来たはいいものの、思っていたような状況じゃないと修二は思う。

 

 転生したのは、なぜか中年のおっさん村人。

 チート級のスキルなど一切なく、見るからに最弱って感じだ。


 こんなことで魔王なんか倒せるのだろうか。


 改めてステータスを確認してみる。


「ステータスオープン」


=====


名前:ユーク

職業:村人

レベル:1

HP:100/100

MP:10/10

力:5

敏捷:3

知力:4

スキル:なし


=====


 変化は特にない。

 

(こんなステータスで魔王を倒せだって? 冗談じゃない)


 村の外に出たら、モンスターの餌になるのがオチだ、と修二は思う。

 

 修二はため息をついて空を見上げた。

 この空は現実の世界に繋がっていたりしないのだろうか。


(京香…)


 この異世界と現実世界の時間の流れは同じなのだという。


 早く現実に戻りたいのに。

 どうしようもない無力感が修二を襲った。


 その場に落ちている小さな石を手に取り、指で転がす。


「何か…方法はないのか」


 そう呟いたとき、ふと思い出した。


(そうだっ!)


 あの女神が渡してくれた実のことを。


 修二はポケットから素早く赤い宝石のような実を取り出す。


(スキルの実ってことは…これを食べれば新たなスキルが手に入るってことじゃないのか?)


 だが、修二は迷った。

 あの女神を信じてもいいのか?


 実は呪いの果実で、食べたら一生現実世界へは戻れなくなるなってこともあるかもしれない。


 しかし。

 状況を打開するためには何かきっかけが必要なことも確かだった。


 結局は選択肢はひとつしかなかった。


「食べよう」


 覚悟を決め、修二は実を口に入れる。

 

 少し酸味がするも、味は甘くてとても美味しいものだった。


 だが…次の瞬間。

 体中が熱くなり、頭に激痛が走った。


「ウッッッ!?」


 あまりの痛みに修二は地面に倒れ込んだ。


 意識が遠のきそうになる。

 その時。


 ――スキル《エックスリンク》を獲得しました――


 突然、頭の中に声が響いた。

 そして痛みが引くと、ステータス画面に変化が現れる。


======


名前:ユーク

職業:村人

レベル:1

HP:100/100

MP:10/10

力:5

敏捷:3

知力:4

スキル:エックスリンク


=====


 さらに強い光が修二を包み込んだ。

 そして、脳内に直接情報が流れ込んできた。


 「エックスリンク…?」


 修二は頭を押さえながら、スキル名を口にする。

 すると突然、視界の前に青い光の画面が現れた。

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