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18話 レアアイテムを発見する

「グアアァァアアアッッ~~~!!?」


 全ての核を失ったクリスタルゴーレムは光の粒子となって崩れ始めた。

 そして、轟音と共に完全に消滅した。

 

 やがて――静寂が広間を包む。


「…やった?」


 ニャアンが恐る恐る声を上げる。


「みたい、だな…」


 修二は息を切らしながら答えた。


 その瞬間、再び機械的な音声が響いた。


 レベルが一気に上がったようだ。

 修二はレベル15に、ニャアンはレベル18になった。


「わあっ! すごい! 一気にこんなにっ!?」


 ニャアンが喜びに飛び跳ねる。


 修二は透明な短剣を鞘に収めながら、広間を見渡した。

 その時、何か思い出したようにニャアンが尋ねてくる。


「そうだよ、ユークさん! ボスの部屋の隣に隠し部屋があるんでしょ?」


「ああ」 


 実は探索前、修二はニャアンに例のお宝が実際にこのダンジョンの中にあることを話していた。

 もちろん《エックスリンク》で調べたということは伏せ、ガレスから得た情報だと伝えている。


「でも、ユークさんがヴァレスの村で聞いた噂は本当だったんだね。中身ってどんなものなんだろう?」


「最後の鍵っていうレアアイテムらしい」


「最後の鍵…? なにそれ?」


「俺も詳しくは知らないんだ。とにかく探してみよう。この部屋のどこかに隠し扉があるはずだから」


「わかった! 私も一緒に探すよ!」


 しばらく二人で大きなフロアの中を探していると…。


(ん?)


 修二は壁に埋め込まれた小さな水晶を見つける。

 それは他のものと違い、赤く光っていた。


 修二が手を伸ばしてそれに触れると、「カチッ」という音がして、壁の一部が動き始めた。


「わっ!」


 ニャアンが驚いて後ずさる。

 壁がスライドし、そこに新たな通路が現れた。


 二人は互いに顔を見合わせ、頷いてから通路に足を踏み入れた。




 ※※※




 通路を進むと、小さな部屋にたどり着く。

 その中央には、石の台座があり、その上に小さな宝箱が置かれていた。


「あれが…」


 修二は緊張しながら台座に近づいた。

 これが最後の鍵を収めた宝箱に違いない。


「開けていい?」


 ニャアンの問いに、修二は頷いた。


「一緒に開けよう」


 二人で宝箱の蓋に手をかけ、ゆっくりと開いた。

 中から眩い光が溢れ出す。


「うわっ…」


 光が収まると、宝箱の中には小さな水晶の鍵と、銀色に輝く鎧が見えた。


(これが最後の鍵なのか?)


 修二は恐る恐る鍵を手に取った。

 それは掌に収まるほどの小さな水晶でできた鍵だった。


「ユークさん! もうひとつ何か入ってるよ!」


 ニャアンが宝箱の中を指さす。

 そこには銀色の鎧が収められていた。


 修二の体格にぴったりのサイズに見える。


「なんだこれ…?」


 両手で取ると、その重さは予想以上に軽かった。

 まるで羽のようだ。


 修二は鎧を調べると、〝シルバーライト・アーマー〟という刻印が見つかった。


 聞いたことがない名前だ。

 《エックスリンク》でもこの情報はなかったものだ。


「すごい鎧だね。ユークさんなら装備できそうだよ!」


「そうだな。試しに装備してみよう」


 ニャアンの提案に修二は頷き、革の防具を脱いで、シルバーライト・アーマーを身につけた。


「うわっ!」


 ニャアンが驚きの声を上げる。


「どうした?」


「ユークさん…透けてる!」


「え?」


 修二は自分の体を見下ろした。

 確かに、体が半透明になっている。


(透明人間みたいだ)


 修二は腕を動かしてみた。

 完全ではないが、向こう側が透けて見える程度には透明化している。


 これは予想外の収穫だった。

 透明の短剣と合わせると、とんでもない性能を発揮するに違いない。


「ステータスオープン」


 念のため修二はステータスを確認してみた。


=====


名前:ユーク

職業:冒険者

レベル:15

HP:300/300

MP:70/70

力:22

敏捷:18

知力:10

スキル:エックスリンク

装備:透明の短剣、シルバーライト・アーマー


=====


 鎧を装備したことで、ステータスも大きく上昇していた。


「目的も達成したことだし。そろそろ帰ろうか」


「うん!」


 二人は隠し部屋を後にし、来た道を戻り始めた。


 途中、いくつかのモンスターと遭遇したが、レベルが上がった二人にとって、もはや脅威ではなかった。

 そして、二人は無事に洞窟の入口に戻ってきた。


「外の空気が気持ちいい~!」


 ニャアンが深呼吸する。

 確かに、これまでずっと洞窟の中だったから外気は格別だった。


(良かった…。無事に戻って来られたぞ)


 修二はホッと胸をなで下ろした。


「ユークさん、本当にすごかったよ! まさかあんなに強いボスモンスターまで倒しちゃうなんて!」


「いや、ニャアンが一緒じゃなかったら、できなかったよ」


 ニャアンは照れくさそうに微笑んだ。


「うん! 私たち、最強のコンビだね!」


 陽が西に傾き始めていた。

 オーリアへの帰路につく二人の長い影が草原の上に伸びている。


(それにしても…)


 帰り道、修二は最後の鍵を握りしめながら考え込んでいた。


(この鍵、何に使うんだろう?)


 名前からしてとんでもない秘密が隠されているに違いない。

 

 そこでふと。

 何か思い出したようにニャアンが口にする。


「…ユークさん。さっき洞窟でしてた話の続きなんだけど」


「ん? 続きって?」


「ほら…なんていうか、生き急いでるような気がするって話。さっきクリスタルゴーレムを相手にしてた時も…けっこう自分の身を削るようにしてたでしょ?」


「あぁ…」


 その問いに修二は足を止めた。


 どう説明すればいいのか。

 実はここより別の世界から転生してやって来たなんてことを口にしても信じてもらえないだろう。


 少し迷った上で、修二は誤魔化しを口にする。


「大切な人のところに…帰らなきゃいけないんだ」


 ニャアンは目を丸くした。


「大切な人…?」


「俺を待ってくれてる人たちがいるんだ。そのためにも俺は早く強くならなくちゃいけない」


 その言葉に、ニャアンは何かを悟ったように小さく「あ」と声を漏らした。


「ひょっとして…奥さんと娘さんのところに?」


「ああ。俺が強くなって戻れば、村のみんなも納得してくれるかなって…そう思うんだ」


 そう口にしながら、修二は頭では別の人物の顔を思い浮かべていた。

 恋人である京香のことを思い出し、胸が締め付けられる。


「とにかく…。早く村に戻りたいんだよ」

 

 ニャアンはしばらく考え込むように黙り込む。

 

 気を遣ってくれていたのだろう。

 彼女がこれまで追放された経緯や家族のことについて、深く詮索するようなことはなかった。


 ニャアンを騙しているようで、修二は申し訳ない気持ちとなっていく。


 やがて明るい声で言った。


「よーし! そういうことなら私、もっともっ~と! ユークさんが強くなれるようにお手伝いするね! 大切な人たちのところに帰れるように!」


「ありがとう」


 ニャアンの無邪気な笑顔に救われる思いだった。


(この子の純粋さが、今の俺の支えになってるのは間違いない)


 そんな風にして歩き続けると、やがてオーリアの町の輪郭が見え始めてきた。

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