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14話 情報を収集しよう

 それから数日が経った。

 毎日の訓練と小さなクエストの積み重ねで、修二のレベルは着実に上がっていった。


=====


名前:ユーク

職業:冒険者

レベル:7

HP:200/200

MP:35/35

力:12

敏捷:9

知力:6

スキル:エックスリンク

装備:透明の短剣、革の防具


=====


「あっという間にレベル7じゃん!」


 冒険者ギルドの食堂で昼食を取りながら、ニャアンがステータスを覗き込んでいる。


「おかげさまで」


 修二は透明の短剣を撫でるように触れた。

 この武器のおかげで、通常なら苦戦するはずのモンスターもサクサク倒せている。


「あとレベルが3上がれば水晶の洞窟に挑めるようになるね」


 ニャアンが嬉しそうに言う。

 彼女自身はレベル15になっていて、回復魔法が専門とはいえ、サポート系の攻撃魔法も使いこなせるようになっていた。


「お互い無理はしないようにな」


「えへへ、心配してくれるの?」


 茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべるニャアン。

 最近は二人の連携もスムーズになってきた。


 その時。


「あれ! あの人たちって…」


 ニャアンがふと視線を部屋の奥へ向ける。

 入口から派手な装備の冒険者たちが入ってきたのだ。


「Bランクパーティの『サウザンド・ブレイク』だよ!」


 ニャアンの目が輝いている。

 どうやら有名な冒険者グループらしい。


 4人組のパーティで、一番前にいる大剣を背負った男性がリーダーのようだ。

 その隣には弓を持った女性、そして後ろには魔法使いと思しき男性、さらに重装備の戦士がいる。


「すごいオーラだよねっ! みんなかっこいいなぁー」


 ニャアンが子供のように興奮している。

 確かに見事なメンツだなと修二も思った。


「あの人たち、水晶の洞窟を攻略したらしいよ」


「え?」


 ニャアンの言葉に、修二は耳を澄ませた。


「クリスタルゴーレムを倒したんだって」


(クリスタルゴーレム…。たしかボスモンスターの名前だったな)


 ここ数日かけて集めた情報を頭で整理しながら、修二はパーティを観察し続けた。




 食事を終えた後。

 修二は「ちょっとトイレ」と言って席を離れ、『サウザンド・ブレイク』のテーブルに近づいた。


 彼らの会話が聞こえてくる。


「次はどのクエストにする? エルド連邦近くの砂漠地帯にある古代遺跡が気になるんだが」


「その前に、アストラル王国の王都に戻って装備を整えた方がいいわ」


 修二は何気なく彼らの近くを通りながら会話に耳を傾けていたが、ふとリーダーらしき男と目が合ってしまった。


「なんだおっさん? さっきからジロジロと見て」


 男が鋭い目で修二を見た。


「あ、いや…。すごい武器だなぁと思いまして…。『サウザンド・ブレイク』の皆さんですよね?」


「ほう? 俺たちを知ってるのか?」


「もちろんです! Fランク冒険者のユークと申しますっ!」


「Fランク? その年齢でか?」


 バカにされるかもと思う修二だったが、意外にも男は笑みを浮かべた。


「まあ、人生いろいろだよな、ハハ。そうかしこまるなよ」


「は、はい…」


「俺はこのパーティでリーダーを務めてるガレスだ。聞き耳立ててたってことは、何か俺たちに用があるんだろ、おっさん?」


「はい…。実は少しお聞きしたいことがありまして。水晶の洞窟について何か情報があれば教えていただけないでしょうか?」


「水晶の洞窟?」


 ガレスはちょっと驚いた様子だった。


「あぁー。前にそんなダンジョン攻略したっけか? んで? なぜそんなものが知りたい?」


「自分もそこに挑戦してみたいと思ってまして」


 その言葉に、パーティのメンバーから笑い声が漏れた。


「オジサン、冗談言ってんの? Fランクでそんなダンジョン挑むなんて死にに行くようなもんだよ」


 弓使いの女性が冷ややかな視線を送る。


 「まあ、いいじゃねぇか」とガレスが手を上げた。


「野心があるのは悪くない。だが、こいつが言うようにFランクにはちと厳しすぎる。最低でもレベル15、いや…できればレベル20くらいないと奥まではたどり着けないぞ」


「え? そうなんですか?」


(レベル20だって…? そこまで上げないとボスまでたどり着けないのか) 


 集めた情報と実際は差異があったことに修二は少し焦ったが、表情に出さないよう努めた。


「最深部のボスには、わりと手こずった気がする。特殊な攻撃パターンがいくつかあったな」


 ガレスは少し得意げに情報を教えてくれた。


「クリスタルゴーレムだったか。最初、ヤツの体は固くて攻撃が通りにくい。だが、洞窟内に生えている輝水晶ってやつを武器に当てて攻撃すると、一時的に弱点が現れる」


「輝水晶ですか」


「それと、ゴーレムの体には5つの核がある。すべての核を破壊しないと倒せないんだ」


「なるほど」


 貴重な情報に修二は感謝した。

 

「本当にありがとうございます!」


「当分の間はレベル上げに専念したほうがいい。いくつかクエストをこなしていくうちに、冒険者ランクも自然と上がっていくはずさ。まあ、がんばれよ。おっさん」


「はい、頑張ります!」


 ガレスが肩をポンと叩く。


「おい、リーダー。あんま情報をタダでやるなよ」


 弓使いの女性が不満そうに言う。

 他のメンバーも似たような顔をしている。


「いいじゃねえか。この歳で頑張ろうとしてんだからよ。応援してやろうぜ」


 修二がもう一度頭を下げると、ニャアンが駆け寄ってきた。


「ユークさん! こんなところにいたんだ! 戻ってこないからどうしたんだろうって思ったよ~」

 

「お、可愛い子じゃないか。おっさんの仲間か?」


 その時、ニャアンは目の前に『サウザンド・ブレイク』のメンバーがいることに気づいたようだ。


「あっ、は、はい! 聖女見習いのニャアンと申します!」


 緊張しながらもニャアンは挨拶した。


「聖女見習い…ってことは、エリンダ様のところの子か」


「エリンダ様をご存知なんですか?」


「もちろんさ。俺たちもここの神殿には世話になることが多いからな」


 そう言い終わると、ガレスは立ち上がった。


「それじゃ、そろそろ行くか。じゃあな、おっさん。また会うことがあったら、その時は成長した姿を見せてくれよ」


「はい!」


 『サウザンド・ブレイク』の面々が席を立ち、冒険者ギルドの食堂を後にした。


「すごい! 『サウザンド・ブレイク』の人たちと話してたんだ!?」


「水晶の洞窟のことを聞いてみたんだ」


「えーっ!? 私も聞きたかったよぉ!」


 ニャアンが頬を膨らませる。

 その仕草があまりにも可愛くて、修二は思わず笑ってしまった。


「大丈夫。後で情報を共有しよう」


「よーし! じゃあ私たちも新しいクエストを受注しに行こっ!」


 ニャアンが元気に食堂を出ていく。


(レベル20か…。先は長そうだけど、がんばるしかないな)


 決意を新たにしながら、修二はニャアンの後を追った。

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