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宇宙人のいる風景

作者: euReka

 肩をポンポン叩かれて振り返ると、ニッコリした女性の顔が見えた。

「○○君でしょ? 後ろ姿が小学生のときとぜんぜん変わってないからさ」

 私は、首を傾げながらとりあえず愛想笑いをした。

「ほら○○小学校で三年生のとき、わりと近所だったから一緒に学校から帰ったりしてたじゃない。あたし転校生で半年ぐらいしかその街に住んでなかったけど」

 私の名前も出身の小学校の名前も合っているから、彼女の話はきっと本当なのだろう。

「すぐ近くに、あたしのやってるタコ焼きの店があるから寄ってってよ」

 どう断わろうかと考えているうちに彼女に腕を掴まれてあらがうことができず、気づいたときにはソースの匂いが漂うこじんまりとした店の中にいた。

「バイトの子は宇宙人だけど、地球人の子より五倍ぐらい仕事ができるからさ、安心して店を空けられるんだよね」

 最近は宇宙人を雇う会社が増えているというニュースを何度も見ていたから驚きはしないけれど、見た目はよくいる日本人と同じだということにむしろ驚いた。

「接客業で採用される宇宙人はね、みんな見た目が自由に変えられるタイプなのよ。だから、彼らが宇宙人だって気づかれることはあまりないかもね」

 そんなことを彼女と話していると、バイトの子の手がにゅーと伸びて、テーブルの上にほかほかのタコ焼きが運ばれた。

 バレバレじゃない?

「まあうちはほら、人手が足りないから手が長く伸びてもいいことにしてて」

 この店は店内でもタコ焼きを食べられるスタイルで、何組かの客がテーブルに座っていたが、手がにゅーと伸びても誰も気にする様子はない。

「ほら、冷めないうちに食べてよ。毒なんか入ってないからさ」

 最近タコは宇宙人だったという話が広まっていて、私はタコを食べる気にはなれず、苦笑いしながら店を出た。

「あなたに会えて本当にうれしかっただけなの。でも無理やり店に連れてきてごめんなさいね」

 彼女の店を出てから、私は、なんだか子どもの頃とくらべて冷たい人間になっちゃったかもなと考えた。

 他人をすべて疑うようになってしまった人生って、なんだか寂しいなと。

「あれ、○○君だよね?」

 そう声を掛けてきたのは耳が長くて頭に触覚のようなものが生えている、いかにも宇宙人のようなやつだ。

「いろいろあって今は宇宙人やってるんだけど、高校時代が懐かしくなってつい声をかけちゃって」

 ああ、そのしゃべり方は田中か?

「いや、吉田だけど」

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