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侯爵家の小間使い

一話完結短編的にしたかったので、連載の一話分にしてはかなり長いです。

 

 チリリン。

 ベルの鳴るドアを開け、商店の中に入る。

 

「マリーじゃないか。奥様のご用事かい?」

 カウンターに近寄ると、金髪の美丈夫が奥からちょうど出て来てきたところだった。

 

(最悪。窓の外から見て、居ないと思ったから入ってきたのに)

 

「……シモンさん。奥様のいつもの便箋を20枚ほど、お願いします」

 踵を返したい衝動を抑えて、注文をする。

 

「直ぐ用意するよ。そこで待ってな」

 

 シモンさんの応答に軽くお辞儀して、店の邪魔にならない所へ移動する。

 欲を言えば、隠れたい。

 新人女性従業員のわたしを見る目が険しいからだ。

 

 もちろん、あからさまに睨まれたりはしない。

 侯爵家御用達の商会が、お得意先の奥様の使いを無下にする訳がない。

 

 でも、商会長のシモンさんは、まだ若くて独身で格好良くて気が利いて、優良物件なのだ。

 わたしがまだ11歳で、お互いにそんな気がなくても、関係ないらしい。

 特に当たりの強い見習いの娘が、まだ16歳だからかもしれないし、シモンさんから全く相手にされてないからかもしれない。

 

「準備できたよ。こっちはおまけ。マリーが使いな」

 こうして商会長自ら準備してくれるのも原因かもしれないし、いつもわたしに何かくれるからかもしれない。

 

「ありがとうございます」

 断ると却って時間がかかると学習済みなので、お礼を言って受け取る。


「うんうん。子どもは素直が一番だ」

 シモンさんが満足げに頷いている間に立ち去ろうとする。

 

「ちょっと待った。マリー。毎回言っているが、困った事があったら、相談するんだぞ」

 回り込まれてしまった。足の長さが違うからしょうがないが、悔しい。

 

「奥様には良くもらっていますから、大丈夫です」

 もう帰りたいのに、シモンさんは退いてくれない。肩に手を置かれて、顔を耳に近付けられる。


「マリー。ご両親の元へ行きたかったら俺に言うんだ。必ず、なんとかしてやるから」

 最悪だ。一番言われたくない事を囁かれてしまった。

 

「奥様の元で暮らせる方がいいです。両親には会いたくありません」

 シモンさんの手を退け、一生懸命、睨みつける。


「そうか。気が変わったら、何時でも言えよ」

 何度も嫌だと言っているのに、シモンさんは分かってくれない。

 

 チリリン。

 店を出ると思わず駆け出してしまう。

 早く帰って、奥様に会いたい。


 王都のこの辺りは治安が良くて、明るい時間ならわたしの様な子どもでも一人で大丈夫だ。

 それで、奥様がお使いに出してくれた。

 ついでに自分の買い物もしていいという事なのだ。

 

 でも、今は奥様に話を聞いてもらいたい。


 シモンさんが、両親の所へという話をするのは、奥様がわたし達兄妹を親元へ返さないと言っているのを、聞いてしまったからだ。

 彼が良い人なのは分かっている。

 侯爵夫人に逆らう危険を冒してまで、引き裂かれた親子を助けようとしている。

 

 ただ、わたし達が望んでいないという事を、どう言っても理解してくれない。

 

 

 わたし達の母は酷い人だった。

 

「お前みたいな子が生まれると分かっていたら、産まなかった」

「生まれてこなければ良かったのに」

「お前なんか、死んでしまえ!」

「まだ生きてるのか! さっき死ねって言っただろ! 早く死ね!」


 わたし達は、母から日常的に死ねと言われながら育った。


 食事を抜かれた事は無いし、衣服も清潔な物が用意されていた。

 

 でも、いつも母の思い通りになる人形の様で居る必要があった。


 母が、わがままな子どもに対しても優しい母親役でありたい時。

 食器を割っても怒られない。逆に、幼い頃から気働きの出来る兄が手伝いをして「二度手間になる」と叱られていた。


 母が面倒くさい気分の時。

 食べたい物を聞かれて、手の込んだ料理名を口にしてしまうと、「なんて嫌な子なの」と言われる。

 

 母が控えめな態度の子を望んでいる時。

 大きな本を広げて読んでいただけで、「生意気だ」と頬を打たれた。


 母が、子どものために金や手間を惜しまない母親でありたい時。

 食卓には、希少な砂糖をたっぷり使ったお菓子が並んだ。

 甘いものを食事代わりにするとわたしの具合が悪くなってしまう事など、どうでもいいらしかった。


 母にとって我が子とは、その時に食べさせたい物を美味しく食べ、着させたいと思うものを喜んで着て、気分に沿って思う様にわがままで、自慢したい時は願い通りに優秀な子どもだけを指していた。


 だから、母の望む通りの行動を取れなかった時、「お前みたいな子が生まれると分かっていたら、産まなかった」と言われるのだ。

 

 けれど、母の非道は必ずしも他人には理解されなかった。


 そもそも、死ねと言われたという事を信じてもらえない。

 傷になるほど殴られた事は無い、食事を抜かれた事もない、清潔な服も、暖かな寝床も用意があった。

 ちゃんと育てようとしている。死ねなんて言うはずがない、という理屈だ。


 でも、実際に事実である場合、一体どうしたらいいのか。


 誰にも訴えられずに口を噤むしかないのだ。


 

「生んで欲しいなんて、頼んでない!」

 母に言い返した日の事は忘れられない。


「だったら、出ていけ!」

「出て行く前に、お前を育てるのにかかった金を返せ!」

「この服は、私が買ってやったんだ。置いて行け!」


 母はそう言って、わたしから無理やり衣服を剥ぎ取った。


 下着まで脱がされそうになったのを必死に抵抗したが、どうにかなったのはそこまでで、わたしは敢え無く外に叩き出された。

 当時わたし達が住んでいたのは森林官用の邸で、人の訪れは少ないが皆無ではなく、周囲の森はある程度切り開かれているものの、獣に襲われる危険も僅かながら存在した。


 茫然とした。


 鍵をかけた音がはっきりと聞こえた。

 いつまでかは分からないが、しばらく母がわたしを中に入れる気がないのは明白だった。

 

 戸を叩いて、開けてと呼びかける気にもならなかった。

 そんな事をしても、死ねという叫び声が聞こえるだけに決まっていたから。


 納屋にも鍵がかかっていたはずだ。

 不用意に歩き回って、男の人に見つかるのだけは嫌だった。

 結果として、玄関の近くの生け垣の中に身を潜める事しか考え付かなかった。

 今思えば、もっと何かましな方法があったかもしれないが、まだ6歳だった当時、どうしようもなかった。


 どれくらいの間、蹲っていただろう。

 

 幸いにも昼に、兄だけが帰ってきた。

「お兄ちゃん」

 小声で呼びかけると、すぐさま駆け寄ってきて、上着を着せてくれた。


 ほっとして、涙が止まらなくなった。

 兄がいなかったら、わたしの心は狂ってしまっていただろう。


 けれど、幸運はそこで一旦、途切れた。


 兄は先ず、わたしを連れて父の元へ向かった。

 ……父は、わたしに家へ戻る様に言った。

 

 次に兄が取った行動は、町でわたしを預かってくれる人を探すというものだった。

 ……居なかった。

 正直、望み薄だとは思っていた。

 母は外面だけは良かったし、わたし達に食べさせたり着させたりしている物が良い物だったのは知られていたから。


 それでも辛かった。

 わたし達兄妹が母に死ねと言われているという事実を、信じてくれる人は町には一人も居なかった。

 大人に寄ってたかって噓つき呼ばわりされたのが、怖くて悲しくて兄にすがって泣いた。

 

 そこで、恐らくわたしの人生で最大の幸運が訪れた。


 旦那様と奥様がやって来たのだ。


 旦那様の風貌は冴えなくて、兄が教えてくれなければ、領主一族だと分からなかったかもしれない。

 奥様は、正直、最初はおとぎ話から出て来た魔女かと思った。

 

 2人はわたし達を町の大人から救い出して、自分達の乗る馬車に乗せた。

 車内での様子からは、旦那様はわたし達にほとんど関心が無いみたいに見えたし、奥様は光の加減で変化する兄の瞳を気にしているだけの様だった。

 

 だから、最初は半信半疑どころか、全く信用していなかったと思う。

 素直について行ったのは、身分的なものもあるし、帰っても良い事が無いと分かっていたからでもある。


 実際、ご夫妻のお付きは、わたし達兄妹の言う事を信じていなかった。

 

 わたし達を信じてくれない人達に悪意が無いと分かるのは、いつもは切ないだけだったが、その時は都合が良い事もあった。

 突然現れた領主一族がわたし達をどうするか知りたくて、2人の居る部屋の前へ盗み聞きに行ったら、見ない振りをしてくれたのだ。

 自分達がどうなるか心配だという気持ちは理解できるのに、母から死ねと言われたなんて嘘をつく意味が無いと分からないのが不思議だった。

 

「あなたは兄妹の証言を信じていますのね」

 部屋のドアの隙間に張り付くと、思わぬ言葉が聞こえてきた。

 女性の声だから、奥様が言ったのだろう。

 

「貴族ならば、親子である事も仕事の様なものだからな。命懸けで産む羽目になったからこそ、我が子を恨んでいる婦人の話を聞いた事もある。『我が子を愛さない親は存在しない』という言葉は、おとぎ話の様なものだと思っているよ」

 多分、旦那様の声。

 生まれて初めて、わたし達を理解してくれそうな人の話だと思った。

 

「あの2人は、わたくしが面倒みますわ」

 再び女性の声がしたのを聞いて、私と兄は顔を見合わせて頷いた。

 この人達について行く。それが一番だと思った。

 


「奥様のお使いに出ていたマリーです。ただいま、戻りました」

 門番に名乗り、中に入れてもらう。

 前庭を突っ切り、邸へ急いだ。


「マリー、出かけてたのか? 探してたんだけど」

 庭師の息子のトマに声をかけられてしまった。

 

「何か用?」

 気が立っているので、いつも以上に冷たく返してしまう。


 トマはわたしより1つ上の12歳。離れ小屋に家族で住んでいる彼は、6歳でこの邸に来たわたしと幼馴染と言っていい。

 少し癖のあるこげ茶の髪は艶があり、濃い緑の瞳が映える顔立ちは、使用人とその子ども達、邸に出入りする人達の間で良い意味で話題になる事が多い。


「母さんが菓子を焼いたって言うから、誘おうと思ったんだ。というか、また奥様の用事なのか? 少し使われ過ぎだろ。嫌な事は嫌だって言った方がいいぜ」

 剪定梯子からわざわざ降りて、トマがやってくる。

 

 これだから、自分に自信のある人間は手に負えない。

 トマと話をしたくなくて、普段「今、忙しい」と返しているのを真に受けている。

 自分が嫌われているかもしれない、という発想自体が無いのだ。


「トマ、今日ばかりは言わせてもらうわ。奥様は良い人よ。わたしが嫌なのは、トマ、あなたなの」

 足を踏ん張り、頑張って大きな声を出す。

 

「は? いきなり、何を言うんだよ。俺はマリー達のためを思って言ってるんだぞ。奥様達のせいで、マリーもロラン兄さんも、ご両親に全然会えてないじゃないか」

 

「その話は止めて!」


「あ! 待てよ、マリー」


 トマの制止を振り切って、邸へと走り出す。



 邸に連れて来られたばかりの頃は、トマに憧れていた。

 口うるさいけれど世話焼きのおばさん。不愛想だけどちゃんと子どもの事を見ているおじさん。常識的な親に育てられて、頼り頼られる事を知っているトマ。

 わたしの兄ロランを実の兄の様に慕い、わたしを妹扱いするトマの人懐こさに、最初は救われていた。


 でもそれも、わたし達兄妹の親が生きている事を知られるまでの数年間だけ。


 一昨年前に事情を知った時、トマとその両親は、周囲の言葉ではなく、わたし達自身の話を聞いてくれた。

 

 けれど、理解はしてくれなかった。

 

「どうして、両親と一緒に暮らさないの?」


「本当に、そんな事があったの?」


「お父さんお母さんの事を悪く言っちゃだめよ。自分自身を傷つけてしまうからね」


「気持ちは分かるけど、もうご両親を許してあげて。今はまだ分からなくても、きっと、それがあなた達の為になるから」


 トマとおばさんが声に出して言うのを、おじさんが無言で頷いているのを、わたしと兄は黙って耐えるしかなかった。

 自覚されない裏切りに、心がゆっくりと凍っていった。

 

 いくら反論しても、彼らには分からないのだ。

 わたし達の親は、我が子を人だと思っていない、という事を。


 

 思えば、昔住んでいた邸から近い町の人達もそうだった。

 わたし達は、普通の人よりも良い物を食べさせてもらっていたし、着せてもらっていた。

 町を通さずに、食料などを手に入れる事は出来ないのだから、町の人達も当然知っていた。


 けれど、それが何だと言うのだろうか。


 昼前に母の機嫌を損なってしまうと、父と兄が出かけているから、死ねと罵られながら2人きりで昼食を摂る事になる。

「死ね」という言葉の意味と食べさせるという行為が合わなくておかしい、とはわたしも思う。

 でも、事実がそうなのだから、そうだとしか言いようがない。


 砂を噛む様なとか、味がしないとかは、例えでしかないと思いながら食べていた。

 砂なんか噛んだらジャリジャリするから、却って生きているという感じがするだろう。

 舌がダメになった訳じゃないから、しょっぱいとか甘いとかも分かる。

 ただ、美味しいとか不味いとかと結びつかない。


 味がするだけの食べ物ではない何かを、無理矢理飲み込もうとしているみたいだった。

 手を動かして口に入れるまでは、意志の力で出来る。

 でも、のどの奥では準備が整っていないから、時折、体が吐き出しそうになる。

 そして、さらに怒られる。

 

 正直、食事を抜かれた方がましだと思っていた。

 

 

 美味しいお菓子を食べさせたいとか、綺麗な服を着せたいとかは、愛情だとみなされる。

 だから、母はわたし達を愛していたのだと、わたし達は母を許すべきだと言われてしまう。

 

 確かに、親は我が子に願うものだとは思う。

 

 健やかであって欲しいとか、幸せであって欲しいとかは、愛情だと思う。


 でも、立派な人になって欲しいとか、お金持ちになって欲しいとかは、どうなんだろう?

 全部が子どものためかな?

 親の身勝手さは、一切入っていないもの?


 女の子だから早く結婚して欲しいとか、騎士の家系だから剣が得意であって欲しいとか、本当に本人のため?

 結婚よりも働きたいとか、体を動かすのは苦手だから文官になりたいとかは、子どもの我儘なの?


 嫁いで幸せだったから、自分が騎士になりたかったから。

 親の個人的な理由で、子どもが望んでいないものを、無理強いしていたら、それは本当に純粋な愛情なのかな?


 親だったら、子どもが望まなくても、躾けなきゃいけないのも分かる。

 生きていくためには、嫌な事でもしなきゃいけないものはある。

 将来の子どもが困らない様に、教えなきゃいけないのは確かだ。

 

 でも、線引きは難しいと思う。


 少なくとも、わたしの母は境界を明確に超えていた。そう思っている。


 

「奥様、戻りました」

 お使いの便箋を差し出す。

 

「あら、マリー。随分と早かったのね。それにそんなに息を切らして。別に急がなくても良かったのよ?」

 便箋を他の使用人に受け取らせて、下の御子をあやしていた奥様が応える。


 わたし達がお世話になっている侯爵ご夫妻には、まだ小さな御子様が2人いらっしゃる。どちらも、わたし達がこの邸に来てから生まれた。普段は乳母に任されているが、こうして時折、奥様がご自身で面倒を見られる。


「違うんです。急いだ訳ではなくて……」


 奥様と旦那様は、わたし達の親代わりを引き受けて下さっていると言っていいのだが、一方で、本当の親の様に振舞って下さる事は無い。

 身分の問題もあるのだが、思いやりでもあるのだ。

 しかし、冷たくも見える態度は誤解を招く。

 

 わたし達兄妹は、そして、恐らく旦那様と奥様も、子どもである事を奪われて育った者だ。

 親に甘える事を許されなかった。

 体が子どもだった時から、心は大人として振る舞う様に求められて生きて来た。

 親が子どもの欲しがるものを与えるのではなく、子どもが親の求める役を担う必要があった。

 

 そんなわたし達が、トマの様に育つためには、赤ん坊まで戻ってやり直さなくてはならない。

 それは、ひょっとしたら可能な事かもしれない。

 半ば大人になりかかった体で赤ちゃんの様に甘える子どもと、向き合う覚悟のある人が居れば。

 

 奥様と旦那様は身分的な問題もあるが、2人の幼い御子がいらっしゃる。

 事情のある他人の子を育てるなど出来ないと分かっているから、不用意に親代わりを引き受けないし、相応しくない他の人間にも引き受けさせないのだ。


 やり直し以外で、子どもである事を奪われた者が助かる道は、大人になってしまう事だ。

 自分で自分を助ける。

 旦那様と奥様は、きっとそうしてきた。兄もそうしている。わたしもそうするつもりだ。

 

 わたしはわたしの力で、わたしの人生を取り戻す。


 

「奥様。わたし、両親と、タルブ家と縁を切ってしまいたいです」


「マリー……。シモンに何か言われた? それとも庭師の息子かしら? どちらも『我が子を愛さない親は存在しない』と思い込んでいるから、何かと無神経なのよね」


 やはり奥様は分かって下さる。わたしは、使用人の子どもに近い扱いなので、奥様と直接お会いする事は多くない。

 それでも、こうして気が付いて下さる。

 

「奥様、実は……」

 今日あった事を話す。

 

「……そうだったの。相手は好意のつもりなだけに、なかなか難しいわね。強硬策も取れなくはないけど、似たような輩がまた出てくるでしょうし。……いっそのこと、ロランと一緒に引きこもってしまう? タルブ達を辞めさせた森は、別の地域を引き継ぐ間近だった者達に後を任せたから、代替わりする相手が居なくなって困っている所があるのよね。マリーはまだ子どもだけれど、家の事は一通り出来るから、ロランを助けてあげてくれる?」


 ほとんど人と会わない事になるけれど、どうする? と問われて、思わず二つ返事で引き受けたけれど、肝心の森林官は兄のロランに来た話だ。

 奥様の使いで遠出している兄と相談しなくてはならない。でも、きっと引き受けると思う。



「ロラン兄さん、お帰りなさい! 遠出どうだった? 話を聞かせて!」

 数日後、帰ってきた兄を、トマが目ざとく見つけて声をかけている。


「あ、ああ、トマ。ただいま。ちょっと、マリーと話をさせてくれるか?」


 苦笑いの兄の答えは、森林官の話を知っているからではなく、じゃれつく幼馴染から距離を取ろうとしているからだ。

 つまり、兄もトマを苦手としている。

 

「もちろん! うちで話せばいいよ」

 庭師一家用の離れを使う提案をしてくるあたり、トマは鈍いのかもしれない。

 

「トマ。兄さんには大事な話があるから、お邸のお部屋を借りているわ。兄さん、行きましょう」

 

「ああ、分かった。じゃあな、トマ」

 事情も聞き返さず了承した兄と2人、邸の方へ進もうとする。

 

「ちょ、ちょっと待った。最近、2人とも冷たくないか? 特に、マリーなんか……。俺、知らない内に、何かしちゃった? 怒らせたんなら、謝るからさ……」


 もじもじとするトマを見て、わたし達は顔を見合わせた。どう言えばいいだろう。最近というより、一昨年から徐々に離れようとしているのだ。わたし達からすると、余計な事を言う様になったトマ達一家のせいである。


「あー、あのな、トマ。それぞれの家にはそれぞれ事情ってもんがあるんだ。だから、俺達の家の事は、俺達に任せて欲しいんだ」

 兄が、ゆっくりと言葉を選びながら言う。


「で、でも、俺達、他人じゃないだろ? ずっと一緒だったんだし。そ、それに、俺、マ、マリーの事が……」


「ごめんなさい、トマ。お邸の方で約束をしているの。もう行っていいかしら」

 トマの最後の方の言葉を聞きたくなくて、被せる様に言った。体はもう、邸の方へ進もうとしている。


「時間が無いみたいだから。悪いな、トマ」

 日差しが陰った事で、兄がわたしをトマの視線から庇ってくれた事が分かった。心強く思いながら、兄の影から離れない様に歩を進める。


 トマの想いはわたしも気付いている。多分、最初に会った時から気に入られてはいた。トマ自身が自覚したのは、皮肉な事だが、わたし達の事情を知った事がきっかけだったみたいだ。

「これからは、俺が守ってやるから」と言われた。

 何だか、酷く冷めた気持ちで聞いたのを覚えている。

 

 トマの初恋を、邸の使用人のほとんどが応援している。反対なのは、トマに恋している女の子を娘に持っている人達くらいじゃないかな。家族で住み込める立場は限られているから、ごく少数だ。


 わたしを可哀想な主人公にした話を丸く収めるのに、トマの求愛はちょうどいいのだと思う。

 トマは見た目もいいし、性格が良いと思われているのも分かっている。年頃がちょうど合っていて、身分もそれほど離れていない。

 思春期の男の子にありがちな、気になる子をいじめてしまうみたいな事もなかった。

 

 でも、わたしには無理。

 

 

「はー、トマもな~。良いヤツではあるんだろうけど、俺達には、ちょっとな~」

 兄が何とも言えない表情をしてため息を吐いた。

 

 森林官の話は、奥様達と離れてしまう事だけが寂しいと言い合いつつ、瞬く間に結論は出た。務めを引き受ける事で、御恩が返せる。わたし達が生まれ育った所よりも遥かに離れた森で、人との関わりは最小限で済む。

 兄もまた、親を許せと言われ続けて辟易としていたのだった。


 基本的に邸の人みんなに良くしてもらっているが、本当にわたし達の気持ちを分かってくれていると感じるのは、旦那様と奥様だけだった。

 トマのわたしへの想いを遮ってくれているのも、兄の他は奥様と旦那様だけ。

 最も身分の高い方達だけがわたし達の理解者であるなんて、なんだか変な感じだ。

 

 奥様に言ったら、「政略結婚で生まれているからかしらね」と興味無さそうに言われた。確かに何故なんて意味の無い問いかけだったかもしれない。その後で、奥様は「もっと貧しい者の間では、気付かれていないだけなのかもしれないわね……」と呟いておられた。もしかしたら、もっと広く助けようとされているのかもしれない。

 

 

「念の為に聞くけれど、縁を切るつもりはまだあるの? 森林官の話には必要ないし、勧めないわよ。絶対に謝ってくれないと思うわ、わたくしの経験上」

 

 奥様にはそう言われたけれど、やはり進めてもらう事にした。

 わたし達の元の身分を明らかに出来ると話が早いが、そうしてしまうと両親がわたし達の所に来てしまう可能性がある。一方で出自を誤魔化すと、完全に平民だったことになってしまうから、任官には少し無理がある。

 奥様は気を遣って、必要ないと言って下さったのだ。


 そして何より、気掛かりを残したくないと思ったのだ。


 

「マリー! 良かったな。ご両親と会える事になったんだろ」

 

「良かったわねぇ。ずっと心配していたんだよ」

 

「本当に良かったわ。心配しなくて大丈夫よ。何年経とうと、我が子への愛が薄れる親なんて居ないわ」

 

 トマ一家を始めとして、ほとんどの使用人達には理由が伝わっていない様で、誤解されている。

 

「会ってみて気が変わったら、言いなさい。旦那様も奥様も、無下にはなさらないでしょう」

 

 事情を知っている一部の人からは、別の思惑を向けられている様である。



「いよいよ、今日だな。もっと嬉しそうな顔したらいいのに。あ! ま、まだこっちには居るよな? 直ぐには行かないよな? ……で、でも、もし、マリー達がご両親の所に行くってなっても、俺、大人になったら迎えに行くから、必ず! 待っててな!」

 

 トマは、何故こんなに前向きなんだろう。

 普通の親に育てられると、自分を拒絶される可能性が理解できなくなるんだろうか。

 別に思わせ振りな態度なんか取っていない。お互いの生活の場が近いから気まずくならない様に、強すぎる言葉こそ使っていないが、最近の誘いは常に断っている。

 

「迎えなんか来なくていいよ」

 トマがあまりにめげないから、徐々に物言いが厳しくなっている自覚がある。


「照れんなよ。必ず行ってやるからな」

 なのに、通じない。

 

「マリー、そろそろ時間だ。じゃあな、トマ」

 トマの勘違いに呆れかえっていると、兄さんが助けに来てくれた。時間よりも早いが移動する。

 

 

「お手数をおかけして申し訳ございません。本日は宜しくお願い致します」


 兄と共に、場を整えてくれた執事さんに礼をする。

 立ち合いは奥様がして下さる事になっているが、来て下さるのは、全員が揃ってからだ。


 両親が入って来た時は、俯いて兄の袖を握っていた。

 奥様が来て下さってからは、奥様と兄だけを見る様にした。


「……では、署名を」

 説明は執事さんが行い、準備された書類を回し、全員で署名していく。

 両親は、特に何か言うでもなく、大人しく従った。上手くいかなかったらどうしようかと緊張していたが、順調に終わってホッとする。

 

「奥様。ほんの僅かな時間で良いのです。わたくし達と息子と娘だけで、話をさせていただけないでしょうか?」

 久しぶりに見た母は、以前よりも痩せていた。

 

「私からもお願いいたします。子ども達と引き離されてから、妻はずっと落ち込んでいたのです」

 父はやつれた様だった。

 

「奥様、私からもお願い致します。署名も済んでおりますから、奥様を煩わせることはありません。せめて別れの挨拶を許してあげては如何かと」

 普段は控えめな執事さんが口を挟む。


 奥様は黙ったまま、わたし達を見た。


 兄と視線を交わし、僅かに頷きあった。頷いてしまった。

 契約が成った事で気を抜いていたのか、やはりどこかで期待してしまっていたのか。

 

「では、わたくしは退室しましょう。貴方は、隣室で控えていなさい。何かあれば駆けつける様に」

 執事さんに言い残し、奥様は去って行かれた。

 

 わたし達4人を残し、扉が閉ざされる。


 その途端だった。


「お前達から言って、さっきの契約は無効にしてもらってきなさい」

 父だった。


「本当に、お前達なんか、産まなければ良かったよ。こんな面倒事を起こして、こんなに親に迷惑かけて、何様のつもりだよ。死んでしまっていれば良かったのに。死んでしまえ!」

 母だった。

 

「マリー、ごめん。俺が断るべきだった」

 兄の震える手がわたしの耳を覆った。

 

「もう契約は成ってる。あんた達に、俺達へ指図する権利なんかない」

 耳を塞がれても、間近の兄の声は聞き取れた。


「……」

「……!? ……!!」

 兄の手の力が強くなって、聞こえなくはなった。

 でも、言っている事は分かる。きっと死ねと言われている。


 体を動かす気力も無くて、ただ兄に身を任せて立っていると、人が入ってきた。


 軽鎧の騎士がわたし達と両親の間に割り込んでくる。

 

 執事さんがわたしの顔を覗き込んだ。

 見た事の無い様な、動揺した表情をしている。

 口が動いているが、耳を塞がれているので何を言っているかは分からない。

 でも、聞きたくなかったから、兄の手を外そうと思わなかった。


 頭を挟まれた不自然な格好のまま、廊下に出て、少し離れた部屋に入った。

 ようやく、耳が自由になった。ちょっとジーンとしている。


「そちらに座って下さい。今、お茶を運ばせます」

 執事さんに促されて、ソファに腰かける。

 比較的身分の低い来客用の応接室だ。低いと言っても旦那様達と比べての事だから、本来ならわたし達が寛いで良い所ではない。


「先ずは、謝罪します。奥様からの再三の指摘にも拘らず、認識不足でした」

 向かい側に座った執事さんから謝罪された。


「いえ、期待してしまったのは自分達もでしたから。今回、分かってもらえたのでしたら、契約も済んだ事ですし、今後は彼らとは関わりたくないという意志を尊重して頂きたい」

 少し余所行きの話し方の兄に、執事さんが黙って頭を下げた。


 それから、届いたお茶とお菓子を頂いて、もう少し話を聞いた。

 元両親は、森林官ではなくなったものの、担当していた森の近くの町に住んでいて、そこに送り返されるそうだ。罪には問えないそうだが、わたし達にはもう二度と会わせないと言ってもらった。


 奥様は先ほどの事態を見越していて、隣に声が届く様になっている部屋を用意していたのだった。

 普段は旦那様達の護衛をしている人も手配し、執事さんに指示を出していたのに、踏み込むのが遅くなった事を詫びられた。


「それから、奥様の計らいで隣室に、他の者もおりまして、彼らからの謝罪も受けてくれませんか」

 最後にと付け加えた執事さんが、ドアを開けた。

 気まずそうな表情がいくつか見えた。


「マリー!」

 トマがわたしに向かって走り込んでくる。思わず兄さんにしがみついた。


「マリー……。ごめん。あ、謝るから、俺の事、嫌わないでくれよ」

 庇ってくれた兄の背から出ようとしないわたしに、トマが話しかける。

 

「ロラン、マリー、ごめんね。2人の事、疑ってた訳じゃないんだ。でも、もう終わった事だと思って。……ご両親は、きっと、もう反省してるって思ってたんだ。子育ては大変だから、気が参った時に思わず言ってしまっただけだと思ったんだよ……」

 

 トマの母親が言いにくそうに言葉を連ねている。

 その後ろで、他の使用人が何人か頷いているのが見えた。謝ってくれている人も居る。


 でも、何も言う気になれない。

 

「さあ、あなた達。もう気が済んだでしょう。ロラン、マリー、もう準備は出来ていて? 出発の用意は整っていてよ」

 紅い瞳と黒い髪の女性が現れた。

 

「奥様……。感謝いたします。このロランとマリー、メナール侯爵ご夫妻からの恩を忘れる事は、終生ございません。森林官の務め、お任せ下さい。必要とあれば、身命を賭して全う致しましょう」

 

「わたくしマリーからも言わせて下さい。本当にありがとうございました。兄と同様、わたくしの命もまた、メナール侯爵ご夫妻のもの。如何様にもお使い下さい」


「フフフ。そんな命懸けの忠誠は求めないわ。少しでも幸せになりなさいな。これからも会う事はあるでしょうし、もし生活が合わないならば、手紙で知らせてくれれば、戻ってこれる様にしましょう。望まないのであれば、元の両親はもちろん、この邸の者も新しい生活の場に近付けさせるつもりは無くてよ」

 奥様の言葉に、再度頭を下げる。

 

 威厳たっぷりの奥様は、いつにも増して魔女の様だったが、とても頼もしかった。

 

 どうしても旦那様にもご挨拶したかったので、邸の人達の耳目には晒されたが、執事さんが手配してくれて、気まずそうに遠巻きにされるだけで済んだ。


 そうして、兄が操る馬車に乗り、新天地に旅立ったのだった。



「マリー。悪いんだけど、今日も、……いいかな?」


「パティ。遠慮しないで。兄さん達に言ってくるわね」


 到着した場所は、子どもの頃に居た森よりももっと貧しい地域の様だった。

 後から事情を知ったらしいシモンさんから送られてきた詫びの品々は、ちょっと悔しいがすごく役に立った。仕方なく、兄と連名で丁寧に書いたお礼状を送っている。

 

 森林官邸は、思ったよりも大分小さかったが、前任の老夫婦とわたし達が共に住むのに支障は無かった。

 むしろ手入れが楽で済む。

 引き継ぎ期間は、兄が成人して正式に任官される約1年後までの予定だ。

 その後、老夫婦は、わたし達が育った森で務めている彼らの息子夫婦の元へ旅立っていく事になる。

 

 邸の近くに人里は無かった。

 少し離れた所に、農家が一軒あるだけ。

 食料などはそこから直接買い取っている。

 

 パティは、その農家の娘だ。わたしよりも2つ年上の13歳。

 両親と弟、そして叔父と住んでいる。


 疾うに結婚していてもおかしくない年の叔父の存在が、パティのお願い事の原因だ。

 寝床に入ってこようとするので、避けるためにわたしの部屋に泊めて欲しいと言うのだ。

 

 昔は、兄夫婦を手伝い、姪と甥の面倒を見る善き居候だった。


 外面は同じままだ。

 変わったのは、パティへの行動だけだ。あるいは、逆に変化しなかった事が原因とも言える。

 娘になりつつある姪の体に触ってきたり、着替えを覗いたり、風呂に入るのを手伝おうとする。


「マリーが来てくれて、本当に良かった。あたしだけだったら、叔父さんが嫌だって、考えちゃいけないのかと思った」

 語るパティの目には涙が滲んでいる。


 パティが10歳を過ぎた頃、叔父に身体を触られて、背筋がゾッとしたそうだ。

 ずっと遊んでくれて面倒を見てくれる叔父の事が大好きだったのに、スカートの中に手を入れた瞬間、知らない人の様に感じたと言っていた。

 母に訴えたが、気のせいだと笑われたらしい。父からは、年頃になって照れていると思われているそうだ。


 必死で叔父を遠ざけながら我慢していたそうだが、ある日、わたしが見かけて「女の子が男に襲われている」と叫んだ。

 パティの家に挨拶のため、老夫婦と兄ロランと共に来ていた時だった。


「何事か」と集まってきた一同は、犯人が一家の叔父と分かって胸を撫で下ろしていた。

 勘違いに慌てたわたしが、「嫌がる女の子の胸やお尻を触っている様に見えた」と言ったら、老夫婦とパティの父は勘違いだろうと言ったが、パティの母とわたしの兄は少し複雑な顔になった。

 

 パティが森林官邸で寝泊まりする事を、彼女の父と叔父は反対しているそうだ。

 女の子が年頃の男が居る邸で夜を過ごすのは外聞が悪いと言っている。

 しかし、パティの母は事件をきっかけに、変わってきたらしい。

 叔父をさり気なくパティから遠ざけたり、結婚して家を出て行く事を薦める様になったそうだ。

 

 最近は、兄のロランが賃金を出して、時折、邸の家事をパティに任せている。昼間も叔父と距離を置くためだ。老夫婦の妻の方とわたしだけでも何とかなるが、若くて働き者のパティが居てくれると本当に楽だ。体力があって、森歩きも慣れているので、森林官の仕事の手伝いに入る事もある。

 

 将来、パティが兄のお嫁さんになってくれるのはどうかなと考える。ちょっと身分が釣り合わないが、何とかなるだろう。本人達次第だ。今はまだ、2人ともそんな気持ちにはなれないだろう。無理強いする気も無い。

 

 でも、もしも2人が結婚したら、わたしはどうしたらいいだろう。

 出来れば、奥様の元で働きたい。

 身分的に侯爵家の侍女には少し足りないから、メイドにしかなれないだろう。奥様のお役に立てるなら構わないけど、侍女と違って、トマを押し付けられても断れないかもしれない。

 

 手紙にパティの事を書いて送ったら、近況報告に留めた筈なのに、奥様からご本が届いた。

 侍女になる気があるなら学校に入れるから、1年間これで勉強しておきなさい、という事だった。


 やっぱり奥様はすごい。本当に魔女なんじゃないかしらと思ってしまう。

 

「マリーがそうしたいなら、俺は応援するよ。何か必要なら、遠慮しなくていいからな」

 

「マリーは賢いから、ここで燻ってるのは勿体ないって思うよ。本音を言えば、せっかく友達になったのに、居なくなって欲しくないけどね」

 

 兄とパティも賛成してくれた。

 仲良くなったパティや、ずっと一緒に居た兄と別れるのは寂しいが、先ずは入学試験に向けて頑張ろうと思う。


 

 奥様からもらった本を抱きしめて眠ったら、紅い瞳と黒い髪の魔女の使い魔になって、わたしやパティみたいな子や、もっと辛い目に遭っている子どもを助けに行く夢を見た。

 助けた子どもがいっぱいになってどうしようと思った時に、魔女が魔法の杖を振ったら、近くに居た冴えない男の人が大きな馬車になって、無事にお邸に帰ることが出来た。


 夢から覚めても、奥様に馬車にされる魔法をかけられた瞬間の旦那様の驚いた顔が忘れられなくて、心配した兄が声をかけてくるまで、ずっと笑っていた。

 

 

読んで下さってありがとうございました。


このテーマは、いつかは書こうと思っていたものですが、植原亮太さんの『ルポ 虐待サバイバー』集英社新書(2022年)を読んで、いつかではなく、今もう書かなくてはいけないと思いました。


児童虐待の専門家である児童相談所の職員や、メンタルケアの専門家であるカウンセラーや心療内科の医師であっても、虐待サバイバーの心が理解できない、というのがショックでした。


彼らが理解できなかった内容は、私にとっては分かろうと思うまでもない事だったからです。


実の親子だというだけの理由で、何故、犯罪者の元へ被害者を戻してしまうのか?


虐待されて育ってきたならば、成長後も困った時に親を頼るという発想自体が存在しないのですが、それも分かってもらえない。


児童相談所が把握していても全ての虐待死を防げない理由、心療内科医が虐待サバイバーの精神疾患を改善できない理由。


虐待サバイバーの気持ちが多少なりとも理解出来て、心身に障害が残っておらず、経済的に困窮していない人間の義務を感じました。


ぶっちゃけ、『ルポ 虐待サバイバー』の内容が世の常識になっていたら、私の拙作など出る出番は無いのですが、残念ながら大きな書店でも置いていませんでした。


という訳で、ご協力をお願いします。


児童虐待の実際、虐待サバイバーの現状、親から否定されながら生きてきた人間が一体何を言われたくないのか、少しでも知って頂きたく思います。


そして、賛同して頂けるなら、少しでも広める事に協力して下さい。


よろしくお願いいたします。


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