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アングラランカー黙示録 Session0 ~ビートバトラー~

作者: ビートたかし(TAKASH)

ビートマニアとは……

DJシミュレーションを模した音楽ゲーム。

プレイヤーは7つの鍵盤と1つのスクラッチを操作し、曲を演奏する。

プレイの上手さによってグルーヴゲージが増減し、

曲の終了時にグルーヴゲージが一定以上であればクリアとなる。

――『広辞典』第7版



【さぁ皆さん!お待たせしました!本日のメインイベント!チャンピオンの座を賭けたDJバトル!挑戦者は!なんと地下闘技場参戦から7戦全勝!驚くべき速さでチャンピオンへの挑戦権を獲得した、DJハーデスだッ!!!】


「「うおおおおおおおおお!!!」」


―――ここは地下闘技場。

地上のビートマニアとは違い、違法薬物によるドーピング、肉体改造、ビート賭博が横行するビートジャンキー達の楽園。



【迎え撃つは!現在99連勝の圧倒的強さを誇るゥ!本日勝てば殿堂入りとなりますッ!我らがチャンピオン!DJオルトロスッ!!!】


「「「うおおおおおおおおお!!!!!」」」



地下世界のビートマニアにおいてフルコンボや理論値は当たり前となり、ゲーム内のスコアだけでは勝敗を決めるのが難しくなっていた。

次第にスコアだけではなく、オーディエンスをいかに盛り上げたかで勝敗を決するようになっていった。

これがいわゆる"リアル・グルーヴゲージ方式"である。


【今日の選曲はー!!灼熱 Beach Side Bunnyッ!!!】


「「「うおおおおおおおおお!!!!!」」」


【両選手、30分後にスタートです!】



―――観客たちは口々に話し合う。

「お前はどっちに賭ける?ハーデスとオルトロス。」

「もちろんオルトロスに賭けるぜ!今日の選曲は連続したスクラッチと鍵盤の複合譜面がカギになる灼熱だ。オルトロスが最も得意な譜面だぜ!」

「なんと言ってもオルトロスには――」

「「腕が8本あるんだからな!」」

「7つの鍵盤に腕が7本、そしてスクラッチ専用の腕が1本」

「オルトロスの八腕は特に皿曲でその強みを発揮する」

「ハーデスのこれまでの戦いぶりも悪くはなかったが、オルトロスには到底及ばないだろうな」

「……俺はハーデスに賭けるぜ」

「「お前正気か!?」」



―――控室の筐体前にて

『うひょひょ!うひょひょ!DJハーデス!俺は今日まで99連勝してきた!今日お前が栄光ある100人目の犠牲者になるんだ!どんな気持ちだ!?』

「俺はただビートを刻む。それだけだ。」

『うひょひょ!せいぜい今のうちに良くアップをしておくんだな!うひょひょひょひょ!』



『(うひょひょ!今ハーデスがアップしている筐体のスクラッチ部分には遅効性の神経毒が仕込まれている!この手を使い始めてから俺は無敗だ!あと1勝で俺は100連勝、晴れて殿堂入りだ!)』

『(もちろん毒を仕込むのは不正―――。しかしこの地下闘技場の運営と俺は裏で繋がっている!インチキ防衛戦でたんまりと掛け金を回収するってハ・ナ・シ!)』

『(今日のオッズは…。ケッ、灼熱は俺に有利すぎる選曲だろ、あいつら俺様を見くびってるのか?うっひょひょひょ!)』



【さぁ本日のメインイベント!チャンピオンの座を賭けたビートバトルが始まります!】

【それでは灼熱Beach Side Bunny、行きましょう!3・2・1!スタートッ!】


「「うおおおおおおおお!!」」


開幕から両者とも軽々とピカグレを積み重ねていく。

オルトロスは持ち前の8本の腕でスクラッチを回している。

対するハーデスは左手でスクラッチを回しつつ同時に迫り来る鍵盤も丁寧に捌いていった。


『(うひょひょ!こいつなかなかのビートテクを持っているな!しかしそろそろ神経毒が左腕に回ってくる頃!これ以上スクラッチを回すことは出来まい!)』


【さぁ!ここまでの序盤戦は両者一歩も譲りません!

そして早速の難所!灼熱のトリル地帯一本目!両者はどう出るッ!?】


灼熱の難しさは皿側(左手)に連続して不規則なスクラッチが振ってくると同時に、鍵盤側(右手)ではトリルと呼ばれる規則的な動きを強いられる点にある。

それが曲の中盤で2回やってくる、通称”トリル地帯”。

その頃、ハーデスは左腕の異変に気付き始めていた。


「(やはり左腕がおかしい……。)」

「(なるほど、毒でも盛ったか……。)」


『うひょひょ!腕を気にしてどうした、ハーデス!』

「つまらない真似をしたもんだな」

『何のことやらさっぱりわからんな!うひょひょひょひょ!』


どよめく観客。

「おい、ハーデスの手がおかしくないか!?」

「スクラッチの取り方が何かヘンだぞ!?」

「本当だ、さっきに比べると随分ぎこちない!」


『うひょひょ!これで俺の100連勝は間違いなし!灼熱のトリルと共に死ねィ!!』


「お前は毒で俺の左腕を封じたつもりになっていたようだが……、地下闘技場でも所詮はこんなレベルとは、ガッカリだ。」

「【ビーラ】の呼吸ッ!」

―――その時、ハーデスは大きく息を吸い込んだ。

ハーデスの肺は常人の2倍ほどに膨れ上がった!

「ビーラとはビーマーが燃やすオーラ、すなわちビート・オーラのこと。」


『(うひょ!?ハーデスのやつ、今更どうやって悪あがきしようってんだ?!)』


「―――左腕を封じられたなら、右腕を使えばいい」


『なんだとッ!?』


「【クロス・スクラッチ】!!!」


【おおっと!DJハーデスッ!!!なんということでしょうッ!両手を交差させ、右手でスクラッチを回し始めたーーーーーッ!!!】


「「「うおおおおおおおおおおお!!!!!」」」


『うひょひょ!?右手でスクラッチを!?ば、馬鹿な!!!』

『しかし鍵盤はどうする!灼熱の真骨頂は連続したスクラッチと鍵盤の複合にある!』

『たとえ右手でスクラッチを回せたとしても毒の回った左手では鍵盤を処理できない!』

『俺の勝利は揺るがないーーーーー!うひょひょ!!』


「オルトロス、お前は改造された肉体と毒に頼って鍛錬を怠った。」


『勝てばよい!勝てばよいのだァ!うひょひょ!』


「【デス・シックル】…!」

「俺の爪先は死神の鎌となり、全てのノーツを刈り取る……」


【なんと!ハーデスの爪が黒く光っているーーーーッ!

爪にはD・E・A・T・Hの文字が白く浮かび上がっているぞッ!!!】


さらにどよめく観客たち!

「「指が早すぎて見えないぞ!!!」」

「「ハーデスの指が強烈なオーラで光っている!!!」」


『ぬわ、ぬわ、ぬわ、どうしてだ!俺の作戦は完璧だった!うひょ――』


【あーーーっと!オルトロス痛恨のミス!ハーデスの華麗なビーテクに動揺が隠せません!!】


【オーディエンスはハーデスの美技に釘付けだッ!】



☆★☆BATTLE RESULT☆★☆

灼熱Beach Side Bunny(Another)


オルトロス

・通常スコア(技術点)9割6分6厘(3320 MAX-118)

・リアルグルーヴゲージ(芸術点) 可


ハーデス

・通常スコア 9割9分1厘(3408 MAX-30)

・リアグル 優


ビートランク

甲 ハーデス

乙 オルトロス



【言うまでもありません、勝者はハーデスーーーーーーッ!】


『うひょひょ!?!?俺の、俺の殿堂入りは――』


【ハーデス勝利のオッズはなんと99倍!99倍ですッ!!】


騒ぎ出す観客たち。

「あああああああ!破産だ!!」

「このタコ野郎ォ!!!!」

「やった!これで春日部に買った家の住宅ローンが全額返済できる!」


地下闘技場の運営と思わしき黒スーツの男たちがオルトロスを取り囲む。

「このタコ!お前のヘマで地下闘技場は破産だ!」

『うひょ!?俺は悪くない!俺は――』

そのままオルトロスは手荒く担ぎ出されていった。




オルトロスからチャンピオンの座を奪ったハーデス。

しかしハーデスがその後地下闘技場に現れることは無かった。

ハーデスは地下のさらに地下、地底(アンダーグラウンド)でアングラランカー死天王を創設。

彼らが欲しいのは地位や名声ではなく、あくまでも「強さ」だけなのだ。


冥王ハーデス、混沌王カオス、女王ミネルヴァ、そして謎に包まれた戒律王……。

アングラランカー達はビーラを燃やし、日夜しのぎを削っている……。



To Beat Continued...



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