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鬼取屋  作者: 石馬
第弐幕「鬼取屋」
32/63

怪ノ肆「仙宮満彦〜憤り狂う紅い鬼〜8」

 目の前で闘っていたのは、仙宮先生と殺人鬼。

 闘いの結果は仙宮先生が勝った。飛鳥を殺したあの忌々しい殺人鬼を、仙宮先生は倒してくれた。

 でも、仙宮先生は其奴を殺さなかった。

 なんで? どうして飛鳥が死んだのに、彼奴が生きているの?

 そんなの、許される訳ないじゃないか!

 そうだよ、許される訳がない。

 先生が殺さないなら、先生が殺せないなら、俺が、俺が…………













 ――――俺が彼奴を喰らってやる。


 彼奴を喰った時の気分は最高だった。本当に最高だった。

 身体に力が溢れてきた。こんなゴミクズを喰っただけで、こんなにも力が湧くのなら、皆を喰らったら、一体どれだけの力になるだろう。

 ああ、腹が減った。耐えきれない。この空腹を埋められるのは、彼処しかない。


 ――――――四年四組の教室で、少しばかり腹を満たそう。

 きっと、それで俺の空腹は満たされる。


「さあ、愉しい愉しい宴の始まりだ!」








 ほんの一瞬、たった数秒目を離した時、男は深紅の死体になっていた。

 人が、モノに変わる瞬間。何時見ても気分が良いものではないが、それ以上に、この死体を作り上げた少年に仙宮は驚愕した。


「……京介」


 姿は全く違う。合っているのは、恐らく背丈だけ、服も真っ赤に染まっていた。

 それが鬼丸京介だと認識できるものが殆んど無い中、仙宮はそれが京介だと何故か判った。


 京介は男を喰らうと、すぐにその場からいなくなる。

 ヒャハハハと不気味な嗤い声だけが辺りに響く。そこで仙宮は気付く。


 ――――教室が危ない。と。


 予想していた、想定外。

 仙宮にとって最低以上の最悪が、此処に起きてしまった。

 急いで教室まで駆ける仙宮。然し先の闘いで傷付いた彼の身体は、中々思うように動かない。

 その道程は、彼にとって永遠より長い時間に感じた。

 仙宮が教室に入った時、丁度それは終わっていた。


 


 京介が、最後の一人、剣乃助の左胸を貫き、その遺体を持ち上げていた。

 返り血を浴びた碧鬼の表情は、恍惚に溺れたように嗤い、その瞳は快楽に溢れていた。


「京介、テメエ……」


 半ば放心状態のまま、仙宮は京介に呟くように言う。

 仙宮に気が付いたのか、京介も仙宮に向き直る。

 嗤う京介、憤る仙宮。


 静かに、感情を押し殺すような低い声で仙宮は京介に言う。


「オイ京介、テメエ何遣ってんだ。流石に今日は、角が生えるだけじゃ済まねえぞ!」


「ヒャハハハ!

 愉しい事を言ってくれるな若僧、ならこの俺にどうしろと?」


 嘲笑うように言うそれの声は、最早京介のものではなかった。

 京介の中の鬼が、今完全に京介を支配している。


「…………成る程、そういうことか、畜生。

 取り敢えず、説教は後回しみたいだな」


 面倒そうに、仙宮はそう言って碧鬼に突っ込んだ。




 四年四組、欠席、遅刻、及び早退者無し。

 ………………死亡者、38名。


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