怪ノ壱「榊美雨〜視える少女〜2」
わたし、桑原美樹。みんなからはミキって呼ばれてる。
夏休み初日、わたしは友達のミサとユメと一緒に、今駅前のファーストフード店にいる。
何でかっていうと、担任の鬼丸が今日なんかのイベントを催すらしいから、それまでちょっとみんなで遊んで、そいで今は小腹を満たすための腹ごなし。…………の、はずだったんだけどね。
その話はもうちょっとおいといて、最初、私は全然行く気なんてなかったんだけどね。ユメが成績足りないって言って、でも一人はヤダって言って頭下げてきたから、わたし達も付き合うことにしちゃいました。
わたしは暇だったし、予定があるのは明日のデートくらいだから別に良いと思ったんだけど、ミサの方は何だか嫌がってた。ううん、どっちかっていうと現在進行形で嫌がっているような。理由を聞いても、ただなんとなくてしか言わないし……
まあいいか、そんなのはわたしに全然関係ない。
深入りしない、これわたしのモットー!!
でもユメの方が怒っちゃって、ただいまお店の中でお説教タイム。なんたってミサもミサで今になってそんなこと言うもんだから、だったら来なければ良いでしょって、ユメが凄い怒ってる。
ユメの言いたいことは分かるんだけど、こういう時のミサの予感、大体当たるからな。
わたしはどっちを助けるべきか、しばしの間悩んだ末に、ミサに助け船を出すことにした。
「ねぇ、ユメ。やっぱり今日はやめにしない?
ほら、ミサがこうやってぐずる時って、大体当たるじゃん。
別に強制ってわけじゃないんだし……」
そう言ったけど、強情なユメはやっぱり聞かない。
あんた達が行かないならあたし一人で行くって言ってる。はぁ〜、疲れる、この子。流石のわたしも、じゃあそうすればって言うしかなかった。そしたら今度はミサが、それはダメって、言って聞かない。
なんなの、この二人……。
こんな風になるならデート今日にしとくべきだったぁ!! ああ、早く明日にな~れ!
そうこう思いつつ結局わたしも、学校に行くことになった。そう、ミキちゃんはお人好しなんです。
学校に着いたわたしは直接教室へ向かった。
ミサとユメはそこで二人してトイレに行っちゃったから置いてきた。
「結局、わたしは何しに来たのかな? ああ、早く明日にな~れっ!!」
なんて、そんなどうでもいいことをかんがえながら教室の扉の左に引く。
……わたしが教室に入ると、甘い匂いが充満していた。何だかふわふわする。気持ちいいような、気持ち悪いような、不思議な感覚。どっちだろう?
――――きもち………いい。
その不思議な感覚はわたしの眠気を誘って、二度と起こすことはなかった。