怪ノ肆「仙宮満彦~憤り狂う紅い鬼~1」
いろいろ検討してみた結果、少し複線を回収しようと思います。
ほかの方の意見も少し聞きたかったのですが、急にシナリオの構成が僕の中で良い感じ浮かんだもので………
……思い出す。あの時の事、あの日の惨劇、そして、あの人の言葉。
血塗れの壁、血塗れの机、血塗れの椅子、血塗れの友人、そして血塗れのあの人。
あの人は言った。
俺の頭を撫でながら、笑って、抱き締めて、本当に優しく笑って、こう言った。
「京介、遣っちまったな。でもま、遣っちまったことは仕方がない。良いかよく聴け。
人間大事なことは、遣っちまった後どうするかだ。それを絶対忘れんな。」
――――そして、俺はまた………………哭き喚く。
忘れちゃいけない、俺の記憶。
忘れられない、俺の記憶。
忘れられたら、どれ程楽だったろう。
この記憶から無くしてしまえば、どれだけ救われただろう。
――それでも、忘れられなかった。
最低で最悪な、俺の唯一の思い出。
だけどそれ以上にその思い出は俺にとって……
――――最愛の、想い出だったから。
予鈴が鳴って、各教室に担当の大人達が一人ずつ入っていく。
学校というその環境は、一人の児童とってはとても新鮮で、それでいて不自然なものだった。
きっと、初めて見た大人の印象が悪かったのだろう。
自分達の教室に入ってきたその大人は、スーツという大人ならではの洋服を来てはいるが、ネクタイも着けず、ワイシャツのボタンは下の素肌が見えてしまう程開き、上着は片手で肩に背負い、ボサボサの髪の毛を振り乱し、髭は不精に伸びている。それだけでなく、鋭い目付きでまだ十にも満たない子ども達を睨み付け、煙草まで吹かしている。
教師というよりも、チンピラという表現の方が正しいと思う、そんな風貌。
大人は物凄く面倒くさそうに、自分の名前を乱雑な字で、乱暴に黒板に書き、また振り返る。そして、まるで威嚇かという程低い声で子ども達に話しかける。
「今日からテメエらのクラスを預かることになった、仙宮満彦だ」
――これが鬼丸京介の運命を変えた、紅い鬼の男との最初の出逢いだった。