怪ノ壱「榊美雨〜視える少女〜1」
皆さん、初めまして。私、榊美雨っていいます。今年でやっと17歳の現役女子高生です。
チャームポイントはこの隅々まで手入れの行き届いた綺麗な黒髪と、太陽よりも数百倍明るくて愛くるしいこの笑顔。という事にして下さい。
実は私には、誰にも言えない隠し事があるんです。
笑わないで聴いて下さいね。私、幽霊が視えるんです。……ほら、やっぱり笑った。だから嫌なんですよ。この事誰かに話すのは。
因みに、私の視ている幽霊さん達は、あんまり分かりやすい格好はしていないです。どういうことかというと、えぇっと、上手く説明できないですけどはっきりしすぎているんです。
なんかもう血塗れとか傷だらけとかそういうのは全く無く、そこに平然といるんです。今でも生きている人か死んでしまった人か見分けがつかないことが多々あります。
話が逸れちゃいましたね。
私がなんでこんな話をするのかというと、新任で入ってきた先生の後ろにずっと男の人がいるんです。
ちょっと目が合うのが怖いので、私は窓の外をジッと眺めていますが……。
新任の先生の名前は鬼丸京介先生、今年赴任してきたばかりの新米先生です。顔立ちはイケメン一歩手前位で、如何にも運動できますよみたいな感じの先生です。
若くて背も高いので最初の頃は皆にキャーキャーいわれるタイプだと思います。えっ、私?私はもっと繊細でアーティスチックな先生が好みなので関係ありません。
……またしても話が逸れてしまいました。
とにかく、その鬼丸先生の背後には男の幽霊さんが何か口をもぐもぐ動かしながら訴えようとしているんです。
一体何かは分かりません。
そんなことにも気が付かないのか、鬼丸先生は淡々と帰りのホームルームを進行していきます。……あぁ、早く帰りたい。
ホームルームもいよいよ終わりになろうとした時、鬼丸先生はそのよく通る素晴らしい声で私達に呼び掛けました。
……まだ何かあるの?早く帰りたい。
「おーい皆、注目してくれ。
明日から夏休みに入る。そこで一つ、明日の夜にこの教室でちょっとしたイベントをしようと思う。
皆それぞれ予定が入ってしまっているとは思うが、なるべく全員参加してくれ。来てくれた人には2学期の成績に幾らか考慮するつもりだ」
今までに類を見ない素敵な笑顔の鬼丸先生。その後ろで幽霊さんはまだ口をモグモグしています。……え?嘘、どういうこと?
みんながざわざわと談笑している中、鬼丸先生は教室を出ていきました。
私の周りの友達は、みんな暇していたし、何より夜の学校ってちょっとスリリングで面白そうだったので、せっかくだから行こうという結果になりました。だけど、正直私は気乗りしません。
……だって、鬼丸先生の後ろにいたあの男の人が、ずっと私達に向かって「行くな」って訴えていたんですから。