怪ノ弐「鬼丸京介〜心霊相談請負事務所鬼取屋〜2」
…………意外でした。本当に、予想外でした。
私は溜息を吐きながら台所でお粥を作り直しています。
あの榊とかいう人、このお鍋いっぱいに作ったお粥をあっという間に食べ尽くしてしまいました。しかも私が見ている前で。その上おかわりの要求、確かに私は訊きました。おかわりは要るかどうかと、しかし年頃の女性が幾らお粥とはいえあれだけバクバク食べるなんて、はしたないです!
私はお粥を作り終わると、其れを持って彼女のいる部屋へ入りました。
「あっ、お帰りなさい! えぇっと、舞……さんでしたっけ?」
とても幸せそうに、無防備に私を迎えてくれた彼女を見て、思わず私は笑顔になりました。
そして彼女へお粥をあげるとそのまま部屋を後にしました。
流石に二杯目、少し時間は掛かりそうです。今は、未だそっとしておきましょう。
これから先待っているのは、辛いことの方が多いはずですから。
私は、さっきとは違う別の部屋の前に立ちます。コンコンと二回扉を叩いて、中へと入りました。
此処は私の兄、鬼丸京介がいる部屋です。返事はありませんが、何時ものことなので私は勝手に入ってしまいます。
兄はベッドに横になったまま、本を読んでいました。私の顔を見ることなく、兄は私に言いました。
「おお、舞。どうだった?あの子」
「うん。今はかなり落ち着いています。でも、もう言ってしまうんですか?やっぱり早すぎる気が……」
私がそこまで言うと、兄は左手を出して言葉を遮りました。
「どうせ知らなくちゃいけないことだ。辛いなら、早くに教えた方が良い」
兄はそう言って部屋を出ていきました。私は、兄の背中を送ることしか出来ずにただその場に立っていました。