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冒険の書 第1章   作者: 本多 泉那
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序章6

「オラオラオラァ!!」

巨大なベレの体がヒナトに向かって来る。

武器職人だからかベレの上半身の筋肉はヒナトの何倍もある。

「うわっと!」

開始すぐに突っ込んでくるとは思っていなかったため反応が少し遅れてしまうがギリギリでベレの突進を避ける。

(見た目よりも早いな。ここは一旦距離を置くか)

避けた勢いをそのままにはバックステップで10mほど離れる。

だが、その隙をベレは見逃さなかった。

「あまい!」

ベレはゴリラの様な両腕を限界まで振り追いかけてくる。宛ら、駅伝の選手の様な綺麗なフォームだ。

そこまでの能力を見余っていたヒナトはベレの一撃をモロに食らってしまった。

「ぐぅ!」

そのまま1.2mほど吹き飛ぶ。

軽く意識が飛びそうになるがそこは男の意地だ。

よろよろになりながら立ち上がる。

「俺のラリアットを食らっても気絶しないとはやるな少年。」

ベレはヒナトにトドメの一撃をささずにその場で立っている。

「その感じを見ると君はなにか間違いをしているようだな。」

「なんだって?」

「ここはコロシアム、相手は人間だ。モンスターでは無い。相手も自分と同じように考え戦ってくる。しかもここには武器はない、あるのは拳だ。ならばわかるだろう」

そう言いながらベレは拳をこちらに向け構えてくる。

(やべぇあの人が何を伝えたいかよくわからんが、何となく分かった。ここでは殺し合いじゃない。

自分の力だけが頼りか。)

ヒナトもベレに続いて構える。

もうヒナトの頭の中にはいままでの戦い方は消えていた。

「こい!少年!」

ヒナトはタン、タンとステップを決める。

そして呼吸とステップがあったその瞬間に走り出す。

(俺の武器は剣だけじゃねぇ。この拳もだ!)

ベレの膝元まで来る。ここまでかかった時間はほんのわずか、これまでの戦いのおかげでヒナト能力も上がっていた。元々この世界にはLvなんてものはない。あるとすればそれは幾度となく戦いその時に得る経験だった。

瞬時にヒナトは相手の動きを予測。そしてその予測を前提に次の手を考え実行する。

ベレはヒナトの突進は目で終えていたが自身の膝元来た瞬間にヒナトが消えてしまったのだ。

だが実際に消えた訳では無い。ヒナトはベレが自己防衛だろうか無意識に繰り出した左ストレートを観測しその腕の下に入っただけだった。

完全にヒナトを見失ってしまったベレだがその口元は笑っていた。

(行ける!)

ヒナトは左腕を避けてベレの背中まで回り、即座にターンを切ってベレのうなじへ渾身の一撃を打つ。

ドォンと殴ったヒナトにも衝撃が来る。

その勢いを抑えるためすぐに後ろにジャンプする。

(なんちゅう身体してんだこいつは!だがこの一撃はでかい!)

地面につき、ベレを見る。ベレ立っていた。

「なに!!」

確実に食らわせた感覚はあった。だがベレは立っている。

笑っていた。

「最高だ、最高だよ少年。さすがソーヤさんが推してきただけはある。」

よく見ると奴はうなじを自分の手で隠していた。

「わかっていたのか」

流石に聞かずにはいられない。

「いや、わからなかったさ。だが勘でうなじを手で咄嗟に守ったのさ」

(勘だと、まじでバケモンじゃねぇか)

そこでヒナトは今まで呼吸をしていなかったのを思い出す。

深く息を吸い、呼吸を整える。

「楽しいな少年!」

ベレが笑いながら言ってくる。

それには素直に答えることが出来た。

「ああ楽しいよ!」

この時のヒナトは気づいていなかったようだが

最高の笑顔だった。

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