第八十話 零の夏の悲劇2
その後、その広場には少しずつではあれど死んでいる人と生きている人が増えていった。
仮の病院では収まりきらない人たちは即座に増設された病院に運ばれた。
町にはけがした人たちと、大工さんたちと、世界四大宗教の聖職者たちがひしめいている。
葬式に、建物の復興、回復専門魔法士を探す、など残された人にはやることが多い。
帝王様もその輪の中に入って復興作業を手助けしているほどだ。
間もなくして、七大強豪国全域からの支援物資が送られてきた。
そして、復興の手伝いに来た冒険者たち。
今まで、冒険者は戦って稼ぐという印象が大きかったので、少なからず衝撃を覚えたのは記憶に残っている。
世界順位が5桁の駆け出しから1桁の有名ギルドまで、たくさんの人たちが、俺達の国を元に戻すために来てくれた。
元に、と言っても死んだ人は戻らないからガワだけだが。
それでもうれしかった。
俺達がそれぞれで住んでいた家は俺の家を除いてすべて売り払って生活の足しにした。
それからは俺の家で四人で生活している。
前よりも新しくなった設備はあるが、基本的に内装も外装も変わっていない。
その方が安心できた。
今回の冒険者たちは数が数だけに報酬額も少ないはずなのに、ほんとうにたくさんの人が嫌な顔一つせずに働いてくれた。
そのままこちらに拠点を構える商人や、冒険者もいたほどだ。
報酬が少ないのになんでそんなに頑張れるのかって聞いたことがある。
大概みんな口をそろえてどちらかの言葉を発する。
“この国に恩があるから”
“働いた後のありがとうの笑顔が何よりの報酬”
両方を言ってくれる人もいて、目頭が熱くなった。
本心は違うかもしれないけれど、口に出してくれると救われる。
そんな多大な支援のおかげで、わずか一か月半で復興は終わった。
途中、世界一ギルド決定戦があって全員のテンションが上がったのもあるけれど。
中には、忙しいだろうにわざわざ手伝いに来てくれたNo.5のナイファズアを応援する声もあった。
No.3になった時は全員がお祭り騒ぎになった…と聞いた。
正直言って日々の疲れが取れずにその日は決勝戦を見終わった後早々に寝てしまったからだ。
その時には冒険者としてギルド登録していた。
6月21日、俺の誕生日に。
今身に着けているマントは仲間たちが少ない金を出して買ってくれたものだ。
「タキトがすっげぇ楽しみにしてたからな。ちょっと地味だけど、収入安定してきたら一緒に選びに行こうぜ」
リュウヤにそう言われたときはちょっと恥ずかしかったと同時に嬉しすぎて泣くかと思った。
ただ、泣き顔は不細工になるので頑張って我慢した。
その後誰にも見られないところで泣いたけど。
今話したらばれるからあれだけどな。いじるのは後で。
それからちょこちょことレベル上げと装備を整えるのを繰り返した。
とりあえず今の目標は二つ。
一つは、できればの話。
あの最後に残った悪魔の討伐。
容姿と町の人からの情報を総合すれば四天王と言うことになる。
名前も明らかになっているから探すのはそこまで大変じゃない。
けど、その前に他の人…例えば勇者様とかが倒す確率の方が高い。
幸い寿命は長いし、あいつも半永久的にこっちに出て来るからその時に斬ればいいと思ってたけどな。
二つ目は、トップ10以内に入ること。
強ければそれほどモンスターを倒せる。
俺達みたいな被害者を減らせる。
だから、強くなって、世界に認めさせようと思った。
まさか一個目の目標を速攻クリアできるとは思わなかったけど。
だけど、あれは半分倒せたみたいなものだ。
最後はあいつも抵抗しなかったから。
どうせならあいつが全力を出しても鼻で笑って仇を打てるくらいになりたい。
そんな感じだからこれはもっかい出て来るときまで保留。
今回のクエストまでの経緯も軽く話しておく。
イチリア帝国のギルド集会所でとあるクエストが目に留まった。
もちろん件のクエストだ。
ただ、すでに受注済みという表示になっていたから、スルーしていたんだ。
生還者数が0だったから結構難しいクエストなんだろうって。
その後ズイカにちょっとしたモンスター討伐で出向いて、その日のうちに終わったから次のクエストを物色しようと思っていた。
そしたら、あのクエストが目に飛び込んできた。
生還者数が0のまま。
そのクエストを受けようとしてるであろう五人‥‥四季神のメンバーを見たときちょっと焦った。
こんなに難易度が高いのにって。
思えばそれは自分にも当てはまることだったんだけど、その時はただただそう思った。
だから、声をかけた。
クエストは同意の上なら同時に複数のギルドが受けることが出来ると知っていた。
少し間があって焦ったけど、あなたたちは受け入れてくれた。
種族のことを話しても、ちょっと興味深そうに相槌を打つだけで。
他の国では少し眉を顰められるのは日常茶飯事だったから、うれしかった。
これが、俺達の過去の話だ。




