第五十九話 港国だが潮の香りがしないのは湖だからという単純な理由
本日の雑魚狩りによって私はLv.23になった。
とりあえずボス戦で25に行けたらいいなというくらいに思っておくことにする。
今日の夕飯は途中兎がドロップした兎肉を使った鍋である。
野菜とかの食材はもちろんインベントリの中ですよ。
私のな。
目の前から鼻をくすぐるいい匂いがしてくる。
鍋を食べる季節じゃないにしろ、ここはなんとなく寒い。
蒸し暑さというのが薄い。
こんな感じなら鍋食べても汗だらだらとはならないかな。
「蒼桜~できたよ~」
「よし、食べようか」
結構ぼーっとしてた間に時間がたっていたらしい。
鍋に入っている兎肉は柔らかくておいしい。
地球のウサギがどうかは知らないけれど、この世界のウサギは柔らかいらしい。
料理上手な氷人が調理すればなおさら柔らかくなるだろうけれど。
今日の鍋は普通の水炊き。野菜も柔らかく食べやすい。
水炊きなんてこの世界で初めて食べるけど地球の味と大差ない。
野菜の味もほぼ変わらないからだろうけど。
鍋を食べていると不意に朱夏が口を開く。
「クラーケンって何が弱点なんだろ」
「あ~…確かに」
クラーケン、でかいイカちゃんはたたきつけ攻撃やデバフ、時たま水魔法や氷魔法を得意とするボスモンスターの常連さんである。
時々本体と触手が別個のパターンがあって本体をガードしたり本体倒さない限り消えなかったりしてそれはもう厄介。
ただ、それはコマンド形式の場合であって、こちらとしては現実的な戦いなので触手でガードとか無限回服とかはないかなって思う。
無限回復されたらちょっと軽く死ねる。
とりあえず反対の炎とか雷とかは効くんじゃないのかなって言うのが今の見解。
これで火耐性とか雷耐性とかあったらそれこそお陀仏する。
「とりあえず火力バカ二人を援護しつつ秋白が雷ぼかすかやるくらいでいいんじゃないの」
「誰が火力バカだよあーちゃん」
朱夏は反論するが、氷人はそうでもなさそうで、口元が弧を描く。
「…『死神』は死神らしく一発で葬らないとらしくないでしょ?」
「まあ確かに」
氷人の吹っ切れたような主張になんとなく賛同してしまっている自分がいる。
アスリート界では神って呼ばれてたような気がしないでもないけど二次元と三次元で違う異名を持ってて、しかもそれが正反対ってちょっと意味わかんなくなって吐きそうだ。
その分メンタルは強いんだろうなと勝手に思う。
鍋を食べ終えるとそれぞれのテントで横になる。
テントの布の隙間から星空が顔を出していた。
*******
翌日。
スリア平原を永遠と進み、ようやく見えてきた湖と国。
湖はきれいな瑠璃色。この世界の水は瑠璃色をしていることが多いが、この湖はその水そのものが瑠璃、ラピスラズリではないかと錯覚させるほどだ。
横に広いその国は広大な面積の港と城下町を構え、貿易と漁業で財を生み出すまさに港国だった。
ツゥーリア国。
潮の香りはしないけれど、なんとなく懐かしさを覚えた。
ディア湖は水平線が見えるレベルで広い。
琵琶湖の比じゃないのは一目瞭然で、もういっそ海なんじゃないかなと思う。
思いっきり淡水だから湖止まりだろうけど。
入国すると港がしっかり見える。
何艘もの貿易船らしきものが停泊している。
やっぱり運航見合わせしてるか。
今は2時。
1時間後に船に乗って討伐に乗り出す。
覚悟はしているつもりだけど、冒険者ってやっぱり死と隣り合わせなんだよな…。
ノリでやろうとしてしまっている自分たちって特例何だろうかと変なことを考えてしまう。
今回のる貿易船は人員は最低限。ついでに大きめの船。
それなりに戦える船員もいるとのことだが、クラーケンには大きく届かないとのこと。
正直言って今回乗る船の船員さんと顔合わせした時に眉ひそめられたんだよね。
こんなガキがって感じで。
ガキで何が悪い。今や子供も仕事をする時代だというのに。
カイトさんだって未成年だし、妖忌のコウ君なんて10歳なんだが。
あの子は実力認められてるからいいのか。
まあそんなこんなでなんでこんなガキどもが目線されたけど気づいた氷人が殺気のこもった笑顔で黙らせたので良し。
ん?良くない?
死神の異名に恥じない行動だからよくね?
死神死神って言われてるけどそれくらい強いって意味だからさ、私らはマイナスにとらえるのあんまり好きじゃないんだよ。
例えば今回の場合こんなガキじゃなくってこんな子供でも任せられるくらい強いんだなと解釈していただきたいんだよ。
まあ、勝てる保証などどこにもないけどな。
負けたらあの世で呪ってくれ。
まあ、さてこんな感じで駆け出し初心者路線まっしぐらしている私達。
ただ、駆け出し初心者と言えど、なぜかついている主人公フェーズフラグをぼっきり逝かせられたと言われればそういうわけでもないらしい。
「あ、また会った」
(((((げ…)))))
よっと軽く手を上げてこちらに近づいてくる青年なんて一人しかいない。
もちろんカイトさんである。
何回勇者様と会ったら気が済むのでしょうか…(笑)




