第五十六話 森林に別れを告げて
「はぁ~~‥‥あなたたち風雲児ね」
「はぁ…」
ネイルスさんが紅茶を飲みながらため息交じりに言葉を吐いてくる。
三十分前からこんな感じだ。
まあ、風雲児と言われても言い返せない。
世界四位を倒しちゃったらそりゃね。
「よし、決めたわ」
「?」
ネイルスさんが席を外す。
他のメンバーさんたちはああ~…と頭を抱えた。
私達は何がなんやらわからない。
でも、なぜか嫌な予感がしていることはわかった。
数分後、戻ってきたネイルスさんはふう…と気持ちのいい笑顔で言う。
「とりあえず他の世界トップ組には連絡したので今から結構絡まれると思いますけど頑張ってください♪」
‥‥
WHAT!?
すごくいい笑顔してらっしゃる…。
と、いうことは。
この人私怨で人の人生めんどくさい方向に舵きりやがった!
まあでも、避けていたってしょうがないと思う。
どうしても避けられない運命ならしょうがないし。
なんなら、強い人にはそれなりの理由があるはずだ。
Lvにしても、ステータスの振り方にしても、武器の扱い方にしても、上には上がいる。
その一番上は、知る限りじゃカイトさんなんだろう。
なら、自衛のために始めたレベル上げだけど、目指したっていい。
何ならどこぞのラノベの主人公みたいにチート野郎目指したっていい。
めんどくさいことは成長につながることもある。
学ぶものは多いほうがいい。経験も多いほうがいい。
「はい、ありがとうございました」
私は返事をする。
すると予想通りだったのかいえいえとほほ笑むネイルスさん。
さては読んであんな言い方したな…?
王宮を出ると、お昼前の木漏れ日があたりを照らしている。
外出たら日差しが強いんだろうな~…と思いながら街中を歩く。
とりあえずこの後は拠点に戻って、明日あたりにでも次のクエストについて考えよ。
それとも、ちょっと観光するっていうのもいいかな。
どっちにしてもみんなと要相談だね。
エイフィーネを出て、帰路へ着く。
全員でゆったり歩きながら移動する。
別にテレポート使ったっていいんだけど、あえて言わない。
話す時間が短くなるから。
「次どうする?」
「何がぁ?」
朱夏が返事をする。
心なしか上機嫌に見えるのはやはりうれしいからだろうか。
世界四位に勝てたらそりゃ上機嫌になるかな。
「次のクエスト。それともしばらくフリータイムにする?」
「その案賛成~!」
金央がしばらく休みたい欲望を丸出しにして返事をする。
なにも休みほしさで言ったんじゃないけどな~。
すると氷人が提案する。
「…スキルと体力伸ばすために朝ランニングする?」
「え゛」
朱夏があからさまに嫌そうな返事をした。
それを見てちょっとしゅんとする氷人は猫みたいだ。
まあ、わからんでもない。朱夏はヒッキーだから。
私もだけど。
「朱夏、筋肉痛率減らすためにもやろ。じゃないと一回戦って筋肉痛になってを繰り返す羽目になるよ」
「うう…分かった」
よし、説得完了。筋肉痛は流石にやだもんね。
体力着くと同時に[俊足]のレベル上げをするつもりなんだろうなと私は思う。
あれ走ってたら自動的にもらえるらしいからね。
少しずつ日が傾く中、私は他の四人とは別れてフォース国に行く。
基本的にこれは毎朝やることの一つなのだが、数日は慣れていたおかげでやることが増えてしまった。やること、それは新聞を買うことである。
この世界でも電子機器は普通に存在している。
とはいえ、ガラケーやパソコンどまり。スマホやタブレットはない。
それならば普通に新聞は重要な情報ツールであるからあるに違いない、ということになって私が探していた。
結果あった。
なので今からそれを買いに行くのだ。
因みにお値段100G。
ほぼ一円=1Gなので100円である。
朝刊夕刊一貫して100G。
お手軽ですな~。
さて、そんなわけで買い物を終え、新聞をちらっと見ている私なのだが…。
「ディア湖でボスモンスター発生?」
七大強豪国の貿易において一番重要なのはディア湖による船での貿易である。
船で行けば陸路よりもはるかに短い時間で国を行き来することが出来る。
そんな場所でボスモンスター発生って面倒ごとの気配しかしない。
新聞記事抜粋。
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現在ディア湖にて“クラーケン”とみられるボスモンスターが発生している。
このボスモンスターは過去数百年間現れたことがなく、久方ぶりの復活ということになる。
現在被害は貿易船五艘。
ギルド組合は速やかに討伐クエストを発注するとのこと。
なお、推奨レベルは50となっている。
現在このボスモンスターによって貿易に大きな影響が出ている。
組合は世界ランキングが高い手の空いているギルドに直接申し出、早急にこの問題を解決することに尽力するとのことだ。
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う~ん。
推奨レベルが50ね。
それこそ世界トップの方々のお仕事なんだけど…。
まあ私ら出る幕ないからいいかな。
さて、さっさと帰って夕飯食べないと。
第二部第二章終了です。
次回はやっぱりあのクエストを・・・受ける、かもしれません。




