第四十五話 四季神の底力
「『春風』!」
手始めに風で動きに制限をかける・・・という名目でどの属性が効きそうかを見る。
木属性は確定で無理そう。
風属性もさほど効いているようには見えない。
そのままディウラの頭上に飛ぶ。
[風属性付与]と[木属性付与]を使い、それぞれの短刀に属性付与する。
それを一気に振り下ろし、頭に刺す!
「いや地味に硬い‥‥」
流石ボス、そんなにやわじゃないか…。
刀身の二分の一が刺さっただけで残りはささり切らない。
即座に抜き、カウンターを喰らわないように地面に降りる。
足元で音がする。
即座に飛びのくと、元居た場所に土の槍。地属性初級スキル、[土槍]。金央も持っている。
MATとかのステが高いからかもう壁みたいなもんだけどな!笑えない。
「せいやっ」
朱夏が炎と水の混合魔法、[水火球]をディウラに放つ。
その巨体が少したじろぐ。
使ってくる属性からしても火は結構効くんじゃないか?
とすると、朱夏メインにしてそのほかは補助だな。
火力的にもそうだけど。
「『飛刃』!」
秋白が金属性のスキルで無数の棘を発生させ、ディウラに飛ばす。
装備と自身のスキルの恩恵で一発も外さず当たる。
…金属性も効くわ。
よし、夏秋コンビ前線決定。
氷人が[冷風]という魔法を短剣にまとわせ、ディウラの胴体に向けて投げる。
見事にクリーンヒットしたそれを見て氷人は水を刃状にして飛ばす魔法、[水刃]を数十連発し、傷口を広げていく。
「『氷柱』!」
[氷柱]を剣に付与し、その刃でディウラの胴体に大きく傷を入れる。
傷口は赤い氷で覆われつつある。赤いのは血が含まれているから。[冷風]は特定の場所を凍らせる風を発生させるという氷人らしい魔法だ。
元の世界での氷人のプレイスタイルは状態異常攻撃と持ち前のステータスの高さでごり押しし、その後じわじわとHPを削っていくという、かなり嫌なやり方だった。彼自身それがわかっているものの、「これが一番楽」という理由でやり続けていた。ネット上では「死神」と呼ばれたほどである。
彼はその呼び名に少しげんなりしていた。しょうがないけどね。
で、こっちに来て吹っ切れた。「…楽だから、うん、楽だから許される」ってぶつぶつ言ってたけど。モンスターに対しては良いけど、対人戦で嫌われそうだ。
ただ、この魔法の効きが早いのは金央のスキルによるものである。
[熱誘導]というスキル。本来生産職において効率的に作業をするために用いられるスキル。
ただ、戦いで使うと結構強い。
傷口から熱を遠ざけているのだ。
ついでにその熱は一か所に集中させて、やはりじわじわと攻撃している。
火というか、熱に弱いらしいから。この暴君。
継続して朱夏と秋白中心に攻撃を当て続ける。
そうしていると、ボス特有のあのフェーズに入るらしい。
「ヴルガァァァァッ!」
あ、怒ったかもしれない。
知らん知らん。どうせ若干強くなるだけでしょ、うん。
なんて思ってた時期が私にもありましたよ。
「いきなり攻撃連発は反則じゃないっすかねーー!?」
「あーちゃんしゃーないよ…ボスはそういうもんだって」
初手に打って来た光線5連で発射し、それを避けてる足元に[土槍]入れてくるという鬼畜仕様。
こんな状況だから朱夏と秋白のAIMがぶれまくる。
秋白はまだ当たるけど、朱夏の攻撃がほとんど当たらない。
氷人がちまちま攻撃しようとしてるけど、現在避けるのに手いっぱい。
これじゃらちが明かない。
攻撃が入らず避けるだけではこちらの体力が持たない。
五人中四人がヒッキーだから仕方ないけどな。
最悪死ぬという未来が入ってくる。
シャレになんないよ。
ぐるぐるとこの空間内を避け続ける。
頭の中で策が浮かんでは消える。
実践するとなるとリスクが高いものは除外。
無論誰かが死ぬかもしれないという状況になるモノも除外。
覚悟を決めてあることを試す。
[生空弾]を一気に数十個放つ。
それで目くらましをしている間に…。
再び奴の頭上に移動する。
[生空弾]を双短刀にまとわせ、そいつの目を刺す。
今度は全部刺さった!
それで一瞬攻撃がやむ。
全員がその隙を見逃すはずもない。
全員が一気に畳みかける。
朱夏は[粉炎]でディウラの身を焼く。
秋白は[飛刃]と[光線]を使い、確実にHPを削る。
氷人は[氷柱]と[水刃]で追撃、金央は飛んでくる攻撃を受ける。
最後の一撃、私が入れる!
二つの刃を同時に振り降ろす。
「ルガァァァァ・・・・」
一つ吠え、そいつは黒いエフェクトと共に消えた。
双短刀をしまう。
やってやったぜと心の中でガッツポーズする。
さて、ちゃんと着地しないと…。
…あれ。
体動かないんだが。
はぁ⁉ちょっと待て待て待て待て!
あれか!魔法連発しすぎた!?
まさかとは思うけどいつもより動きまくった上に連発したからエネルギー切れが早い!?
マジかー。
地面まであと数メートル。
落ちる・・・と思って目をつむる。
ふわっと何かが私を支える。
「え?」
「蒼桜、魔法の使い過ぎには気を付けないと」
目を開けると橙色の目と目があう。
「焦ったじゃん」
「え、は、え…?」
秋白に姫抱きされてた。




