第二十一話 下剋上
「っ!ヤキとコウが同時にやられた!」
「いや待て待て待て!あいつら本気出しすぎだろ!?」
ナカビさんの舌打ち交じりの言葉に一番驚いているのはオニビさん。
たぶん過去ではもうちょっと苦戦していたのだろう。それかあんまり本気出してなかったか。
オニビさんの発言からして後者だろう。
ただ、オニビさんが危惧しているのはHPが単純な体力消耗によって減っていることだ。
現に一つも攻撃を受けていないガルメラさんとシーラさんの体力はじんわり減っている。
その一瞬のすきにナカビさんは距離を詰める。
それに気づいたオニビさんは即座に反応する。
ナカビさんが降り降ろした刀を地を蹴って避ける。
「っぶね!?」
(兄貴本気だー…ただの斬撃だけで地面われたもん)
刀が地面に触れた瞬間、綺麗に地面に亀裂が入った。ついでに割れた。
オニビさんは避けたそのままナカビさんの背後を取る。
槍の柄を長く持ち、それを遠心力を使ってナカビさんの背中にぶつける。
「槍って元々叩く武器だしねー。そこんとこちゃんとわかっている感じでいいですな」
あ、そうなんですか初耳です。
秋白よく覚えてるな、そういうこと。
ナカビさんは一瞬痛みに顔をしかめた。
その間にオニビさんは先端を持たれないように柄を中心に持ち直す。
(妖力残り蜃気楼一発分と妖火数発分しかねー…。わざとMPに変えるか)
「オニビ、手伝いいるかしら」
「あれ、終わるの速い」
オニビさんの隣に飛んできたスイコさんはところどころに氷を付けたまま話しかけた。
ただ、結構な灼熱地獄なので一瞬で溶けた。
「凍らされてイラっと来たからマッハで水飛ばしてやったわよ」
「短気」
直後スイコさんがオニビさんを殴った。HPが5分減る。
「…まあ手伝いほしいからよろしく」
「任されたわ」
それを聞いてナカビはあ~あと思う。
(負け色濃厚だ…)
直後自分に向かって放たれる水と炎の攻撃。炎の隙間を水が走る。
隙間がほぼないため、相殺して逃げ道を作るしかない。
(エルフは火属性を持たないものが多い。火炎耐性が低いものが多い。狙うならスイコだが、やらせてくれるかどうか。詠唱してないあたり簡易術使ってる)
この世界、元々スキルができる前は魔法が存在していた。人間は魔法を使い、妖怪は妖術、エルフや霊は霊術、魔族やモンスターは魔術、神やエルフは神術を使った。それとは別に複雑な術を簡易的に繰り出すために作られたのがスキル。スキルは詠唱を必要とするが、魔法などの通称「簡易術」は必要としない。ただ、スキルが複雑な分、どうしても簡易術は単純に見えてしまう。
ただ、簡易術の場合上級スキルにも引けを取らない威力を持ったものでも使う力は少なかったりする。だからスキルメインのこの世界でも使われることはあるのだ。
その簡易術でナカビは追い詰められている。
かわすことに集中するのは良いことだが、時折周りを見ないとそれがあだになる。
不意にナカビの背中に激痛が走った。
「…⁉…こりゃ一本取られた」
「『認識阻害V』。ちょっと心もとなかったけどオニビとスイコのおかげで行けたね」
認識阻害。発動すると簡単に言って影が薄くなる、存在感が薄れるスキル。割と高値で取引されていると聞いたことがある。
終了の電子音と共に会場が今までにない熱狂で包まれる。
ついに破られた、三年間キープし続けた順位。
文字通りの下克上だ。
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「お~!ガルメラやったねぇ」
モニターを見ながらうれしそうな声を上げるカイト。心なしか生き生きして見える。
その横ではレンゴクも驚いたように目を見開いていた。ネイルスも頬杖をついてモニターを見つめている。
「お前はわかってたのか?」
「い~やぜ~んぜん?なんか勝てそうだなーってところでいっつも負けるから今回もそれかと思ってた」
「カイトさんひどくないですか流石に」
控室の扉を開けてガルメラが引き気味にカイトに問う。
「あ~ごめんごめん!でも事実じゃん?」
「本気なら殴り飛ばしますよ」
「…ジョーダン(汗)」
マジトーンでガルメラがにらみつけたため、カイトはちょっと反省した。
レンゴクがまあまあと言って両者をなだめた。
下克上って言葉の響きいいですよね




