第十八話 どうにかしろ勇者
ネイルスは不思議そうな顔で
「どうされました?」
と尋ねる。全員がアハハと言ってお茶を濁した。
この中で成人しているのはレンゴク、ネイルス、ナカビ、そして勇者パーティ最後のメンバー、ラズーリ=アズラのみである。ほぼ全員が未成年だというのに強いという異常、長年冒険者をしてきたベテランからしたら背筋が凍る話である。
「ん~…あ、オニビ前誕生日に送ったやつどーだった?」
「あの短刀な~。気に入ったよ。非常時は使わせてもらう」
「おーうれしいねぇ」
にっこりとうれしそうな顔をするカイト。この笑顔が憎めない。
その笑顔を見てオニビがカイトにたずねる。
「あれお兄さんのお手製?」
「ご名答~。さすが俺の兄貴!」
「後でお礼言いに行かねぇとなぁ~」
捨て子だったカイトは鍛冶屋を営んでいるメラルドに拾われた。イースも一緒に。カイトはメラルドの苗字を貰い、イースは元の名前を使った。
メラルドは七大強豪国の中でもかなり人気の高い鍛冶屋だ。その武器や防具は一級品である。
「武器や防具で勇者パーティもお世話になってますからね…2割引きしてくれてるだけでありがたいのですが」
「今度また遊びに行くのにゃ」
ニャズはラズーリの方にぶら下がっているが、流石に重いのか、ラズーリは迷惑そうに体を揺さぶっている。
「僕はホイホイ会いに行くわけにもいきませんからお兄さんによろしくお伝えください」
「え~、ガルメラも来ればいいじゃん。テレポート使えるっしょ?」
テレポート、結構取得難易度高めのスキルで、魔法屋でも10万G行くか行かないかの値段で取引されている。
「そういう問題じゃなくっていろいろ忙しいのです」
ガルメラは従兄であるシーラに肩もみをしてもらいながら言う。時々「あだっ」と声が聞こえるのはよほど肩こりがひどいのだろう。
「運動すれば?」
「やーだー。ただでさえ忙しいのにそれはヤダー」
魔族であるが故の成長スピードの遅さ、身長だけでなく精神年齢もそうらしい。身内にはものすごい甘えん坊キャラに見える。
その様子を全員が温かい目で見ている。ガルメラは特に気にすることもなくぼうっと目の前を見つめていた。
「ねえイース寝ていい?」
空気を破ったのはやはりカイト。それにイースはハァ?と何言ってんだこいつといったような顔でカイトを見、そしていう。それはもう単直ストレートに。
「却下」
「…」
ドストレートに却下されると流石に何も言えないらしい。直後にふぁあと欠伸をした。
すぐに控室の中が静かになる。
約10分間。
(気まずすぎる空気…一時間くらいたったか?)
勇者様の体感時間の約六分の一は立っているが、それ以上でもそれ以下でもない。
不意にその沈黙を突き破ったのは4人の少女だった。
「ただ今帰りましたーって何ですかこの絶対零度の地獄は」
ポニーテールにした髪の先を毬のようにお団子でくくっている個性強めの少女、アマリリスが驚愕しながら言った。ほか三人を含め、彼女らはネイティアのメンバーである。
「あらぁ、お帰りなさい~」
お母さん感が強いネイルスさんが声をかける。全員満足といったふうににっこりと笑っていた。
絶対零度の地獄も解凍され、23度くらいに戻ってきた。
ただ、そんな絶対零度の中でもニャズはラズーリにぶら下がったままだ。
「…いい加減離れてください」
「構わないのが悪いのにゃ」
両者段々機嫌が悪くなっていくが、いつものことだとカイトは特に気にしない。
ただ、この時の判断は間違っていた。
「離れろって言ってるでしょ⁉」
「その前にかまえって言ってるのにゃ!耳ちゃんと仕事してんのかにゃ!?」
両者のにらみ合いと共に二人の覇気が全員を震わせた。
それにナカビがアー・・・と短い感想を述べ、カイトに向かって言う。
「どうにかしろ勇者、お前のお仲間が世界ぶっ壊しかけてるぞ」
「世界壊れる前に俺が死ぬから却下」
結局ネイルスが(人を殺しそうな笑顔で)お茶を勧めるまで覇気は止まらなかった。
ネイルスさんが強かった




