第十三話 そりゃ人外ですけどね?
「なんなんあの火力と攻撃力…1ダメージももらわなかった…よね?」
信じられない光景にあんぐりと口を開けたまま言う。他のメンバーも(決して慣用句的な意味じゃなく)開いた口が塞がらないようだ。本当に文字通り。
「そりゃ人外だけど人外すぎない?」
全く金央の言う通りだ。あれと今闘えと言われても先ほどの様にフルボッコにされる未来が見える。それはもう鮮明に。どれくらい鮮明って黒歴史くらい。マジよ?
「…覚悟を決めていこう。多分この後の試合も一瞬で終わる」
「「「「イエッサー」」」」
謎の連携感が生まれたところで私は牛丼を口に運ぶ。異世界補正なのか何なのか知らないが何時もの牛丼よりおいしい。ああ、タケノコの煮物食べたい…。
そんなことを考えていたらまた二組のギルドが舞台に上がる。
「あ、秋白、あの水色っぽい髪の子前鉱山行った時見なかった?」
「真後ろにいた子だね~凄い人だった」
そう、彼がNo.4ギルドのメンバーだった。やはり妖怪のギルドにいるからには妖怪なのだろう。雪女という説は結構有力になってくる。
このギルドは平均して身長が低い。朱夏の行きつけの魔法屋の店長さんはエルフだと聞いたことがあるが、18歳と言われても違和感がなかったといっていた。それに比べ彼らは見た目が幼い。風の噂で聞いたが、妖怪はかなり特殊な体の成長の仕方をするらしい。ということはもうすでに20歳超えているのかもしれない。5人は何も装備していないように見えるが、たぶんなにかしらは装備しているのだろう。
対してNo.9は魔法特化といったところだ。聖杖と双短刀持ちが一人ずついる以外は全員杖持ち。ローブに帽子とTHE・魔法使いな服装をしている。
機械音がなると同時にNo.9はスキルを詠唱し次々と魔方陣を展開していく。その間にNo.4は距離を詰める。一番最初に手前に出たのは金髪の女の子。彼女が手に持っている武器は秋白以外にはなじみがなく武器として使用するとは思ってもみなかったモノだった。
「扇…?」
そう、金色の扇。両端には黄色の紐で装飾が施されている。
秋白だけは興奮して解説をする。
「鉄扇か…!」
「鉄扇?」
金央が聞く。秋白はうん、と答えて。
「鉄扇は昔日本でも使われていた武器で基本的には骨が鉄製だったりするんだけど、流石異世界、全部金属で作られてるよ…。あれで剣を受ける、敵を叩く、矢などの飛び道具の対応と、極めれば便利な武器だよ」
「ってことはあの子はあの鉄扇で攻撃するの…?」
そう質問するとうーん…と秋白はいう。
「見たほうが早いのかもしんない」
魔方陣が展開され、次々と攻撃が飛ぶ中、その少女は落ち着き払った様子で敵陣に突っ込む。
(『超火球』、『海王』、『上捕縛地陣』…最初から火力高めを打ってきてる…けど)
「あたしには関係…ないっ」
巨大な火球、地を滑り切り裂かんとする水流、その下からその体をとらえようとする地割れ。
全てが当たる直前、扇を閉じた状態で一つ横に振る。
「雷閃」
直後、バァンッと轟く雷が全てを消した。扇がバチバチと電気をまとっている。
彼女の攻撃方法、武器を媒体にしたスキルでの攻撃。
杖や聖杖、水晶などはそれを媒体、スキルの発生源とすることで火力をハネ上げることが出来る。
…と朱夏に聞いたことがある。私にはなんのこっちゃわからない。
直後彼女に双短刀持ちが突っ込む。
「『疾風斬』!!」
風をまとわせた短刀で攻撃する相手に対して彼女はやはり扇を閉じたまま攻撃を受け止めると言う。
「雷光」
雷が鳴くより速く光の線が双短刀持ちを貫く。
彼女の後ろから他のメンバーが攻撃を開始する。
最年少に見える白髪の男の子は目を閉じて集中している。その目を開いたとき、彼が言葉を言った瞬間に、No.9に異変が起きる。
「呪与」
「っ!?からだが、重く…」
全員が例外なく顔をしかめ、何かに苦しんでいる様子。
因みに全員の現在のステータス状況は自身のパネルで見ることが出来る。スキルまでは見られないのはエンターテインメントとしてすべてのネタバラシは避けるためである。現在No.9の全員のステータスの状態異常欄には「呪」と書かれている。そこから詳細を見てみると、なるほど。ステータス半減か。AGIも下がったはずだから重く感じる…のかもしれない。
あ、違う。HPもMPも半減させてるから思うように動かないのか。
HPが減るとそれに伴いAGIの減少、さらには怠惰感と感覚低下もセットでついてくる。ファンタジー世界なりにちゃんと人体が機能していると思ったらそれか。
最年少だというのに恐ろしいことするな。
次回に続きます。