FS-2 邂逅・青龍
お久しぶりの美雪ちゃん目線です。
FS2
ついた場所は自然豊かな場所。
樹齢何千年ともとれる大木が密集しているが、今歩いている場所は怖いくらいに木がない。
地面も踏み固められている。
という事は、人の出入りがあるということだ。
果たしてそれが人類であるか、は置いておいて。
しばらく歩くと、巨大なツリーハウスが現れた。
「うっわスッゲェ・・・。俺ここに住みたい」
なんか言っているバカがいるけど、無視。
住みたいって・・・。来る途中にモンスターに襲われるけど?
とりあえずあそこが目的地だと思い、足を進める。
__頭をぶつけた。
・・・。
自分でも何が起きたかわからない。
だが、確かに何かがそこにある。
触れることができるが、害はない・・・。
結界?
相当気配が薄い、のに強い。
普通、私くらいのステータスだったらスルッと抜けられるんだけど。
つまり、これを張った主は私より幾分かステータスが上ということだ。
「仕方がない、か」
おそらく、この結界全てを破壊する事は無理。
なら、一時的に穴を開けて通る。
「『氷塊』」
詠唱をすれば、巨大な氷の塊が斜め上に発射され、通り抜けていく。
通り抜けられる、という事は結界は破壊できたのだろう。
・・・ツリーハウスに向かって行ったけど、気にしない。
とりあえず、塞がる前に全員が通り抜けた。
__その瞬間。
『侵入者』
「!?」
見上げると、そこには優雅な出立ちの青い東洋風の龍がいた。
鱗は青と桃色のを融合させたような、綺麗な色をしている。
どこか、青空に映える桜を連想させた。
もし、今のように張り詰めた空気じゃなかったら、後10時間ほど眺めていても飽きないだろう。
美しい、の一言に尽きる。
・・・もっとも、その圧力で、そんなことを考える暇なんてなくなったけれど。
『ここに何か用』
少女のような声で語りかけてくる龍。
うっすらとだが、彼女と同等の気配が後4つ。
ツリーハウスの方でこちらの状況を静観しているようだけれど、いつ襲ってくるかわかったもんじゃない。
ただ、要件によっては見逃してくれそうではあるので、とりあえず会話を試みる。
「勇者の剣がここにあると聞いたから」
『あー』
なるほど、というふうに龍は返事をしてきた。
そして、私たちをジロジロとみる。
・・・まだ見る。
・・・・・・ずーっと見てくる。
・・・・・・・・・・・・。
ウザッ!!
いや、侵入したのが悪いけど、そこまで見なくても良くない?
『名前は』
唐突に名前を聞いてくる。
まあ、機嫌を損ねたら何されるかわからないから、答えるのが吉か。
「如月美雪」
答えると、うんうんとうなづくようにして首を振る。
『ふーん、勇者ご本人か。これは失敬』
・・・名前で何がわかるのかは知らないけど、取り敢えず警戒はやめてくれたみたいだった。
威圧は、まだあるけど。
「侵入した非礼は詫びる。けど、もうすぐ魔王が現れる。だから、勇者の剣を」
『別にそんなものなくても魔王は倒せるよ』
私の話を遮って、彼女はなんでもないようにその言葉を発した。
「なっ・・・」
『事実、事実。実際勇者の剣には殺傷能力なんて一ミリもないからね』
その言葉に固まる私。
いや、後ろの奴らの方がアホヅラで固まってたわ。
一周回って冷静になる。
悪戯が成功した子供のように龍はクスクスと笑う。
『焦ってる?』
その言葉の意図が理解できずに、私は黙る。
焦ってる?何に?
主語を入れて欲しい。
『自分が強くないことに、焦ってるのかい?二十代目』
「っ!別にそんなことは」
そうだ、私は強い。
実際、今まで誰にも負けずにやってこれた。
だから、私は。
「ほんとかなぁ。実際、」
背後から聞こえる声に困惑する。
瞬間、首筋に冷たい感覚。
即座に飛び退くと、そこには一人の少女。
桃色と水色のグラデーションの髪、龍のような角。
先程の龍だろう。
他のメンバーも距離を取るが、それでも冷や汗が垂れる。
彼女の間合いが広い。
武器は接近戦向き。
だというのに、あと1kmは離れないといけないような、そんなじっとりとした恐怖感が背中を伝う。
彼女は両手に持った武器をクルクルと弄びながら私に問う。
「私が移動してることに気づかなかったのに?」
それについては反論の余地もない。
実際、わからなかった。
とびのき遅れていたら、間違いなく首を切られていた。
いや、手加減されているのだから、本気なら、今私は生きていない。
龍。
獣人か、はたまた魔人か。
だが、魔人でも獣人でも、人形態以外の姿はとれないはず。
一体、彼女は、何者?
そんな私の疑問は露知らず、彼女は楽しそうに笑う。
「戦って勝ったら、強くなる秘訣、教えてあげてもいいよ?」
ただし、と彼女は言葉を止め、私の目の前に接近してきて言った。
「負けたら、どうなるだろうね?」
「っ!!」
接近に気付けず、そのまま蹴りを食らう。
そのまま吹っ飛ばされ、近くの木に激突する。
背骨に限らず、全身の骨が悲鳴を上げている。
「ふふ、懐かしいなぁ〜。昔なら、私もこうやって強い人に吹っ飛ばされたっけ」
桜のように笑う彼女は、綺麗で、美しくて、それでいて___。
最恐だった。
これでこの章は終了です。
次はいよいよ、世界に挑みます。