第十二話 強すぎ案件
「騒がしいねぇ…鼓膜破れそう」
現在闘技場内は熱狂と轟音が響いている。戦い前からこれである。
行われる大会は『世界一ギルド決定戦』。
毎年世界のトップたちが集うこの大会だが、トーナメント方式で進む。第一回戦、第二回戦、準決勝、決勝だ。
ただし、この大会では第一回戦はさほど注目されていない。なぜだろうかと頭に疑問符を浮かべていたが、その答えが今から発表されるわけだ。
因みに、子供も見るため、この闘技場内では血が流れても即座に表面上だけ治ることになっている。ただ、HPの回復にはつながらないため試合に支障はない。
闘技場舞台に二組のギルドが上がってくる。
代表者5名までが出場、相手のHPを1割以下にした方の勝ち。HPは0にならないように設定されているためオーバーキルもオーバーキルで「あ、殺っちまった☆」なんてことにはならないようになっている。
逆になったら殺人事件で普通に刑務所行きだ。
片やNo.5、片やNo.10。
No.5は事前の調べでは出て来なかった、トップ10の中で唯一フォース国外に拠点を持つギルドだ。
ギルドマスターは見た目かわいい系の私たちと変わらなさそうなくらいの男の子。その横には兄弟なのか似たような子が一人。他は鬼に妖精(かもしれない)に人間にしか見えない女の子がいる。
対してNo.10は村人ABCDEと言われてもいいくらいの普通さだ。良くも無く悪くも無く?といったところ。
全員人間だ。
全員の武器を見、初期装備一覧を見て大方の武器が何かを特定する。
(剣、双刀、槍、水晶、あの子は杖かな。ってか水晶使う人いたんだ)
No.5の武器は安定よりのアンバランスだ。No.10は剣、杖、聖杖、短刀、双短刀。ゴリゴリの安定。大概こういう奴らってモブとして扱い受けるんだよな。うん。
開始の機械音が流れ、双方はお互いに向かって真っすぐ突っ込んでいく。
「っふん!」
まずNo.10のギルドマスターが剣で相手のギルドマスターを攻撃するが、彼はそれをいともたやすくジャンプして避け、相手の剣を足場に宙返り、後ろに回る。
「初撃から重いですね」
そのまま回し蹴りで相手の背中に攻撃を当てる。それを見て動揺したように固まるNo.10のメンバーたちの一瞬のスキを見逃さない。水が流れるように次のメンバーの背後を取ると今度はスキルを使う。
「『火炎球』」
それを背中にぶち当てた後、これ見よがしと迫ってくる短刀装備と双短刀装備の攻撃を避け、残りの杖持ちにスキルを浴びせる。その間に双刀持ちの子が短刀装備と双短刀装備コンビをその二本の刀で切り付け、倒す。
後方でしぶとく生き残っていたNo.10のギルドマスターの背後には楽しそうに笑い指先に火を躍らせている鬼が迫る。
「しぶてぇんだよ。『妖火』」
相手を飲み込むような炎がその身を焦がす。軽く言って火だるまだ。
「す、『睡蓮』!」
一人のこった杖持ちはおびえながらもスキルを使用する。だが、それよりも前にもう一人の杖持ち、No.5の彼女が背後に回っていた。
「させないよっ」
そのまま膝で背中をどつく。
その瞬間、終了を告げる機械音と観客の熱い歓声が響いた。
「…第一回戦が注目されないってこういうことね」
氷人がマフラーを緩めながら言う。いつも黒に青のチェックが入ったマフラーをしているが、今日もそれだ。
氷人がいうことはごもっとも。トップ5の実力が異常すぎるのだということは一瞬で悟った。
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