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天才たちは異世界での極振り生活を夢見る※改訂版更新中(あらすじにリンクあります)  作者: 月那
第二部 第八章 上空の敵意~因縁の対決ってこういうことですか~
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第百四十話 ダンジョン攻略⑤

「あ、え、なん、で、ささ、なきゃ」


「刺すことはローズの意志じゃない」


ひどく困惑した表情でローズさんは言葉を発する。

クロンさんは、優しく彼女をなでながら、続ける。

私たちはしばらく様子を見ることにした。


「私はみんながそのままでもいいよ。生きててくれればそれでさ」


「っ…」


ゆっくりと、クロンさんは言葉を発した。

その瞬間、ローズさんに変化が訪れる。

目の濁りが消え、頬を伝い続けていた血涙は透明な涙に変わる。


「クロ、ン、ごめっ、ごめん」


「いいよ、こっちこそごめん。もっと早く見つけられてればよかったのに」


そして、ローズさんの手からナイフが滑り落ちた。

地面に落下して、粉々に砕け散る。

他の人の武器も同様、塵になって消えていく。


それは良いことのように思えた。

だが、現実はそううまくいかないものだ。


「がっ…」


「ローズッ」


急にローズさんが吐血した。

他も吐血に加え、激痛が走っているような叫びをあげるものが多い。

あの武器、何かしらの呪いでもあったのか…?

するとキリアさんが静かに舌打ちした。


「恐らくだが武器に[痛覚無効]の効果があったんだと思う」


「?それに何の意味…が…」


尋ねる途中でカイトさんはすべてを察したらしい。

無論私たちも無効にすべき痛みが何かはわかっていた。


それは、彼らの骨だけになってしまった部分ではないだろうか。

残った部分は神経が表面に出ている状態、空気にさらすことは激痛につながる。

それを無効化すれば、あんなふうに平然としていられるのだろう。


「…戻せる当てがある。俺はそいつに連絡するから、お前ら先行ってろ」


「危険だ!一人で大丈夫かよ!?」


「おやおや勇者様は俺のこと心配してくれてるんですかー?」


ケラケラとおかしいものでも見るような声を出すキリアさん。

その様子に心配しても無駄な気がしたのか、カイトさんはため息をついた。


「一般人を守るのは勇者の役目だろうが」


「それもそうか。まあ、タルリカぶっ倒して治れば万々歳だし、はよ行け」


ここら辺一帯に回復スキルをばらまきながらキリアさんはあっちいけというしぐさをする。


「…わかりました」


氷人が言う。


「貴方が死んだら教皇様が困るので」


「はは、よく言うよ司祭サマ。いや、ラズーリ」


ラズーリさんが真面目な表情をしていったのを、この人はまた面白いものを見るような眼で見る。


「これでも長く生きてるんでね、そうそう死なないほどの場数はふんできたつもりだよ」


「さようでございますか」


それっきり、彼は何も言わなかった。

キリアさんが「はよいけ」と背中で語ってくるので、私たちはこの場所を後にすることにした。



「教皇様はあんな奴がスポンサーで気分悪くしないのかにゃ?」


仮にもスポンサー様をあんな奴呼ばわりするニャズさんに、クロンさんが苦笑で返す。


「これでも私が尻に敷いてる方ですし、あの人ツンデレみたいなものなので」


あ、あー。

あれツンデレなのか…。


「ばれたら一か月支援やめたりするので秘密です」


(((((((((怖っ)))))))))


よほどツンデレと言われるのが嫌なんだな、あの人。

その様子にニャズさんは大丈夫そうだなーと感じたのか、ラズーリさんの背中を尻尾でバシバシ叩き始めた。

…今思ったけどさ、ニャズさんとラズーリさんって両片思いだよね。

ラズーリさんいやそうな顔してるけど、顔引きつってるもん。我慢してるでしょあーた。

ニャズさんもそっぽむいてるし。

フフフ・・・。

勇者パーティ内のCP(カップリング)把握。

はよくっつきやがれください。


緊張感、どっか飛んで行ったというか、あの光景を見て怒りがふつふつと湧き上がってきているのでリア充撲滅の方に怒りを飛ばしているというか。

要するに八つ当たり。

ばれてないなら犯罪じゃない。


「ニャズ、そろそろ痛いです」


「ハイハイ、男ならもうちょい頑張れにゃ」


叩くのをやめたが、その尻尾は行く場所を探してあっちへふらふらこっちへふらふらとしている。

イースさんはカイトさんの横にいて、カイトさんとイースさんは二人とも真顔だが、若干耳が赤い。

こんなシリアスなときにイチャコラしてんのかー。

まあ、いいか。

適度な緊張感って大事だしな。


ん?それとこれは別?

…それはそうだが、いつもこんな感じだから…。

特に気にしてないんだよな。

クロンさんは嫌がってるかと言えばこっちも若干のほほんとしている。

四季神メンツは朱夏がMPポーション飲んだり金央が投げナイフや矢を生産して忙しそうにしてたり、その他がレベルアップした分のステータス振ってたりしてる。


…地味に秋白が近いのはちょっと気になるが。

時々「蒼桜のステータスどんな感じー」と覗き込んできたり、「体調悪くない?大丈夫ー?」とほっぺをツンツンして来たり。

えっと、私のステータスは君のパネルでも見えるよね。体調に関しては気遣ってくれてありがとう。


そんなこんなでわいわいしていたが、次第にその声はなくなる。

目の前に巨大な扉。

多分、タルリカがいる。

クロンさんは扉にそっと手を当てると、勢いよく開け放つ。


廃墟らしき白い床に所々ひび割れ、崩れた柱。

その中心で彼女は立っていた。

白から赤へのグラデーションの髪、黒い目。

身にまとう衣服は、どの漫画でも一人はいる見た感じきわどい女子といった感じ。

上からすっぽりかぶっているローブも向こうが透けて見える素材だ。


「いらっしゃい♪」


軽くハミングしながら、彼女は私たちに笑いかけた。

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