第十話 鬼畜
パネルをしばらく眺めていると、梯子の下から声が聞こえる。
「ちょっと手伝ってー!!」
朱夏だ。もうそろそろ暗闇が空を占めるころ。だが、下では明るく、久しぶりに感じる人口の光が漏れていた。
「りょーかい!」
そう言ったが最後私はつり橋の柵を超え、近くの木を足場にしながら下へと降りていく。タンッとローファーが音を鳴らす。十回ほど繰り返すと無事に下に降りることが出来た。
電子音が響き、パネルが出る。
[俊足Ⅰ]
「よっしゃスキルゲットだぜ!」
「そのセリフ既視感がすごいよー‥‥あ、手伝ってほしいのはこれ」
朱夏は並んでいるランタンを指さして言う。思ったとおり、開いていた穴の中には光石を加工したであろう白く光る石がはめ込まれていた。それを見て思い出した私は、男子二人組が降りて来るまでに聞いておきたかったことを聞いてみる。
「そういえば、なんで光石をつかったの?」
「ああ…見てくれればわかるかな」
300個ほどあるランタンの中で一つだけ形状の違うものがある。中にはフィラメントのような熱線ではなく、火をつけるような太めの糸が茶柱のようにチョンと乗っている。
「『粉炎』」
朱夏は火の粉をその糸につける。明るい光、とはいえそれ単体では私たちの顔を照らすだけだ。
だが、光石はその光をさらに強くする。それが極限まで達した時、不意に光が小さくなった。
目を閉じていた私は目を開ける。
「うわぁ…このためだったのか」
「そおいうことぉ~」
目の前の300個近いランタンは枠にはめた光石と中に入っているフィラメントが共鳴するように光っている。朱夏が火を消すとランタンも死んだように光を発さなくなった。
「光を放つこともできるけど、連鎖するように伝えることもできる。異世界だからできることだよ~」
朱夏はもう一度火をつけ、形状の違うランタン_『コア』と朱夏は呼んでいた_を持って梯子を上り始める。彼女は登り切った先で梯子のすぐ上、そこに設置されている金属製のフックにそれをかけた。
「とりあえずランタン全部持って上に来てー!」
「おいそれ鬼畜!!!!」
怒り半分で朱夏に叫ぶ。木を伝って降りたり登ったりするのは自分一人だからできること。他の物ともなると…あれ。
「あ、インベントリに入れろってことね!?」
「そだよー(笑)」
地味に恥をかいたところで全部のランタンをインベントリに入れ、木を蹴って上に到着する。
そのままインベントリからひとつづつランタンを取り出した。一気にやると半分壊れるのが目に見えている。
「んじゃ、これを…全部つり橋の柵につるしていってください」
「…ん?」
気のせいかな?
「気のせいじゃないよ蒼桜」
「心を読むんじゃねぇ!」
クッソさっきのよりも鬼畜作業じゃねぇか…。
こうして徹夜でランタンをつるす作業というTHE・鬼畜を終わらせたころには朱夏と金央以外は全員体力の限界を迎えて倒れたのだった。
ん?氷人は体力あるはずだって?
朱夏と金央は好きなことをやっているときは体力関係なしに元気だから…まあ、ご愁傷様。
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