第九話 君らは人間やめたほうがいいんじゃない?
「たーいま~」
拠点に帰って来るともうすでに夕暮れだった。茜色の斜光が優しく拠点を照らしている。
梯子のすぐ下、朱夏と金央が作業をしている。
「おお、お帰り~」
「光石ってこれでいい?」
インベントリから石を出しながら聞く。白い光と共にドサドサと石が出てきた。
それを見て朱夏はうんうんとうなずく。
「OK~。あとやっとくから手伝ってほしい時は呼ぶね~」
そう言って作業に戻る。ただ、私はもう一つ聞いておくことがあると思い、苦笑いしながら聞いてみる。
「…この数のランタンはいつ作ったんですかね」
「君らが買い出し行ってる2時間ほどで」
「二時間でできていい量じゃないよね!?」
そう、およそ300個ほどのランタンがきれいに並べられている。一つ一つ手作りだというから目眩がする。集中力と手を動かす速さが尋常じゃないというのが最終的な結論だ。
ランタンの枠のところどころに丸いものをはめ込むような形をした穴が開いている。おそらくそこに光石を入れるのだろう。
後は(人間やめている)二人に任せることにして、上へあがると、氷人が少し息を切らしながら休んでいるところだった。彼が息を切らすのは珍しい。隣に座ると彼はお帰りと小さく言った。
「ん、ただいま。息切らしてどうしたの?」
「…またモンスター沸き始めてたから狩りに行ってたんだけども…結構数が多くてダメージもらったりしてたからちょっと…」
心なしか制服が汚れている。いくら氷人とはいえ数の暴力にはかなわないらしい。スライムやゴースト、前朱夏から聞いた狼がそれなりの数いるとすれば…そこまで考えて寒気がした。雑魚とはいえそんなにいたらメンタルが持つかどうか怪しい。
「スキルとかゲットできたから悪い事ばっかりでもなかったけどね」
パネルを開いてこちらに見せる。ステータス系スキルの欄にいくつかスキル表示が入っている。
[火炎耐性Ⅰ]
[物理耐性Ⅰ]
[衝撃耐性Ⅰ]
「火炎と物理はわかるけど衝撃は?何に対する耐性?」
「ノックバックを受けにくくなるのとメンタルのちょっとした補正」
衝撃って確かに二つ意味あるもんね…。よく考えられてるな。
火炎耐性はおそらくゴースト、物理や衝撃はスライムや狼からだろう。
「私たちバトルしてはいるけど…いまだに自分で獲得できたスキルないんだよね」
朱夏に買ってきてもらった攻撃系スキル一つ以外何もないのである。
どうしたものかと悩んでいると氷人があ、という。
「…俺達全員で大乱闘すれば…?」
「するのは良いけど殺されないか心配なんだけど…」
「手加減はするから問題ない」
そう言われても個人的には心配はぬぐえない。
何せ現在ATK1000である。全員がDEF0のこの状況、耐えきれるのは金央以外に見つからない。
また一つ悩みの種が増えた…。
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