第八話 雪女の男の子(矛盾)
フォース国の商店街、城下町を西に行くと岩肌をむき出しにした山が見えてくる。そこがフォース国の所有する“シズ鉱山”だ。七大強豪国の中で鉱山を所有しているのはわずか二ヵ国、そのうちの一つがここである。
「…今思ったんだけどさ」
「?どうした秋白」
「シズってどっかで聞いたことある」
言いかけたところで私は止める。
「フォース国同様触れちゃいけない。そもそも異世界だから。多分違うから」
何の核心もついていない理由を述べながら鉱山に向かう。街灯を何本見たかは数えるのが飽きたので植木算で計算する。端から端まで約5キロ、だいたい5メートル間隔で街灯は立っている。5キロは5000メートル、5000÷5=1000、計算上+1して1001本といったところか。
「ッと…変なこと考えていたらついてしまった…」
「?ついて悪いことがあったの?」
「ナイヨー」
楽しかった計算が思ったより早く終わってしまってなんだか残念というだけだ。
シズ鉱山は鉱山なので薄暗いが、中ではランタンや松明などによって明るく照らされている。刀鍛冶さんや冒険者のような恰好をした人たちがたくさんいるから直売所があるのだろう。右のエリアと左のエリアで置いてあるものの種類がきっぱりと別れている。値段も明確な差がある。
「右が金とか銀とか私たちが知ってる金属ばかり…左が知らないやつね…」
「なら逆に探しやすいんじゃない?」
まあ秋白の言う通りだが、探しやすすぎて困るほどだ。光る石なわけだから、光る石…。
左のエリアの右から二番目にそれはあった。なんとなく察しはついていたのでそれが入っている籠の前に立つ。鉱石名と値段が記載されている。
[光石 一個50G、十個450G、百個4050G]
「割引ついてるんだ…普通に100個買った時の81%でいいのか…」
「約2割引きってこと?」
秋白がそう聞いてきたのでうんと答える。
一つの大きさが割とある。両手で持っても全てを隠すことはできない。楕円形で縦が5cm、横が10cm、厚みが1cmほどだ。それを百個、しかも石なので重い。
だが、そこは異世界、便利なインベントリ様がご健在のためそこは問題ない。
籠に入れてカウンターに持っていく。会計を並んで待っていると、ふわっと冬のにおいがした。肺を凍らせるような冷気、それはまさしく冬のにおい。
ちらりと後ろを見ると同じように籠に何種類かの鉱石を入れた12歳ほどの男の子が立っていた。周りの客は当たり前だという風に気に留めてもいない。今は初夏、この世界は地球とあまり暦は変わっていない。しいて言えばひと月必ず30日で終わるとか、一日が25時間とか、それくらいの些細なことである。
(カウントしやすくなったし計算もしやすくなったなァ…一年360日、9000時間、540000分、32400000秒…31536000秒が元だからちょっと伸びたのか)
ただし、相変わらず60刻みで秒は分に、分は時間になる。そこはなんだかよくわからない。
さて、その男の子だが、思うに雪女じゃないか?男だけれど。そうじゃなかったら氷の精とか。とりあえず人以外の種族だと思う。
会計を済ませてインベントリに100個の光石を仕舞う。
初夏の夕暮れ、かすかにうしろから涼しい風が吹いてきて、早く帰ろうと私たちを押していく。
「秋白、町出たらおぶってもいい?」
「いいよ~」
嫌がるかと思ったら軽くOKしてもらったので拍子抜けだ。歩きながらうれしそうに秋白がいう。
「ノルマ達成~」
「それ好きね~昔から」
軽く会話しながら鉱山を後にした。
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