第零‐壱話 四人の成績上位者は仲がいい
ここは四季中学校。100年の歴史を持ついたって普通の私立中学校である。
校舎は新しい方だが、何度も補修工事を繰り返しているだけで学校の形は創立以来変わっていない。そのため、たくさんの怪談を持っているオカルト好きからしたらちょっとうれしい…程度の学校である。
だが、それは建物の話、もちろん生徒が普通かと言われればそういうわけでもない。
現在3月、期末テストの順位表が張り出されている廊下には人だかりができている。
「どっか遊びいかね?」
「待て待て。まずは順位を見ないといけねえだろ。先公に叱られちまう。補習だったらな」
「うっわ俺180位…」
「おめえヤベーじゃん!補習だ補習だ!」
男子たちに限らず、女子も自分の順位を見て上がっただの下がっただの、お祭り騒ぎのようにはしゃいでいる中、それを遠目で見つめる少女がいた。
ボブカットの赤髪、緑の目。彼女はかけているメガネを上に押し上げながら自分の順位を確認した。ついでにいつも仲良くしているほか三人の順位も。
1位 波風朱夏 590/600
2位 恋李蒼桜 587/600
3位 紅虎秋白 573/600
4位 柊氷人 568/600
全員上から見ていけばいるので楽だ。そんなことを思っていたら後ろから肩をたたかれた。
振り向いてみると、いつも一緒に遊ぶ恋李蒼桜がいた。
ピンク色の髪は膝まで伸びていて、後頭部に青色のリボンを付けている。
「おお、あーちゃんいいところに」
“あーちゃん”というのは蒼桜の呼び名である。
「朱夏、また一位…⁉くっ…後3点とは…」
悔しそうに握りこぶしを作る蒼桜を見てアハハと笑い返す彼女は3点差で蒼桜に勝った波風朱夏である。その様子に蒼桜はむっと悔しそうに青色の目で彼女に目線を送る。その後ろから白い頭が顔を出した。白髪にオレンジのメッシュという珍しい髪色をした彼は順位表を見るや否やんなっ…と驚愕の言葉を絞り出した。
「じゅ…14点差…だと…」
3位の紅虎秋白だ。どうやら14点差で蒼桜に勝たれたことに固まってしまったらしい。
「…前のテスト、5点差、だったもんね」
そう言って背の高い黒髪がヒョコッと顔を出す。片言で話す彼は今回4位の柊氷人。彼は秋白の肩をポンポンと叩きながら次、頑張ろと声をかけている。
その様子を周りの生徒が目撃すると、お祭り騒ぎの中に噂話をするようにこそこそとした声が聞こえてくる。
「“教科の神”だよ…今回もワンツースリーフォー全部取ってった…」
「朱夏ちゃん結構かわいいよな…」
「俺は蒼桜ちゃん派だな」
「諦めようぜ…どうせあそこ4人カップル2組成立してんだ…」
周りがうわさ話に明け暮れている中、4人は家へ帰る準備を始める。