第5話
「どこか、田舎に行って、薬屋でも開こうかと思います。冒険者の時は、薬ばっかり作っていたので」
エレノアのパーティを抜ける手続き、冒険者を辞める手続きが済んだ後、イエナはこれからどうするのかを他の冒険者の人たちに聞かれていた。
もちろん、彼らもイエナと仲が良かったからというわけではないから、単純にイエナにそう尋ねていたのは好奇心からだろう。おおかたの冒険者はみんな、エレノアという最強の勇者にずっと粘着していたヒモみたいな奴がやっとパーティを追い出されたかと思っているんだろう。
まあ、間違ってはいないけれど。
冒険者でも無くなって、プライドも何も無くなったので、今はそこまで現役時代のときは、冷たく接せられた、彼らのような他の冒険者にもそこまで腹もたたない。
悔しかったんだろう。エステルは別にして、ジークみたいな何の才能もないような人が自分達が何十年もかかった所をわずか、一年とかで駆け抜けていったのだから。
だから、心機一転、軽くなった気持ちで、他の冒険者の人たちに「頑張ってください」と告げて、ギルドを出た時に立っていた人影に驚いた。
透き通るような金髪に、視力の弱いイエナでも簡単に見分けられるほどの真っ白な肌。
「エレノア?」
でも、今日は、エレノア達はダンジョンの攻略に行くはずだっだのだ。
「なんで、こんな所にいるんだよ?」
しかし、エステルはそんなことを気にも留めない少し青ざめた表情で、イエナに話した。
「イエナ、少しご飯食べない?」
エステルのあまりの必死な剣幕にイエナは首を縦に振る他なかった。