第4話
しかし、結果から言うと、村から逃げ出して、王都で冒険者となったのは成功だった。それほどにパーティ「白の毒」、要するに白の勇者「エレノア」の実力は段違いだった。
本来、6人や7人。前衛と後衛を3人ずつ。それくらいの人数で組むのが普通のパーティ。しかし、エレノアとジークは二人という限られた人数なのにも関わらず、凄い勢いで出世を繰り返していった。
Hランクから始まるランクをCランクまで経った一年で。それも、EランクからDランクに上がる昇格試験では、事故で遭遇したA級冒険者パーティ相当と言われるユニコーンを倒すという偉業を成し遂げた。
史上最年少、史上最速でSランクまで上がった炎の勇者がCランクに上がるまでにかかった時間は約2年。それも6人パーティで。
だから、その炎の勇者の約半分である一年で、しかも僅か二人という人数で、Cランクまで駆け上がっていった「白の勇者」つまりは「白の毒」は圧倒的に注目を浴びた。
王都で長らく神童と言われていたのにも関わらず、どこのパーティにも属さなかった天才の賢者「ユーリ」や、誰もが認める英雄を父のパーティに所属していた、戦士「ロベルト」や、エステルと同じように僅か16歳でEランクまで駆け上がった魔法使い「フィナ」が同時期に所属した事も大きい。
エステルもジークも彼らの本気で冒険者の頂点を狙ってやると言う熱意に負けて、彼らをパーティに加えざるを得なかったのだ。
新聞も大きく彼らの事を取り上げて、王都では、彼らの事を知らない人はいないと言うくらいの人気があったのだ。
だからこそ、新しいメンバーを加えた「白の毒」はもっと飛躍するはずだったのだ。僅か一年で上がったCランクに一年も留まるはずではなかったのだ。
しかし、現実はいまだにCランクなのだ。
「理由は完全に俺だよなあ」
力不足なのは分かっている。一年でCランクまで上がったエステルが弱いはずがないのだ。その他のパーティの皆もそう。視力がどんどん落ちてきて、回復薬を作るとかしかでしか貢献できないイエナが悪いのだ。戦闘で邪魔とか言うレベルではない。
Bランクにあがるためには、全員の強さが必要なのだ。パーティ全体としての強さではなくて、個人個人の強さが。
むしろ、パーティの皆は潔い。どうしてもBランクに上がりたかったら、パーティを抜けて、新しいパーティに入ればいいのだ。天才と言われていた彼らのことだ。すぐにBランクくらいにはなるだろう。
だけど、彼らはそうしない。ただ、イエナに抜けろとか力不足だと言うだけだ。理由は分からないが、絶対にパーティを抜けない。
だから、イエナは彼らに何にも出来なかった代わりに最後くらいは潔く貢献しなければならないのかもしれない。
そう考えると、気持ちが軽くなる。そもそも最初に言わなければならなかったのかもしれない。だから、イエナはそっとその彼らが話している部屋の扉を押し開けた。
まさか、イエナが入ってくるとは思っていなかったのか、驚いた顔をしている彼らをみる。
そうして、一言。
「ごめんな。もう、俺パーティを辞めるわ」
全員が目を伏せて、それで、全部終わるはずだったのだ。
「はあ? 何、言ってんの?」
ただ、エレノアだけが異論を唱えた。