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序順

修道院に行く覚悟が出来ればもう王宮にいる必要はない。明日とは言わず本日中に出て行こうと荷物をまとめるよう侍女に指示をする。王太子妃候補でもない私の言う事を面倒くさそうに聞く。

こちらも確かに婚約者でも何でもないのでどんな態度を取られてもいちいち腹を立てない。


そう、仕方がないのだ。皆が善意だけで働いているわけではない。得にならないものに媚を売ってもなんの利にもならない。荷物を侯爵家まで届けて貰うようお願いをする。

一応、宰相補佐、侯爵令嬢なので手配はしてくれるが無表情である。少し前は皆、和やかに対応してくれたのに‥‥。


空になった部屋を後にし、王宮を出る為出口までの通路を歩く。


向こうからお付きの方数名を連れて高貴な方が歩いてくる。その場で片膝を付き手を交差して胸にあてお辞儀をする。バルサハル神殿のアストラ教皇である。


そのまま横切るのを待っているとアストラ教皇は立ち止まった。


「そなたは確か、殿下の婚約者ではないか?」


「いえ、元婚約者でございます。私が至らなかった為、白紙に戻されました」


「それはすまぬ事を聞いたな。うん、少し待て‥‥そなたから感じるものがある」


教皇は私の頭に手を乗せる。


「まさか、そなた、聖なる力を?しかも強い……。すまぬが正確に力を見たい。神殿まで来てくれぬか?」


「アストラ教皇、私は近々修道院に入る予定でございます。魔導師として生きる事はありませんので聖なる力の事はお忘れください」


一礼をし、その場から走って逃げた。

そして、屋敷に戻ると父も母も項垂れていた。こっちを見ると一応は慰めてくれるが、ただの婚約破棄された令嬢ぐらいならともかく、王太子に婚約破棄をされたというレッテルを貼られたので、もはや私は厄介者でしかない。


「私、修道院へ行きます。このまま社交界にいてもリリアンの足を引っ張ってしまうわ。」


「何も、そこまでしなくても時が経てば……」


と言いながらも両親は顔に安堵の表情を浮かべ、直ぐに修道院の手配をしてくれると言う。


「お姉様、修道院なんて行かないで」


と可愛らしくリリアンも言ってくれる。


「分かって頂戴、これが一番みんなが幸せになる方法なのよ」


(私も含めてね)


翌朝、父は王宮へと仕事に向かった。

いつもは、夕方もしくは深夜までと多忙な父だが昼前には戻って来た。かなり慌てている様子である。


「アルテシア! アルテシア! 何処にいる?すぐに支度をしなさい!!」


随分、騒がしいものだ。渋々、エントランスまで行くと父が真っ青な顔をして立っている。


「アルテシア! お前は聖属性の魔力があるのか? 教皇猊下がお呼びだ。身に覚えはないのか?」


父が私の肩を掴み揺さぶる。


「落ち着いて下さい。お父様。きっと、何かの間違いです」


「そうなのか? いや、教皇の慌てぶりからして間違いではないと思うが…。まぁ良い、すぐに宮殿に行くぞ」


アルテシアの返事も聞かずにバルサハル神殿に向かうのであった。神殿に着くと教皇の部屋に行くまで聖騎士団がずらっと並んでいました。まるで第二王宮のようだ。

そこには国王陛下、王太子も一緒におりこちらを見守っているようだ。

教皇が手招きしながら私を呼び、


「アルテシア殿、こちらに来なさい」


父に促されて渋々前に出ると、満足そうな笑みで私を迎えます。


「さぁ、怖がる事はない。神の声を聞くのだ」


額に教皇の指がふれると、指先と額の間から強烈な光がでる。

アストラ教皇が別人のような声で話し出す。


『神に選ばれし愛しき人よ。汝は如何なる事があろうとも心は汚れん。聖なる使いとして我が力を授かり人々の為に尽くすであろう。』


光が消えた。アストラ教皇も本来の声で言った。


「なんと言う神託だ。聖女がここに誕生した…、なんと素晴らしい。聖属性の魔力だけでなく聖女だったとは……。この国に聖女が現れるとは300年振りですぞ」


横にいた父を見ると感動で涙を流している。国王陛下も王太子も歓喜の笑顔だ。

恐らくここにいるアルテシアだけがふに落ちないし苛立ちを隠せなかった。なんだこの勝手な人達は?

聖女だと分かった途端のこの喜びは?哀れみ、蔑みの目で見ていたのになんなの?この期待に満ちた目。

父が涙を流しながら私を抱きしめる。


「昔から、お前は清い心でいたのは父が一番理解していた。やはり聖女の器を持っていたのだな。」


何を言ってるの?リリアンに構うのに精一杯だったじゃないの?私が話をしようとしても一度も聞いてくれなかったじゃない?

国王陛下が感極まって声が震えている。


「アルテシア、素晴らしい神託。さぁ、直ぐに王宮へ戻ってくれ。荷物は要らない。いるものは全て用意しよう。これからの事を話し合おう」


何を勝手な事ばかり‥。冗談じゃない。何でも人が思い通りになるなんて大間違いだわ。


「今後の事は……」


とアルテシアが言いかけたところで被せるように王太子が少し興奮気味に話し始める。


「今後の事は私も父上と直ぐにでも話し合いたいです。ああなんて事なんだろう。神託をもう1日早く聞いていれば()()()手続きは要らなかった。父上、誤った決断をしてしまいました」


「そうだな。婚約の件は早急に片を付けないといけないな。昨日の今日の事だ。多少()()()()なぁに、聖女が誕生したのだ。誰も文句は言わないだろうな」


なんたる事、自分達で婚約を白紙に戻しておいて面倒、面倒と勝手な事ばかり。こっちの話を聞こうともしない。しかも、また聖女だからと婚約者に戻すつもりなんだわ。冗談じゃない。


アルテシアは怒りに震えた。



早速、ブックマークしてくれた方、アクセスして頂いたありがとうございます!


序順以降はコミカルでと思いました。もう少し真面目が続きそうです。お付き合い下さい。

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