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バガラルの王

アッシュレは、バガラル国に到着し国王陛下と謁見していた。

バガラル国王ダニエル・パレデスは、当時国王であった父と兄王子を殺し僅か10歳の時に国王の玉座に着いた。それから5年が経ちアッシュレの目の前の王座に座っているのは僅か15歳の少年であった。


(こんな子供にやられるとは前国王も滑稽だな)


と、アッシュレは思った。

玉座に座って居るのは、本当に元国王と王太子を殺したのかと思う程の幼さが残る少年である。特別、身体が大きくもなく魔力もあまり感じないが眼光だけは鋭い。バガラルの国王の青い瞳の眼差しは何の感情も読み取る事が出来ないぐらい冷めていた。アッシュレを王座から見下ろしている。アッシュレはダニエル国王とは他国やアルターナで何度か会っていた。


アッシュレはバガラルの国王に膝を折り挨拶をする。


「バガラル国王陛下、またお会い出来て何よりです」


「アルターナ王太子アッシュレ殿がバガラル国王に外遊に来られた事、喜ばしく思いますよ」


言葉こそ優しいがこの国王の感情は読み取れない。好意的には感じられない。


「バガラル国には、感心しています。ほんの数年でこれ程まで治安が安定した事は国王陛下の手腕はアルターナ含め他国でも高い評価です」


「私の手腕など大した事はないですよ。前国王が愚かだっただけの事。ある程度の常識待つ国王ならこの程度の発展は出来ますよ。バガラル国は良き民恵まれています。私は民がこの国を豊かにしてくれたと思っています」


「ご謙遜を、いくら民に恵まれていても上に立つ者が優れていないと国は発展しません」


「アルターナ国王陛下の様に?」


アッシュレは言葉に詰まった。周りの家臣達を息を飲んだ。バガラルの国王は無表情から初めて一瞬ニヤリと笑った様に見えた。アッシュレもこんな幼い国王に負けてもいられない。


「我が国の父であり、国王陛下も私は尊敬し忠誠を誓っております」


「私もこの国の民の為なら、悪魔にでも魔王にでも何にでもなれます。」


(王族殺しは魔王でもなったつもりなのか?戯けた事をやはりまだ幼いな)


「バガラル国は良き国王がいて安泰で何よりです」


「今度の外遊でアッシュレ殿の探し物も見つかるとよいのですが……」


アッシュレは一瞬、剣呑の目で国王を見る。国王は挑戦的な目で見ている。バガラル国王は少し口角上げた。


「何故、陛下はそれを……」


「アルターナで大掛かりに一人の娘を国中探していると聞いて興味を持ちました。その娘はバガラルにいるのでしょうか?」


アッシュレは国王はアッシュレの目的を知っている。しかし何も咎めないと言う事は好きに探してもよいとアッシュレは心中で喜んだ。


「わざわざ、陛下のお手を煩わせる事でもありません。私の大事な者が迷い込んだ可能性があるだけです」


「アッシュレ殿の大事な者とは興味深い。何故、それ程まで探しているのか……不思議ですね」


「私の思い人、それだけです」


アッシュレは、見た目の違い15歳には思えない落ち着き払った国王の態度が気に入らなかったが隠れてアルテシア探す手間が省けた事には国王に感謝した。


「そうですか……。アッシュレ殿、バガラル国はアルターナとの関係ももう少し深めたいと思っている。陛下には既に書状を出したのがそろそろ届いていると思いますが……」


アッシュレは直ぐに書状の内容は予測出来た。恐らく第一王女の婚姻を求めたのであろう。まだ、少年だと思った国王を侮っていた。第一王女の婚姻は恐らくラーダス国王と第二王女の婚姻を阻止するものであろう。アルターナとラーダスが友好関係を結べばバガラルより力は強くなる。バガラルはラーダスを敵対視している為、隣国のラーダスとの関係は阻止したい。


アルターナとラーダスの友好関係を向けた深めるにも問題があった。ラーダス国は戦力の強い国であっても敵対している国が多い。以前からバガラルとは接点が欲しかったがダニエル国王になってからは中々、親交が図れなかった。

バガラルとラーダスと天秤にかかればバガラルと結んだ方が得策であろう。バガラルからの第一王女との婚姻の申し出はアルターナにとっては好都合である。


しかし、今まで国王同士の交流を敢えて避けていたように見えたが突然の第一王女の婚姻とは気に入らないかった。しかも、突然の書状で自分も含め国王とも交流せず親交を深めるつもりに見える。


「アルターナもバガラルとの親交を深めるのは有益な事、我が父国王もさぞかし喜ばしい事でしょう。しかしながら王女にも他国から縁談が進んでおり……。これからはお互い隣国として王族一同バガラル国とは親交を深めたいと思っています」


「アッシュレ殿は王女の夫には私ではご不満なんでしょうか?」


「決してそのような事はありません。失礼ながら国王陛下は正妃の実子、我がアルターナの第一王女は妾の子です。それでも宜しいのでしょうか?」


「そんな事は、何の問題でもありません。もしや、バガラル国王よりも婚約が進んでいる王太子の方が相応しいと?」


「いえ、そのような事では決してありません。アルターナに帰りましたら我が父、アルターナ国王に陛下のお気持ちを伝えさせていただきます」


「いい返事を待っていますと国王陛下に伝えていただきたい」 


「ええ、是非に」


(まだ子供の分際で、いい気になりおって。まぁ、いいアルテシアさえ見つかれば王女ごときくれてやる)


アッシュレとバガラルの国王の謁見は終わった。




男は小瓶を見ながら悩んでいた。たった一滴を飲ませるにしても昔から第二王子は幼い時から命を狙われる事が多かったので警戒心が強い。殺気に対して敏感である。面識がある自分が渡したものは恐らく口にしないであろう。やはり事情を知らないものにやらせた方が確実だ。身分も素性知らないものと考えていた所男の目が止まった。少し離れた所で男女が言い合いわしていた。男女ともまだ若い、娘の方は見た事のある顔だった。


「ちょっと、そこをどいて」


「なぁ、マーサ、待ってくれよ。もう2度と浮気はしないからもう一度、付き合ってくれ!」


「煩い!浮気うんぬん以前にあんたの事は愛想尽かしているの!」


悲しげに娘の後ろ姿を見送る若い男の姿あった。


(あの娘、クラウド殿下のよく行く店の店員だったな)


男はマーサに振られた若い男に声をかけた。


「いい仕事があるんだが、勿論、破格の報酬付きの仕事だ」


「誰だか知らないが、見てただろう?俺は今さっき振られたばかりだ。仕事をする気分じゃない」


男は金貨を数枚見せる。バガラルの金貨一枚で庶民だと一年、働かなくも暮らせる。


「成功したら渡すが……」


「正気か?」


「勿論、やるか?」


「やばい仕事なのか?」


「いや、簡単だ。この小瓶の液体を一滴、二滴ある男に飲ませて欲しい、さっき、お前と話をしてた娘の店に最近出入りしている若い男なんだが…」


「もしかして黒髪の金の目をした男か?あいつが出入りするようになってからマーサが冷たくなったからな丁度いい。やってやる。この薬で死ぬか?」


「物騒な事を言うんじゃない。この薬で腹痛を起こすだけだ少しこの場でとどまらせたいからな」


「それだけで大金が手に入るのか?」


「ああ、妙な気は起こすな」


若い男は頷いた。


その晩、クラウドが店に入るの確認して仕事を頼んだ男は店に入った。


男は外で待った。暫くすると怒鳴り声と一緒に仕事を頼まれた男は出てきた。


「終わったぜ。」


男から小瓶を受け取り、金を渡した。仕事を終えた男は驚いていた。


「いいのか?飲ませたかどうか確認しなくても」


「ああ、いいんだ。終わったらとっといけ」


首を傾げながら金を受け取った男は男の前から去って行った。


男は残って店が騒ぎ出すのをまった。中で毒が効き倒れれば騒ぎが起こるはずだ。

何も起きない所をみると何も入れなかったのか?男はそれでもいいと思った。自分が王族を殺すなど考えたくも無かった。いっそ、失敗してしまえばいいとも思った。


暫くすると、クラウドが店から出てきた。飲み過ぎているのか?足取りがおぼつかない。一瞬思ったが直ぐに否定した飲みすぎる事は無い。長い間、クラウドを監視してきたが何杯飲んでも変わらない。それに火属性の魔力を持つものはアルコールで酔う事は無いと聞いた事があったからだ。


暫く後を付けてみる。宿屋に戻る道のりだが次第にクラウドの足取りが重く見られた。酷く歩くのが辛そうに見えた。いつもなら尾行しても気が付かれるが今日はそんな様子は全く無い。


とうとう宿屋の直ぐ裏道でクラウドが倒れた。


男は倒れたクラウドを見下ろした。






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