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プロローグ

更新が不定期になってしまいますがぼちぼち進めて行きたいと思います。序順までは、真面目な内容ですがコミカル路線です。

ここは大国アルターナ国の王宮である。宰相補佐であり侯爵の娘アルテシアが王太子妃教育として王宮に来たのは半年前からである。シルバーの髪にコバルトブルーの瞳、透き通る程の白い肌。小柄で華奢であるが女性らしい身体つきである。

少し引っ込み思案である事から、両親に言われるまま育って来た。

ここにいるのも王太子妃になるのも自分の意思ではない。


アルテシアは、昔から叶う事はないと思っても夢があった。この国は時々、魔力を持つ者が現れる。魔力を持った者は貴重だと言われている。火属性、土属性、水属性、風属性がありその中でも極々稀に聖属性を持つものが現れる。アルテシアの夢は聖なる力で病や怪我で苦しむ民を救う事である。誰にも言ってないがアルテシアは聖属性の魔力を持っている。特に隠しているわけではないがそれには理由があった。


アルテシアが8歳の頃、魔力が目覚めた。きっかけは飼っていた猫が、喧嘩で瀕死の状態で戻って来たことだ。アルテシアにとって飼い猫は何でも打ち明けられるお友達である。血塗れの飼い猫を見て自分が血塗れになっても構わず抱きしめた。涙が止まらず心の底から『助けて!!』と叫んだ瞬間、体から金の光がでてキラキラと飼い猫を包み込み、収まったと思ったら瀕死になる前の猫の姿があった。


驚いて伝えに行こうと両親の元へ行った。両親は何やら嬉しそうで、何と2才下の妹のリリアンが火属性の魔力に目覚めたらしく、大層ご機嫌の様子。

リリアンは活発で愛くるしくハニーブロンドのコバルトブルーの瞳、私と違って物怖じしない積極的な子である。

『アルテシア、そこにいたのか?リリアンが、火属性の魔力に目覚めた様だ。弱い魔力だが魔力が目覚めただけでも凄いぞ!』


『あの‥‥お父様‥』


『何か言ったか?アルテシア。すまないが今日はお祝いで忙しくなりそうだ。』


『あの‥お母様‥私‥』


『ごめんなさいね。アルテシア、リリアンの事、親戚の方々に連絡してお祝いの準備があるの。忙しくなるわ』


聞き分けのいいアルテシアに対して両親はいつもこんな感じで、アルテシアを後回しにする事が度々ある。いつのまにか、アルテシアは聞いてもらう事を諦めてしまった。

アルテシア自身は自分の両親を尊敬はしているし感謝もしている。が、どうも私の性格を決め付けたがりあまりアルテシアの話を聞こうとはしない。

かと言って愛情が無いわけではない。


アルテシアは諦めて聖属性の事は話すのはもうやめようと思った。それから自分なりに魔力の事を調べて魔法陣を作る事や怪我した小動物を見つけては治して聖属性魔力を使いこなせるようになっていた。

成人を迎える頃には屋敷から抜け出し変装をして、孤児院で治療が受けられない子供達をひたすら治していった。勿論、シスターも秘密にしていた。


アルテシアは修道院のシスターになりたかったがある日、宰相補佐の父がアルテシアに縁談を持って来た。

『アルテシア、いい縁談がある。王太子妃の候補に選ばれたぞ』


(冗談じゃない‥‥。そんなの嫌よ)


アルテシアは心底そう思ったが両親に楯突く事ができず、いつも通りに従うだけである。

父は魔力がある妹を侯爵家の跡取りにしたいのであろう。


そして今現在、アルテシアは見事王太子の婚約者の座を勝ち取ったのである。アルテシアの意に反してだが‥‥。


そして、とうとう運命の出来事が起こった。

アルテシアは国王陛下と王太子に呼ばれて謁見室に入った。


「アルテシア、いつになく美しい。今日は急に呼んですまない」


と国王陛下が先に話を切り出した。

アルテシアは片膝を付き両手は交差させ胸に当てて頭を下げた。


「国王陛下、王太子殿下、共にご機嫌麗しい事で何よりでございます」


「今日はそなたに辛い事を伝えねばならない。つい最近だが、リチャード伯爵の令嬢が風属性の魔力に目覚めた。魔力自体は強いものではないが王族としては魔力がある者を取り入れたい。そなたとここにいるアッシュレ王太子との婚約を白紙に戻したい」


国王陛下は申し訳なさそうに言う。国王陛下から言われれば従うしかない。


「国王陛下の仰せのままに従います」


王太子殿下が申し訳なさそうに言う。


「アルテシア姫、決して貴方を嫌いになったわけではない。貴方に惹かれたのも事実。申し訳なく思う」


もう、言い訳にしか聞こえない。元々、私の意見なんて何処にもない。勝手に決められて勝手に白紙に戻されただけだ。王太子殿下に惹かれたわけでもない。

いつも遠目で見る事しかなかったのに。何を申し訳ないと思うのだろう。


「気になさらないで下さい。明日にでも実家に戻ります」


「うむ、ではここで正式に婚約解消となる。話は以上だ、下がってよい」


王太子殿下は心配そうにこちらを何か言いたげに見つめていたがそれを振り切るようにアルテシアは謁見室から出て行った。


全く勝手なものだ。両親はさぞかしがっかりしているであろう。陛下の話ぶりだと既に父との話し合いは済んでいるようだ。元々、彼らで勝手に決めたもの。勝手に落ち込めばいい。アルテシアは明日にでも修道院に入る準備をしようと心に決めるのであった。

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